最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。

棚から現ナマ

文字の大きさ
27 / 109

25 入学試験・二次試験④

しおりを挟む


「やだ、怖い」
ティナはスーを抱いたまま後退あとずさる。

果物を食べていると、ちょうちょさんや他にも何匹ものキラキラさん達がやってきた。
最初は本物の蝶かと思ったが、よく見ると小さいが人型をしている。まるで絵本の中に出てくる妖精のようだ。
絵本?
絵本って何だろう。
ティナは頭を捻る。何かを思い出したと思ったのに、分からない。

もしかしたらちょうちょさん達は魔獣や魔物の類なのかもしれない。
でもティナには判別できない。ほぼ村から出たことのないティナは、スー以外の魔獣や魔物を見たことはなかったから。
でも、近くに寄って来てくれて、楽しそうにしているから、魔獣だろうと関係ない。ティナも嬉しくなってしまった。

そんな中、ゆっくりと何かが近づいて来た。
見た目は大きな蛇。
村でも蛇を見かけることはあったが、こんなに大きな蛇は初めてだ。胴回りなどティナのウエストよりも大きいかもしれない。
ただ身体全体が内側から鈍く光るような灰色をしている。大きいだけの蛇とは違うと感じる。
鎌首をもたげながら木々の間から現れた。

「スーさん、逃げよう」
蛇はティナのことなど気にしていないのか、どんどん近づいてくる。
ティナは相手を刺激しないように、ジリジリと後ろへと下がって行く。
走って逃げたいが、重いスーを抱っこしているから歩くのですらやっとだ。
震えるティナとは対照的に、ちょうちょさん達は蛇のことを気にしていないのか、そのまま辺りを飛び回っている。

パクリ。
恐ろしさに蛇から視線を逸らせないでいると、蛇は近くを飛んでいた一匹のキラキラをいきなり食べた。
大きな口を開け、一口で飲み込んだのだ
食べられたキラキラは、何が起こったのか分かっていなかったのか、無防備のまま蛇の口の中へと消えていった。

「キャーッ!」
ティナは悲鳴を上げる。
周りのキラキラ達からは、仲間が食べられたというのに恐怖や怒りなど感じられない。いきなり仲間がいなくなったと不思議そうにしているだけだ。

「食べられちゃった。キラキラさんが蛇から食べられちゃった!」
ティナの言葉に、周りはギョッとする。

蛇に食べられた?
だがティナの言う蛇などどこにもいない。気配すら無い。
周りからすれば、ティナが一人で騒いでいるようにしか見えない。だが仲間はいなくなってしまった。
本当に食べられたのか?

「おいスライム、お前のご主人様が言っていることは本当なのか? 喰われたって……」
(俺には分からない。だがご主人様は嘘を言わない)
抱えられたままのスーの元へ、ちょうちょが怯えた顔をして近づいて来た。

「駄目ッ、逃げてっ! また蛇が口を開けているわ。食べられちゃうからっ。早く逃げてっ、逃げてぇぇ!!」
蛇は次の獲物を狙って、近くを飛ぶキラキラへと口を開けている。

ティナは悲鳴を上げると、今まさに食べられそうなキラキラを指さし逃げるように叫ぶ。
指さされたキラキラは、まるで気づいていなかったが、ティナの必死の訴えに、慌てて高く飛び上がった。
間一髪で蛇の口から逃れることができた。

「何かいるっ! 何かの息が俺にかかった。見えないけど何かがいるんだっ」
喰われそうになったキラキラが叫ぶ。
蛇がキラキラを食べ損ねて口を閉じた時の息が、キラキラにかかったらしい。
一気にキラキラ達が動揺して大きく飛び回る。逃げたい、怖い。だが逃げた先に蛇がいるかもしれない。

(やっぱり何かがいるんだ。どうして見えないんだ?)
「見えない……。蛇……。もしかして……」
ちょうちょは考え込む。

「逃げてっ。そっちに蛇が行ったわ。そこのキラキラさん、逃げてっ」
ティナが指をさしながら叫ぶ。
指さされたキラキラは、恐怖に慌てて高く飛び上がる。

蛇はキラキラへと近づいて行くが、その度にティナに邪魔をされる。
ゆっくりとティナへと顔を向けた。
蛇は妖精を食べる『妖精喰い』という魔獣だ。
魔獣とはいうが元は妖精だった。ただ妖精が美味いと知ってしまっただけだ。
もちろん妖精を食べるとはいえ、妖精しか食べないというわけではない。妖精は数が少なく探してもなかなかいない。

蛇は妖精を探し続けていた。
そして妖精がいる『迷いの森』を見つけた。それなのに入り口は固く閉ざされており、入ることができなかった。
近くに妖精の気配を感じることができるというのに。
長い間待って、やっと森へと入ることができた。ようやく妖精を喰らうことができるというのに、邪魔されるのは許せない。
蛇に怒りが湧いて来る。
あの人族が邪魔だ。排除しなければ。

蛇は妖精から魔獣へと変化した時に羽は無くなり飛ぶことは出来なくなった。だが他の魔獣のように火を噴くことは出来ないし、鋭い爪があるわけでもない。
妖精の時同様、攻撃力はほとんどない。何も持たない人族と同じぐらいの力しかない。
たが妖精喰いの特性がある。それが『透明化ステルス』だ。
妖精はもちろんだが、魔獣、人族だろうと蛇を見ることはできない。
全てから見えないと言う訳ではないが、高い魔力や能力がなければ気配を感じることすら出来ないのだ。
だからこそ戦うことの出来ない蛇が生き残っていくことができたといえる。

「やだ、こっちに来る」
人族が騒いでいる。

もしかして、この人族は魔力が高いのか?
今まで自分の存在を知られたならば、すぐに逃げていた。だが、長い苦労の末に、やっと妖精を喰らうことができるのだ、この場から離れたくはない。
人族以外には自分のことは見えてはいない。それにこの人族は見るからに弱そうだ。この人族の存在を消しさえすればいい。

蛇はティナへと近づいて行くのだった。


しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

なんか修羅場が始まってるんだけどwww

一樹
ファンタジー
とある学校の卒業パーティでの1幕。

薬師の名門ブレルスクに入学した私は、退学するまで暴れます。〜少年アレクの倫理で殴る学園ファンタジー〜

鮒捌ケコラ
ファンタジー
入学式から3週間目にして『退学」を言い渡された。 (早くない?RTAじゃないんだからさ。) 自分で言うのもアレだけど、入学してからは結構真面目に通ってた。 けど、どうやら教員の不況を買ってしまったらしい。 幸か不幸か、退学まで1週間の執行猶予が与えられた。 けど、今更どう足掻いても挽回する事は不可能だろうし、 そもそも挽回する気も起こらない。 ここまでの学園生活を振り返っても 『この学園に執着出来る程の魅力』 というものが思い当たらないからだ。 寧ろ散々な事ばかりだったな、今日まで。 それに、これ以上無理に通い続けて 貴族とのしがらみシミッシミの薬師になるより 故郷に帰って自由気ままな森番に復職した方が ずっと実りある人生になるだろう。 私を送り出した公爵様も領主様も、 アイツだってきっとわかってくれる筈だ。 よし。決まりだな。 それじゃあ、退学するまでは休まず毎日通い続けるとして…… 大人しくする理由も無くなったし、 これからは自由気ままに、我儘に、好き勝手に過ごす事にしよう。 せっかくだし、教員達からのヘイトをカンストさせるのも面白そうだ。 てな訳で……… 薬師の名門ブレルスクに入学した私は、退学するまで暴れます。 …そう息巻いて迎えた執行猶予満了日、 掲示板に張り出された正式な退学勧告文を 確認しに行ったんだけど…… どういう事なの?これ。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

処理中です...