最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。

棚から現ナマ

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83 来訪者

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コンコンコン。
木槌の音が聞こえた。
ティナはビクリと身体を強張らせる。

また国王陛下が来たのかしら?
居留守を使いたいが、そういうわけにはいかないだろう。
いやいや扉へと向かう。

「どちら様でしょうか……」
「えっと、ティナ、身体は大丈夫?」
「え……」
目の前に立っていたのはカイだった。

「嬉しい! 嬉しい!!」
(落ち着け、毛玉)
「じっとしていろ、毛が飛ぶだろ」
「なんだよ、騒がしいんだけど」
スー達に会えて嬉しくてジッとしていられないのか、トムがクネクネと身体をくねらせながら尻尾を盛大に振っている。
スー達の冷たい目など気にしていないと言うよりも、気づいていない。

「いや、ほら、今日は休みなのかなぁって、あの、寮って一人だから、寝込んでいても誰も看病してくれないっていうか」
カイは少し赤い顔をして、一気に話す。

カイとティナは同じ習熟組だし座学のクラスも一緒だ。同じテイマーだから午後からの実技も同じクラスだ。
午前中の授業でティナが休みだったから、心配して昼休みに会いに来てくれたのだろう。

「ありがとう」
ティナは笑顔を見せる。

自分のことを心配してくれる人がいることが嬉しい。
村にいた時は、両親がいて、知り合いがいて、それが当たり前だったのに、今では周りに頼れる人がいない。
寮母のトリカやハロルド、クライブや国王からも何かあったら頼ってくれと言ってもらえている。だが、村娘のティナが貴族や王族相手に何かを頼むことはない。言うことすらないだろう。

「風邪でも引いた? 具合が悪い?」
「ううん、身体は大丈夫。ちょっと用事があって、授業が受けられなかっただけ。だけど午後からは行けるわ」
本当は一日サボろうかと思っていたが、カイが来てくれたから、授業に出ることにする。

「カイは、お昼ご飯は食べたの?」
「ああ、俺は食べるのが早いから。ティナは?」
「私も食べたわ」
朝夕のお弁当は届けてもらえるようになっていたが、今日はなぜかお昼のお弁当も届いていた。

「肉、肉を食べた! パンも食べた!!」
(そりゃあ、良かったねぇ(棒))
「そうかぁ、腹一杯かぁ(棒)」
「こいつウゼェ」
テンション高いトムに対して、生返事のスーとちょうちょ。わんぱく小僧の話を聞いてやる近所のお兄さんポジだ。
スーの横から辛辣なことを言っているのはみかんだ。

「じゃ、じゃあ、教室に一緒に行こうか」
「あっ、ちょっと待っていてくれる? 私まだ制服を着ていないの」
「あ、うん、大丈夫。待ってるよ」
「ありがとう。すぐに支度するわっ」
ティナは一旦部屋の中に戻る。
カイは、そのまま扉の前で待つことにしたようだ。
ペット達は着替えの時は一緒にいることができないので、トムをいじくって待つことにする。

(ほーらほらほら、取ってこーい)
「ワフッ!」
スーがワイバーンの骨(小)を取り出すと、放り投げる。
トムは大喜びで走り出す。

「あれでも一応は従魔なんだろう。あるじの許可もなく、走ってどっかに行ったぞ」
「もう戻ってこなくていいのに」
ちょうちょとみかんは走り去ってしまったトムが行った方向を見ている。もう姿は見えない。

「え、トムがいない? どこに行ったんだ、トムーッ」
カイはトムがいなくなったことに気づいて、辺りをキョロキョロと見回している。
テイマーとしてどうよ。スー達の目は呆れている。

「主、骨っ、スライムから貰った、嬉しい!」
トムが走って戻って来た。
骨を口にくわえ、喜色満面だ。尻尾を千切れそうに振っている。

「お前、何くわえているんだよ。ほら、放せ」
「グー」
カイから骨を取られそうになって、トムは抵抗している。絶対離さんマンになっている。

「なあ、従魔ってテイマーに反抗できるんだっけ?」
(反抗の意味が分かってないからいいんじゃないか)
「あれって魔獣なの? 家畜よりも野生が無いよ」
ちょうちょ、スー、みかんに悪気はない。正直な感想だ。

バリィン!
(ご主人様っ!)
「なんだっ」
「ティナ!」
何かが壊れるような音がした。それも部屋の中だ。
ペット達は慌ててティナの元へと走る。

扉は開いており、ティナは驚いた表情のまま固まっていた。

(ご主人様、大丈夫ですか?)
スー達がティナを取り囲んで様子を伺うが、身体に異常は無いようだ。
スーはホッと胸を撫で下ろす(胸の場所は不明)。

「おいスー、見てみろ」
ちょうちょの言葉に視線を向けると、そこには窓を突き破って、棒のような物が入って来ていた。

「何があったんだ。ティナ、大丈夫か?」
カイが慌てて部屋へと入って来た。
トムと騒いでいたため、遅れてしまったのだ。

すでにティナは着替え終わっており、部屋から出ようと扉に手をかけていたから、窓が割れても怪我をすることはなかった。
不幸中の幸いだった。

「なんだこれ、矢じゃないか」
カイが窓から入って来た物を手に取る。
矢は全体が1メートルを超える長さで太さもしっかりしている。矢尻には金属が使われており殺傷能力のあるものだ。

どこから弓を引いたのか、窓からは確認できない。
矢は閉まっていた窓を突き破り、そのまま壁に突き刺さったのだ。
ティナの着替えが終わって、扉へと移動していなかったら、ティナに突き刺さり、最悪死んでいたかもしれない。
スーは恐ろしさに身体を震わせるのだった。


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