最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。

棚から現ナマ

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28 入学試験・二次試験⑦

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「受験生の方達に説明します。アクシデントにより本日の二次試験は中止となりました」
迷いの森にいた受験生達は学園の裏門へと集められていた。
ティナがハロルド達と共に合流すると、すぐに係員が説明を始める。

ティナはやっと学園へと入ることができたのだ。
これで紹介状を渡せば就職することができる。ホッと安心しながら、村長から預かっている紹介状を服の上から確かめるように触る。
紹介状には、ティナが学生食堂の下働きになれるようにと書いたからと村長が言ってくれていた。食堂の偉い人に渡さなければ。
食堂はどこにあるのか、キョロキョロと辺りを見回す。

ティナの周りにいる受験生達は、係員の説明に動揺している。
せっかく一次試験を通過することができたというのに、このまま入試自体が中止になってしまうのだろうか? 来年の入試まで待たなければいけないのか?

「どういうことだ。一次試験を合格したというのに、このまま失格になるのかっ」
一人の受験生が声をあげた。
周りの受験生達も同意して声を上げたり、頷いたりしている。

「落ち着いて下さい。ちゃんと二次試験は受けて頂きます。今から木札を渡しますので、一人一枚受け取って下さい」
説明している係員とは別の係員が、受験生一人一人に木札を渡している。
掌に乗るほどの大きさの木札には、何か文字が書かれている。ティナには読めないが。

「今日は学園の正門から帰っていただきます。明日、その木札を持って二次試験会場の入り口へと来てください。木札と引き換えに二次試験を受けてもらいます。試験は森を通り、三次試験が開始される午前9時までに学園に到着することです。到着されましたら二次試験は合格となり、そのまま三次試験に参加していただきます」
魔獣のゴタゴタがあり、今はもう夕方に近い。試験は明日に繰り越されたようだ。

(えー)
周りの者達はホッとしたり喜んだりしているが、ティナ一人だけ困惑していた。
まだ試験が続くなんて、いつになったら就職できるのか。
もし試験に落ちてしまったらという考えがぶり返して来てしまい、ゾッとする。

それに、明日試験と言われても、この後どうすればいいのか。
ティナは着の身着のままでここにいる。宿に泊まるためのお金など持っていない。
今まではキャラバン隊や老夫婦と一緒だったから、テントや馬車に泊まることができていた。いくら田舎暮らしをしていたといっても、野宿をしたことはないのだ。

「なーなー、ティナはどこに泊まるんだ? 俺の所に来いよ。果物も木の実も沢山あるし、柔らかいワラを集めて寝床も作ってやるよ。それに近くに綺麗な泉があるんだ」
途方にくれているティナの髪の毛をちょうちょが引っ張る。

なんとちょうちょはティナ達に付いて来ていたのだ。
学園に居た者達は妖精を連れたティナを見てギョッとしていた。
受験生のほとんどの者達にちょうちょは見えてはいないようだが、学園の職員や係員達には見えている。

ティナの魅了チャーム魔法のせいなのか? だが付いて来ているのは一体だけだ。
まさかこの妖精はティナにテイムされたのか? 
妖精が付いて来ていることに気づいたハロルドは驚きを隠せないでいた。
妖精は加護を与える力があり、妖精の加護を欲する者は多い。だが、妖精がテイムされたなど、今まで聞いたこともなければ、文献に載っていたことも無い。
妖精をテイムしたと言うのであれば、ティナは問答無用で学園への入学が認められるだろう。
今すぐにでも色々と聞きたいが、まだ試験の最中だ。ハロルドもだが、周りの者達も声をかけることをグッと堪えている。

「あら、ちょうちょさんどうしたの?」
ちょうちょの誘い文句はティナには通じていない。
一生懸命喋っても、声が小さすぎて、ティナには聞き取れないのだ。

(そこは安全か?)
「もちろんだ。ティナには蛇をやっつけて貰った恩があるから、俺達の住み家に案内する。皆に会わせたいんだ」
ティナの足元にいるスーとちょうちょは念話で会話している。
喋れないスーと、小さな声のちょうちょだが、念話には関係無い。

(蛇をやっつけてやったのは俺だろう。俺をうやまえ)
「はぁ、何言ってんだ。ティナに蛇が迫らなければ、お前は俺達がどれだけ喰われたって何もしなかっただろう。俺達を助けてくれたのはティナだ」
ちょうちょの言葉に、それはそうだとスーは頷く。
スーにとって、妖精が全員喰われて全滅しようが、どうということはないのだから。
ご主人様さえ無事なら、それでいい。

「え、あら、スーさんまで引っ張らないで」
スーは小さくて愛らしい(自分ではそう思っている)触手を出すと、ちょうちょが先導する方向へとティナを引っ張る。

そのままスライムに引っ張られて行くティナのことを、周りの者達は凝視していた。
人と関わることを嫌う妖精が、まるでこっちに来いと言っているように、ティナの少し前を飛び、知能が低いはずのスライムが、突起を出してあるじを引っ張って、どこかに連れて行っている。
信じられない光景だ。

ティナ達は、先ほど入って来た迷いの森へと続く門へ進むと、閉じられていた扉を少し開け、その中へ入ってしまった。そして扉はすぐに閉められた。

「あり得ない……」
ハロルドの口からポロリと言葉が零れる。

迷いの森への扉は閉められていた。
鍵は取り付けられてはいないが、魔法がかけられていた。扉が開かないようにと封印の魔法がかけられていたのだ。
簡単に開けられるものじゃない。

ティナは一次試験の時、ゲートの結界が通れずに試験に失格しそうになっていた。
スライムが結界の隙間を力業で押し開き、その隙間を通って合格したのだ。
それなのに、ゲートの結界よりも遥かに強い魔法がかかった扉を簡単に開けて出て行ってしまった。
一次試験の時はティナには魔力はないと思っていたが、妖精を見ることができているどころかテイムしているかもしれない。
どれ程の魔力を持っているのか。

おもしろい。
従魔のこと、妖精のこと、魔法のこと。
ティナには謎ばかりだ。
明日以降の試験で、謎が解ければいいのだが。
ハロルドは、明日の試験でも、必ず試験監督をしようと決意したのだった。



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