クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗

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情報料50万円、残りは後で

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くし家の動きは?」
「――なッ! なぜ、お前に情報を教えなきゃならん!」

 席を立つ岩崎は、店を出ようとしていた。
 だが、俺は止めた。

「取引しないか」
「……なに?」

「情報料として100万円出そう。櫛家の動向を知ってるだけ教えてくれ」
「ひゃ、100だと……!?」

「悪い条件じゃないだろ?」

「足元を見てるんじゃねぇ――と、いいたいところだが、今の俺に稼ぎがない。手持ちもギリギリだ」


 日雇いの仕事で少し金を得ていたらしいが、それも限界だという。いつの間に、仕事していたんだか。
 怒りをしずめる岩崎は、椅子に座った。そして、気持ちを落ち着かせるためかお茶をすすっていた。
 俺は牛丼の並をおごってやった。これも取引の為だからな。


「おごりだ」
「いいのか……」

「その代わり、情報を頼む」

「すまねぇ。ただのクソガキと思っていたが、良いヤツなんだな……」


 岩崎は態度を軟化させるどころか、妙に涙ぐんでいた。
 ちょっとせこけているし、あれからまともなものを食ってはいなさそうだな。


「ねえ、早坂くん。そのおじさんとは知り合いなの?」


 そうだった。艾に説明していなかった。
 俺は少し前にコイツと無人島で敵対したこと、櫛家の人間であることを話した。


「――というわけさ」
「そうなんだ。ちょっと怖いけど、心配ないんだよね」
「ああ、大丈夫だ。この様子なら大丈夫だろう」


 男泣きしながら牛丼食ってる姿を見る限り、問題ないと判断した。よっぽど腹が減っていたんだろうなぁ。あれから、櫛家に戻らず過酷な生活を送っていたんだな。


 ◆


 牛丼屋を出て、近くの公園で話を聞くことに。


「……まずは感謝する」
「気にするな。それより、櫛家の動向が気になる」

「…………あぁ、千国の頭は割と近くにいるはずだ」
「なに?」

「早坂、お前をバラすと言っていた」


 つまり、殺すってことだ。相当恨まれてるな俺たち。
 そりゃそうか、もともと莫大な援助を受けていたしな。だけど、千国の娘である万由里まゆりが裏切ったので……千年世が彼女を葬った。


「全力で探しに来てるわけか」
「そうだ。俺がお前たちを狙っていたようにな」

「……だろうな」


 でなければ、船にコイツが乗ってこないはずだ。あの時、八咫烏のメンバーもいたかもしれないな。

 俺たちは常に“敵”に見張られていると思った方がよさそうだ。
 幸い、人の多い場所で活動しているから、向こうもなかなか手が出せない状況のようだが。
 だけど、これからは違うかもしれない。


「おそらく、明日には組織が追い付いてくるはずだ」
「マジか」

 櫛家が俺たちを全力で探しているってことだな。
 今のところ移動しまくっているから、大規模衝突は避けられているが……今後は分からない。

「早く逃げた方がいいぞ。飛ぶならマレーシアがおススメだ」
「アメリカへ行くつもりだったけどね。船が沈んだから」
「俺も含めて災難だったな……」

「乗り物運がないんだ」

「死神でもいているんじゃないか」


 おいおい、カンベンしてくれよ。それじゃ、いつまで経っても国外へ逃げられないじゃないか。
 そんなワケがないと岩崎の冗談を振り払っていると、艾が俺の服を引っ張った。


「早坂くん。そろそろ帰った方がいいかも」
「……どうした?」

「パトカーが見えたの。職質されちゃうかも」
「そりゃ、マズいな」


 確かに、公園の向こうに赤色灯が光っているのが見えた。誰かが通報したのか、それとも巡回か。どちらにせよ、都合が悪い。

 特にこの岩崎が一緒だとややこしい。反社だしな。


「……げぇ! 俺はどうすれば……」
「岩崎、お前はいっそ捕まった方が命は助かるんじゃないか?」

「…………そ、それはそうかもしれないが、組織を完全に裏切ることになる」

「死ぬよりマシだろ」
「むぅ。いや、もう少し逃げ回る! 早坂、金をくれ! 俺は駅前のネカフェへ向かう!」
「わかったよ。ほら、報酬の50万円だ」
「はあ!? 50万!?」

「まだ欲しい情報があるから、前報酬だ」
「ぐぅ! だましたな!!」

「あとひとつ情報を教えてくれたら残りは払うって」
「…………なんてガキだ。まあいい、必ず払えよ!!」


 50万円を岩崎に渡すと、全速力で去っていく。逃げ足は速いな。
 さて、俺たちもホテルへ戻るとするか。
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