最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。

棚から現ナマ

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30 入学試験・三次試験前日②

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(まあ、寿命が長いのはいいことだよな。それはいいとして、俺のレベルを教えてくれないか?)
これ以上寿命が長いことをどうこう言われても、自分ですら分からないのだからどうしようもない。スーは他のステータスを聞くことにする。

「おお、そうですな。スライム殿のレベルは……。5、レベル5ですな」
族長はスーを少しの間凝視すると答える。

「えっ、たったのレベル5!? 妖精喰いを一口で食っちまうヤツなのにレベル5だなんて信じられない」
スーが自分のレベルに対して何か言う前に、ちょうちょが騒ぎだした。

(まさかレベル5だったとはな。まあ、言われてみれば、元がレベル2だったとして、俺が成長痛になったのは3回だもんな)
スーにしても自分がレベル5だったのは驚きだが、考えてみれば納得だ。

「そうですな、儂ら妖精族ですらレベル5といえば、幼子のレベルですな……」
長老も驚いている。

スー本人もそうだが妖精達も、この世界のスライムはレベル2までしかいないことを知らない。
他の魔獣と同様にレベルは簡単に上がるのだと思っている。とは言ってもレベルは上がれば上がる程、次レベルにはなりにくくなるのだが、それでもレベル10くらいまでは、それほど苦労せずに上がるものだ。

「あんな触手を何本も出すようなキモスライムがレベル5だなんて信じられない。俺ですらレベル20は超えているのに」
(おまえは本人の前で、よくそんな悪口が言えるな。一度羽をむしられないと分からないみたいだな)
スーが本気で腹を立てているのか頭のてっぺんから触手が出そうになっている。

妖精のレベルは上がりにくい。
非力な妖精は争いを好まないし、生活をしていく上で、それほどまでに能力を使うことがないからだ。
それでも寿命が長い分、少ないながらも経験値が溜まりレベルは上がっていく。
ちょうちょも可愛らしい外見をしているが、人族からすれば随分と高齢といえるのだ。

「ま、まあ、種族ごとにレベルの強さは違いますからな。レベルが低いとはいえ、スライム殿がお強いのは分かっておりますとも。どうか触手を引っ込めてくだされ」
ちょうちょの命が危ぶまれるのか、長老が慌ててスーをいさめる。

「へっへーん。レベル5なんて怖かないぜ」
(羽をむしられるだけじゃすまなそうだな。いっそ喰っちまうか)
ちょうちょがスーの周りを飛んで回り、スーの触手も伸びていく。

「ス、スライム殿、ジョブ! ジョブをお知らせしましょう」
「あっ、ジョブがあった」
(ジョブって何だ?)
慌てた長老の提案に、スーとちょうちょは長老へと視線を向ける。

「ジョブとは職業といいますか、現在の状態ですな。何か仕事に就いていればそれが表示されます。儂のジョブは “集落の相談役” と表示されております。先ほど驚いてしまったのは、スライム殿のジョブが見えてしまったからなのです」
(へー、そうなんだ)
スーは自分の状態がどう表示されているのか、見当も付かない。
レベルアップしたことにより、普通のスライムより少し逸脱(いつだつ)しているかもしれないが、それがジョブに反映されているのだろうか?

「なになに。デブスライムのジョブは何なの?」
(羽虫は煩い)
またもスーとちょうちょが険悪になりそうになり、慌てて長老は説明しだす。

「本来、魔獣がテイムされている場合、このジョブには “だれそれの従魔” と表示されるものです。ですがスライム殿には、その表示が無かった。その代わりに……」
(その代わりに?)
「なんて表示されているんだ?」
長老は言いにくそうに、そこで言葉を止めてしまった。

「あの、言ってもよろしいですかな? 聞かない方がいいかもしれませんぞ」
(いやいやいや、ここまで言っといて、止めるのは無しだぜ)
「そうだよ。俺も気になるじゃないか!」
(羽虫は聞かんでいい)
「俺は立ち会う義務がある」
(そんなもん無いわ)
またも言い合いを始めたスーとちょうちょを前に、長老は覚悟を決めたのか口を開く。

「スライム殿のジョブは……」
(俺のジョブは?)
「デブスライムのジョブは?」
スーとちょうちょは固唾をのんで長老の言葉の続きを待つ。

「スライム殿のジョブは……。“ティナのペット” です!!」
(え!?)
「なんと!?」
言いにくそうに、それでもきっぱりと長老は言い切った。

(そんな、あり得ない……)
スーは呆然としている。

「ス、スライム殿。落ち込む必要はないです。儂のステータスを見る能力はそれほど高くはありませんからな、見間違いということもあります。それにジョブは状態が変われば、すぐに変わるものです。安心してくだされ」
「そ、そうだぜ。大丈夫、すぐに変わるさ!」
長老とちょうちょがスーをはげます。

(あり得ない。あり得ないだろう。ペットだなんて、そんなジョブ、信じられない……)
「だ、だよな。ペットだなんて嫌だよな。でもジョブは変えられるんだから、すぐにペットなんて辞められるって!」
ちょうちょはスーの周りを飛びまわりながら、あれ程憎まれ口をたたいていたのに、一生懸命なぐさめている。

(はぁ、ペットを辞める? 何言ってんだ、辞めるわけがないだろう!)
「え、でもあり得ないって」
スーはちょうちょが周りを飛びまわるのが煩わしいのか頭(?)を振る。

(俺のジョブは間違っているって言ってんだよ)
「だからペットが嫌なんだろう」
(嫌なもんか。俺はご主人様のペットだ)
「じゃあ何が嫌なんだよ」
(おかしいだろう “ティナのペット” っていうのが信じられない。俺はご主人様の愛玩ペットなんだ。愛されているんだよ! ただのペットなんかじゃないっ!)
スーはフンスと鼻息荒く言い切る(鼻は無いが)

「愛玩……」
ペットなのが嫌じゃないんだ。そういや前にもペットだと自慢(?)していたことがあったな。
愛されって何だよ。どんだけ愛に貪欲なんだよ。
ちょうちょは脱力する。

「スライム殿は従魔ではなくペットなのですか?」
(おうよ。俺はご主人様に可愛がられているペットなんだぜ! それなのに、なぜジョブにはそこが反映されていないんだ。納得いかない)
ペットだといわれて、喜ぶどころか胸を張る魔獣がいようとは。
本来魔獣は人族とは相容れない。それに知能は高そうなのにプライドは無いのか?
長老は驚きを隠せない。

「お前、そんなジョブでいいのかよ?」
(当たり前だろう。俺はご主人様のペットだからな。これほど素晴らしいジョブはないぞ)
「いやいやいや、ペットだぞ」
(何だよ。文句でもあるのか? そんなに言うならお前のジョブは何なんだよ。御大層なジョブなんだろうな)
「俺か? 俺のジョブは……。何だっけ?」
(知らねーのかよっ!)
ちょうちょの返答にスーはずっこける。

(長老、偉そうなことを言っているこいつのジョブは何なんだ?)
「俺も知りたいです!」
スーとちょうちょは長老へと話を振るのだが、ちょうちょを見ている長老の表情がおかしい。
今まで散々驚くことはあったが、それ以上の驚愕の表情をしていた。

「長老、俺がどうかしたんですか?」
自分を見る長老の様子がおかしいことに気づき、ちょうちょは困惑するのだった。


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