最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。

棚から現ナマ

文字の大きさ
48 / 109

46 入学試験・最終試験①

しおりを挟む


「いいぞ、いいぞ、上手いぞっ」
「よーし、頑張れっ、お前なら出来る!」
ステージの上ではブルーウルフのトムとサラマンダーのライダーが戦っている。
二匹のあるじはステージの脇から盛んに声援を送っている。

喧嘩しているわけではない。
四次最終試験が始まったのだ。
試験内容は模擬戦だった。

「この模擬戦での勝敗は合否に関係は無い。特性や能力の有無、従魔の伸びしろ、テイマーの力量などの様々な事柄を、模擬試験を通じて検査する。思う存分にアピールして欲しい」
試験官のハロルドの説明の後、1組目のトムと2組目のライダーが最初に対戦することになった。

トムはその鋭い爪でランダーを引き裂こうとするが、ランダーの吐く炎のために、なかなか近づくことができない。ランダーの方も素早い動きのトムに炎をぶつけることが出来ないでいる。

(暇だな……)
スーがわざわざ口を作ってあくびをしている。

「おいスライム、見えないぞ! 俺にも見えるようにしろ」
(うるせー、食料は黙ってろ)
スーのからカーバンクルが文句を言っている。

今、カーバンクルは全身をスーに飲み込まれている。
スーの背中から顔だけを出している状態だ。有袋類ゆうたいるいの親子のようだ。向きは違うが。
いくらカーバンクルが仔どもだとはいっても、スイカの大きさしかないスーが丸ごと飲み込んでいる状態なので、スーは随分と大きくなっている。

わざわざ飲み込まなくても、おんぶ紐とかで背中にくくってもいいんじゃないか……。
ちょうちょは思うが、それでは駄目な理由がある。

カーバンクルは従属の首輪から解き放たれ、現在は野生の魔獣となっている。
そうなると入試会場である学園の中にいると駆除対象となる。いくらカーバンクルが高位の魔獣だと言っても、学園の中には高い魔力や能力持ちが大勢いる。そのうえカーバンクルは幼い。殺られてしまうのが目に見えている。

学園から離そうかとも思ったが、本人カーバンクルが嫌がった。このまま敵を倒すまでは学園にいるのだと言い張った。
しょうがないからスーがカーバンクルを飲み込むことにしたのだ。
飲み込んでしまえばカーバンクルはスーが食べている最中の食料とみなされる。
なんせスライムは食べるためだけの存在だと思われているから、身体の中に取り込んだ物を消化しないなどあり得ないことだからだ。
その食料が頭だけ出して、キョロキョロと辺りを見回し、捕食者にあれこれ文句を言っていても、消化途中の食料に変わりない。
学園の中に堂々といることができる。
だが、こんな姿をご主人様には見せられない。可愛らしいペットにはあるまじき姿ブサイクになってしまっている。
早くどうにかしないと。

今現在ティナはここにはいない。
本当ならスーはご主人様といつも一緒にいたい。どこにでも付いて行きたい。
だが、それはご主人様に拒否されてしまった。
泣きたい。
スーは悲しみに打ちひしがれている。
ご主人様に言われてしまったのだ『トイレの前で待たないでね』と。
こんな不幸なことがあるだろうか。

ティナは食べすぎてしまっていた。
生まれて初めて手の込んだ豪華な料理を食べたのだから、そりゃあ嬉しくてキャパオーバーに気が付かなくてもしかたがない。
おかげで今はトイレの住人になっている。
スーはご主人様のことを何時間でもトイレの前で待つ心構えはあるし、ご主人様を待つことは苦痛ではない。
それなのに拒否されてしまったのだ。

「おい、そろそろ俺達の番らしいぜ」
(どっちが勝ったんだ?)
声をかけてきたちょうちょにスーは答える。

スーは、トムとランダーの試合で、勝った方と戦うのだと思っている。
なんせCブロックで試験を受けていたのは4組。その内の1組がリタイアしてしまったのだから。
まあ、どちらが勝とうともスーの敵ではない。スーが嫉妬の余り威圧を放った時は、二匹とも逃げてしまっていたぐらいだから。

「いやそれが……」
(ん、どうしたちょうちょ)
ちょうちょから、あっけに取られたというよりも、呆れたという声が聞こえてきて、スーはちょうちょの視線を追う。
そこには……。

(なんでお前がいるんだっ!!)
獣の形に戻ったグリファスがステージにいた。

「我も受験生だからな、試験を受けるだけだが」
(誰が受験生だよ。よくそんなことが言えるなっ。神獣が受験する学校なんてあるわけないだろうがっ)
スーは叫ぶ。
プライドの高いスーだが、ボコボコにされるのは目に見えている。神獣と模擬試合などしてたまるか。

「なんだとっ。おいスライムっ、俺を出せっ」
(オワッ。暴れるな)
カーバンクルがスライムから飛び出す。
無理やり飲み込んでいたわけではないので、出入りは自由だ。

「よしっ、俺がジジイを叩きのめしてやる。かかってこい!!」
カーバンクルはピョンピョンと “やんのかステップ” をしながらグリファスへと威嚇する。
まだ仔どものカーバンクルからジジイ呼ばわりされても心の広いグリファスは怒らない。逆に微笑ましいという表情だ。

(そうかぁ、そりゃあ良かったなぁ(棒))
「凄いねぇ、偉いねぇ(棒)」
スーとちょうちょは、またも親戚のおじさんになっている。

「愛らしい。いではないか」
クライブが相好を崩している。カーバンクルに対しては、いつも崩しているが。

「まあ、フェネックちゃん、元気になったのねぇ」
いつの間にかトイレから戻って来ていたティナが、飛び跳ねるフェネックへと笑顔を向けている。

(まさかっ、俺がカーバンクルを飲み込んでいたのを見られた!?)
スーは固まる。
愛されペットを目指しているスーは、あるまじき姿ブサイクな自分を見られるわけにはいかない。
おずおずとティナへと視線を向ける。

「待たせてごめんなさいね」
ティナはスーの心配に気づいていないのか、屈んで撫でてくれる。
見られてはいなかったようだ。スーはホッと胸を撫で下ろす。スライムのどこが胸なのかを、ちょうちょだけがわかっていた。
少し伸びをしてティナの手に、もっと撫でろと言わんばかりに身体を押し付ける。

「試験を続ける。ティナ、ステージへ」
「え!?」
ティナはトイレに行っていたから最終試験模擬戦が始まっていたのを知らない。
ハロルドから呼ばれ、戸惑ってしまう。

ステージの上には鷲さんがいる。
鷲さんと何かをするの? だが何をすればいいのだろうか?
ティナは頭を捻る。

「スー、ちょうちょ、早くステージに来るがよい」
グリファスはやる気満々だ。

神獣を相手にスーとちょうちょの模擬戦が始まろうとしていた。


しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

なんか修羅場が始まってるんだけどwww

一樹
ファンタジー
とある学校の卒業パーティでの1幕。

薬師の名門ブレルスクに入学した私は、退学するまで暴れます。〜少年アレクの倫理で殴る学園ファンタジー〜

鮒捌ケコラ
ファンタジー
入学式から3週間目にして『退学」を言い渡された。 (早くない?RTAじゃないんだからさ。) 自分で言うのもアレだけど、入学してからは結構真面目に通ってた。 けど、どうやら教員の不況を買ってしまったらしい。 幸か不幸か、退学まで1週間の執行猶予が与えられた。 けど、今更どう足掻いても挽回する事は不可能だろうし、 そもそも挽回する気も起こらない。 ここまでの学園生活を振り返っても 『この学園に執着出来る程の魅力』 というものが思い当たらないからだ。 寧ろ散々な事ばかりだったな、今日まで。 それに、これ以上無理に通い続けて 貴族とのしがらみシミッシミの薬師になるより 故郷に帰って自由気ままな森番に復職した方が ずっと実りある人生になるだろう。 私を送り出した公爵様も領主様も、 アイツだってきっとわかってくれる筈だ。 よし。決まりだな。 それじゃあ、退学するまでは休まず毎日通い続けるとして…… 大人しくする理由も無くなったし、 これからは自由気ままに、我儘に、好き勝手に過ごす事にしよう。 せっかくだし、教員達からのヘイトをカンストさせるのも面白そうだ。 てな訳で……… 薬師の名門ブレルスクに入学した私は、退学するまで暴れます。 …そう息巻いて迎えた執行猶予満了日、 掲示板に張り出された正式な退学勧告文を 確認しに行ったんだけど…… どういう事なの?これ。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

処理中です...