ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗

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第21話 結婚しています(威圧)

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 柔らかい物が俺を包み込んでいた。
 ベッドから起床すると、遥が抱きついていた。それはいい、全然動けない。腕すら動かせない。よく見ると、強力なホールドをされ、抱き枕か何かと勘違いされているような体勢だった。

 こんなに密着されていたのか。そりゃ、冷静に考えたら動けないわけだ。というか、昨晩からずっとこうだったのだろうか。

 想像しただけで、俺は興奮した。
 いや、している場合ではない!
 今日も学校があるのだ。

 さっさと着替えないと遅刻をする。

「おーい、遥。起きろって」

 体を揺すって起こす。
 直ぐに反応があり、眠たそうに遥は起き上がった。朝、弱いんだな。

「……ん~、おはよう」
「学校へ行くから準備するぞ」
「うん。遙くん、おはようのキスは?」
「な、なにを言うんだ! そんな朝からとか出来るかってーの」

 ファーストキスは交わしたけど、まだそれでも慣れない。まだラブラブには程遠いかもしれないけど、昨晩はようやく一歩を踏み出した。

 まだ、してない事も多いし、これから一歩一歩、確実に前進していこう。


「そっかー。残念、じゃあ着替えるね」


 いきなり寝間着パジャマを脱ぎだす遥。俺の前でっ!


「バ、バカ! 寝惚けすぎだろう。俺はあっち行くから」
「え~、別に見てもいいのに。というか、わたしそんなに魅力ない?」
「そうじゃないって。魅力がありすぎるんだ」

「……そ、そっか。それならいいよ」

 恥ずかしくなったのか、遥は顔を逸らして耳を真っ赤にしていた。俺も朝からどうかなりそうなくらい心臓がバクバクしている。なんだ、この新婚みたいな雰囲気……あ、そっか。俺たちは結婚しているんだっけ。間違いではなかった。


 * * *


 学生服に着替え、朝食はパンとコーヒーをいただいた。

 今日は金曜日。
 ようやくあと一日だ。もう事件は起きないで欲しいと願うばかり。頼むから、もう普通に学生生活を送らせてくれ。そう祈りながら、部屋からを出行く。

 玄関で靴に履き替え、互いに身嗜みだしなみをチェック。

「遥、胸のボタンが取れてるぞ」
「じゃあ、遙くんが掛けて」

「お、俺が!?」

 それってつまり、俺が遥の胸元ギリギリに手を伸ばすってことだよな。望んでいた事とはいえ、いざとなると躊躇ためらってしまう。いつも“揉みてぇ”くらいには思っているはずなのに。

「どうしたの? いつも胸見てるし、触りたそうにしているクセに~」
「……うぅ! なぜ分かった」
「だって、視線がいつもわたしの胸ばかりだもん。見すぎ」

 ジロジロ見すぎたか。
 遥の胸は、女子の平均を上回る。恐らく、FとかGクラスではないだろうか。手で掴むのは、ちょっと難しいかもしれない。そんなサイズ感。

 いや、今は触るわけではない。ブラウスのボタンを掛けるだけ。それだけなんだ。

 俺は、震える手で遥の胸元のボタンを摘まむ。触れないようギリギリの領域を維持しつつ、なんとかボタンを掛けた。

 …………ふぅ。


「ほら、終わったぞ。一仕事終えた気分だ」
「う、うん。いざやられると恥ずかしいね、これ……」
「俺だってヤバかったぞ。さあ、もう行こう」


 羞恥心を誤魔化すようにドアノブに手を掛けた。扉を開けると――そこには誰かが立っていた。

 え……誰?

 てか、なんで扉前に立っているんだ。怖すぎるだろう。

 そこに立っているのは、男だった。なんだか優男っていうのかな。さわやか系のイケメンだった。しかも、スーツでビシッと決めていた。そいつは、遥の存在を確認すると、手を握ろうとした――が、俺が阻止そしした。


「……えっと、どなた?」


 遥も理解していないらしい。
 ということは、知り合いではないようだ。


「つれないなぁ。僕はお見合い相手の『田村たむら 聯太郎れんたろう』だ。ヤッホーの社長さんから頼まれてさ。遥さんの住所を教えてもらって、わざわざ迎えに来たんだ」


 げっ、コイツか。昨晩、遥の父親が言っていたお見合い相手。ていうか、住所聞くなよ。まさかここまで押し入ってくるとは。
 さすがの遥も『うわぁ……』という表情で引いていた。そりゃ、そうだな。父親から一言あったとはいえ、突然家の前まで来るとか非常識すぎる。

 ここは俺の出番だな。
 遥を守るように一歩前へ出る。


「えーっと、そこのシワシワネームの人」
「だ、誰がシワシワネームだ! 突然失礼じゃないかキミは!!」

「すまんすまん。だけど、いきなり女の子の部屋に突撃するとか、そっちの方がよっぽど失礼だぞ」

 うんうん、と全力でうなずく遥。あ、やっぱり、この男をキモいって思っているんだな。その心中、察する。


「大体、お前はなんだ。遥さんとどういう関係なんだ!」
「俺と遥は結婚していますが、なにか(威圧)」

「――へ? け、けっこん……?」


 ぽかーんと口を開ける、なんとか太郎。もう俺の勝利は最初から決まっているのだ。その勢いの波に乗り、遥の肩に手を置いて引き寄せた。
 遥も俺の胸に顔を埋めて、頬を赤くした。


「というわけ」
「な、な、な、な、なあああああああ!!」


 この状況を見て叫ぶ、五郎だっけ。
 ヤツはガタガタ震えて涙目になって――逃げ出した。

 ふ、ふぅ……勢いだったけど、何とかなったな。正直、ああいうタイプに敵うかどうか怪しい所だったけど、やっぱり『既婚』は強いな。そう、結婚しているという事実が、俺に勇気を与えてくれたのだ。
 遥と出会う前の俺は、チキンでどうしようもない陰キャだった。だけど、今は違う。少しずつだけどマシになってきた。

 これがただの恋人同士とかだったのなら、ここまで大胆に出来なかっただろうな。そうだ、今の俺には守るべき存在がいる。
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