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【204】 オルビスの塔・王の間
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夜は安全とは言えない。
それでも俺とルナは、オルビスへ――。
「到着っと……」
あれから一時間は歩いただろう。
さすがにN地区からL地区までは遠い。
「この時間帯ともなると正門からは入れません。ですから、わたし専用の隠し通路から侵入といいますか、裏口からの帰宅です」
「そうだな、ここはルナの家でもあるのだから勝手に入っても問題はないもんな」
「ええ、こればかりは父ではなく、メイド長のオーロラに頼み込んで作って貰ったのですけどね」
皇女様も外へ抜け出したくなる時がそりゃ、あるよな。同情しつつも、ルナについていくと、かなり隅に扉があった。
「ここです。この地下が特別な部屋に繋がっており、奥に転送があるんです」
「へぇ、そりゃ凄いな。わざわざ作ったとか」
「はい……どうしても外へ出たかったのです。転送の技術は、アプレミディ卿に」
じっちゃん何やってんだよー!
「で、どうやって入るんだ?」
「この箇所にわたしの手を当てるとですね」
ペタっと掌を石の上に置くルナ。すると、扉がガクンと開いた。……なるほど、SF映画とかによくある指紋認証的なヤツだ。
――地下を下りていく――
真っ暗ではなく、淡い灯。
赤い階段の奥へ。
「この部屋が転送ゾーンってわけか」
「そうです。この床にある円形に入って下さい。自動的に転送が開始されますから」
「転送先は?」
「わたしの部屋です」
なるほど、実に合理的だ。
◆
転送が終わると、ルナの部屋。
可愛らしい子供部屋。まるで幼少時代から時を止めているような光景だった。
「ルナ、これって」
「以前にお話しした事があると思います。わたしはこの塔が好きではなかったのですよ……」
そうだったな。
だから城を別で作って貰ったんだ。
「王の間へ行こうか」
「はい、すっかり遅い時間ですが……父を呼び出します」
ルナの部屋を出る――。
ゆっくり静かに王の間へ入っていく。もちろん、真っ暗で人の気配なんてない。衛兵なんているわけない。こんな時間帯じゃ、見回りの数名がいるかいないか。
「ルナは皇帝陛下を呼び出しに行った……。見回りもルナが止めてくれるというし、安心していいはず」
ひとり王の間で待つというのは、なかなか落ち着かない。そわそわしながら待っていれば、ようやく明かりが灯された。
「お……」
「お待たせいたしました、カイト様。そして……我が父・ダズル皇帝陛下」
カツカツと靴音を立てて現れる皇帝。
この帝国・レッドムーンの頂点に立つ御方だ。
俺は一度だけ会っている。
ダズル皇帝は、玉座に構えるでもなく……俺の前に立ち、厳しい顔で――いや、そうでもなかった。表情を呆気なく崩した。
「カイトよ……よくぞ娘を助けてくれた。あの時はまともな礼が出来なかったが、改めて感謝を言いたい。ありがとう」
「いえ、礼なんていいんです。俺は当然の事をしただけです。助けられる人は助ける、それが俺の商人としての理念ですから」
「素晴らしい。君はまるで聖者だな」
肩をポンポンされ、俺は少し照れる。
そんな風に言われるとはな。
「父様、聞きたい事、話したい事が山ほどあるのです」
「察しておる。戦争についてだろう? それなら、ノエル騎士団長が直々にお前たちの元へ向かったはず。それが答えだ。あとはカイトの返事次第というわけだ」
「ですが、それではカイト様が……彼に大きな負担を強いる事になるのです。商売への影響にも直結するのです」
これは俺が前に感じていたように、レベル売買のイメージが大きく損なわれる可能性があるという事だ。
「それは心配無用だ。約束しよう……戦争に勝利した暁には、カイトを大英雄として扱う。それで其方の身は、安全は完全保証されるのだ」
「違うのですよ、父様。彼はそんな物を望んではおりません。欲しいのは平和と安寧です。わたしは、カイト様と共に商売が出来ればそれでいいのです」
「しかしだな……。では、破談というになるのかな。となると……娘はもう自由にはしてやれないかもしれない」
陛下から目を向けられ、俺はハッとする。
まだ答えなんて出ていない。帝国の未来を考えれば、正しい選択のはず。間違ってなんかいない。多分、間違っていないんだ。
俺は……今も未来も欲しい。
だから。
「陛下、私の能力……『レベル売買』なら全騎士のレベルを9999に出来ましょう。なんでしたら、敵兵すべてのレベルを『1』にも出来ます。ですが、相手はそんな事は百も承知なんです。なぜなら、向こうには世界最強ギルド『シャロウ』がいるのです。俺も所属していました。なので相手はレベル操作については、熟知しているのです」
「なんと……そうであったか」
「ですから相手は必ず対策をしてくるのです。確かにレベル9999なら無敵でしょう。でも、相手は、必ず何かしらの策を講じてきます」
むぅと考え込む陛下。
俺は話を続ける。
「ですが……ひとつだけ名案があります」
「ほう。名案とな」
「――それは」
それでも俺とルナは、オルビスへ――。
「到着っと……」
あれから一時間は歩いただろう。
さすがにN地区からL地区までは遠い。
「この時間帯ともなると正門からは入れません。ですから、わたし専用の隠し通路から侵入といいますか、裏口からの帰宅です」
「そうだな、ここはルナの家でもあるのだから勝手に入っても問題はないもんな」
「ええ、こればかりは父ではなく、メイド長のオーロラに頼み込んで作って貰ったのですけどね」
皇女様も外へ抜け出したくなる時がそりゃ、あるよな。同情しつつも、ルナについていくと、かなり隅に扉があった。
「ここです。この地下が特別な部屋に繋がっており、奥に転送があるんです」
「へぇ、そりゃ凄いな。わざわざ作ったとか」
「はい……どうしても外へ出たかったのです。転送の技術は、アプレミディ卿に」
じっちゃん何やってんだよー!
「で、どうやって入るんだ?」
「この箇所にわたしの手を当てるとですね」
ペタっと掌を石の上に置くルナ。すると、扉がガクンと開いた。……なるほど、SF映画とかによくある指紋認証的なヤツだ。
――地下を下りていく――
真っ暗ではなく、淡い灯。
赤い階段の奥へ。
「この部屋が転送ゾーンってわけか」
「そうです。この床にある円形に入って下さい。自動的に転送が開始されますから」
「転送先は?」
「わたしの部屋です」
なるほど、実に合理的だ。
◆
転送が終わると、ルナの部屋。
可愛らしい子供部屋。まるで幼少時代から時を止めているような光景だった。
「ルナ、これって」
「以前にお話しした事があると思います。わたしはこの塔が好きではなかったのですよ……」
そうだったな。
だから城を別で作って貰ったんだ。
「王の間へ行こうか」
「はい、すっかり遅い時間ですが……父を呼び出します」
ルナの部屋を出る――。
ゆっくり静かに王の間へ入っていく。もちろん、真っ暗で人の気配なんてない。衛兵なんているわけない。こんな時間帯じゃ、見回りの数名がいるかいないか。
「ルナは皇帝陛下を呼び出しに行った……。見回りもルナが止めてくれるというし、安心していいはず」
ひとり王の間で待つというのは、なかなか落ち着かない。そわそわしながら待っていれば、ようやく明かりが灯された。
「お……」
「お待たせいたしました、カイト様。そして……我が父・ダズル皇帝陛下」
カツカツと靴音を立てて現れる皇帝。
この帝国・レッドムーンの頂点に立つ御方だ。
俺は一度だけ会っている。
ダズル皇帝は、玉座に構えるでもなく……俺の前に立ち、厳しい顔で――いや、そうでもなかった。表情を呆気なく崩した。
「カイトよ……よくぞ娘を助けてくれた。あの時はまともな礼が出来なかったが、改めて感謝を言いたい。ありがとう」
「いえ、礼なんていいんです。俺は当然の事をしただけです。助けられる人は助ける、それが俺の商人としての理念ですから」
「素晴らしい。君はまるで聖者だな」
肩をポンポンされ、俺は少し照れる。
そんな風に言われるとはな。
「父様、聞きたい事、話したい事が山ほどあるのです」
「察しておる。戦争についてだろう? それなら、ノエル騎士団長が直々にお前たちの元へ向かったはず。それが答えだ。あとはカイトの返事次第というわけだ」
「ですが、それではカイト様が……彼に大きな負担を強いる事になるのです。商売への影響にも直結するのです」
これは俺が前に感じていたように、レベル売買のイメージが大きく損なわれる可能性があるという事だ。
「それは心配無用だ。約束しよう……戦争に勝利した暁には、カイトを大英雄として扱う。それで其方の身は、安全は完全保証されるのだ」
「違うのですよ、父様。彼はそんな物を望んではおりません。欲しいのは平和と安寧です。わたしは、カイト様と共に商売が出来ればそれでいいのです」
「しかしだな……。では、破談というになるのかな。となると……娘はもう自由にはしてやれないかもしれない」
陛下から目を向けられ、俺はハッとする。
まだ答えなんて出ていない。帝国の未来を考えれば、正しい選択のはず。間違ってなんかいない。多分、間違っていないんだ。
俺は……今も未来も欲しい。
だから。
「陛下、私の能力……『レベル売買』なら全騎士のレベルを9999に出来ましょう。なんでしたら、敵兵すべてのレベルを『1』にも出来ます。ですが、相手はそんな事は百も承知なんです。なぜなら、向こうには世界最強ギルド『シャロウ』がいるのです。俺も所属していました。なので相手はレベル操作については、熟知しているのです」
「なんと……そうであったか」
「ですから相手は必ず対策をしてくるのです。確かにレベル9999なら無敵でしょう。でも、相手は、必ず何かしらの策を講じてきます」
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「ほう。名案とな」
「――それは」
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