最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。

棚から現ナマ

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50 合格発表

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ティナが控室からCブロックへと戻ると、スーとちょうちょが青年に抱えられていた。
あの王族かもしれないきらびやかな青年だ。

「まあ、スーさん、ちょうちょさん、どうしたの!?」
慌ててティナは駆け寄る。

「ああ、心配はいらない。疲れて眠っているだけだ」
「ご迷惑を、おかけしました」
ティナはグリファスからスーとちょうちょを受け取る。
心配したが、本当にぐっすり眠っているようだ。

「この頃、色々なことがあって、疲れていたのね」
ティナは二匹をギュッと抱きしめる。

「ティナ嬢、面倒をかけたな」
クライブが声をかけてきた。
控室に行くように指示を出したのがクライブだった。

クライブの胸からカーバンクルが顔を出している。
カーバンクルは上着の中に入れられ、外したボタンの隙間から顔を出している。
まるで抱っこ紐に入れられた赤ちゃんのようだ。

スーの食料(仮)だったカーバンクルだが、現在はクライブの胸の中に隠されている。
見つかると駆除されてしまうので、極力顔を外に出さないようにしている。
おかげでクライブの胸は豊満だ。

ティナはキョロキョロと辺りを見回す。
就職試験はどうなったのだろうか?
試験だとステージに上がるように呼ばれたが、上がる前にクライブから控室に行くように言われてしまい、結局試験を受けていない。
今から試験が始まるのだろうか?

「受験者はこちらに集まってくれ」
ハロルドが手を上げている。
カイとタイリーも控室から戻ってきており、ハロルドの元へと向かっている。
ティナも慌ててそちらへと向かう。

「全ての試験が終了した、皆ご苦労だった」
ハロルドの言葉に、いつの間にか試験が終了していたことをティナは知った。

何時の間に?
午後から自分はトイレに籠ってしまっていたから、試験を受けていない。
もしかして辞退になってしまったのだろうか。
ティナは顔色が悪くなっていく。

頑張ったのに。一生懸命頑張ったのに。
この試験に落ちてしまったら、仕事も住む場所もない。
どうやって生きていけばいいのか。
結局、紹介状を渡せていない。早く誰かに渡していれば、結果が変わっていたかもしれない。今更悔やんでもしかたがないのに。

「試験結果は試験終了本日から一週間後に発表になるのだが、Cブロックは4組と参加者が少なかったので、この場で発表する」
ハロルドが話を続ける。

Cブロック以外は百人以上の受験生がいる。
そのため合格発表は一週間後に行われることが通例だ。
だが、Cブロックだけは毎回例外といえる。毎年の受験者数が3~4組しかいないのもあるが、前提として希少なテイマーは、がいな限り、その能力に関わらず『合格』が決まっている。
試験を受けさせるのは、そのよほどのことを見極めるためだ。

「今回の受験は4組だったが、残念なことにエリオット=ワークスから辞退の連絡が入っている」
今回はエリオットがよほどのことに該当した。
辞退ということになっているが、エリオットは寝込んでおり、いつ元気になるのか見当が付かない状態だ。

「皆おめでとう。全員合格だ」
ハロルドは笑顔で告げる。

「やったー! トムやったぞ、偉かったな、合格だっ」
「ありがたいっ。なんて嬉しいんだ」
カイとタイリーは自分の従魔に抱き着いて喜んでいる。

「え……」
ティナは戸惑う。
だって試験を受けていないのに、全員合格といわれても、その全員に自分は入っているのだろうか?
もしかして最初から頭数に入っていなかったのでは。
ティナの考えは悪い方へと向かって行く。

「これからは同じザイバガイト学園の生徒だ。よろしく頼む」
ハロルドがカイ、続いてタイリーの肩を叩き、最後にティナの元へとやってきた。

「わ、私も合格なんですか?」
「もちろんだよ」
「で、でも最後の試験を受けていません」
「ああそうだったね。ティナは席を外していたけど、君の従魔達が頑張ってくれたよ」
「え、スーさんとちょうちょさんがですか?」
スー達は、自分達が戦うことをティナには知られたくないようだったので、ハロルドは詳しくは言わなかった。
ティナはギョッとしている。

「そんな! スーさん達に何をやらせたんですか!? スーさんはか弱いスライムなんですよ。それにちょうちょさんだって、こんなに小さいのに。もしかして、それで具合が悪くなっているのでは?」
ティナは慌ててスーとちょうちょの全身を調べる。
自分の試験の合否よりも、ペットの方が大事だ。
二匹とも怪我一つなく、イビキをかいているので、ティナはホッと安心する。

「あーうん、そうだね。か弱いスライムと小さな妖精だ」
まさかティナは自分の従魔のことが分かっていないのか?
神獣にかすり傷とはいえ、怪我をさせるスライムと妖精が、か弱いとは……。
ちょっと遠い目をしてしまった。

ん、かすり傷?
そういえば模擬試合では、グリファスは手加減をしていただろうが、それでもスーが無事で済むわけはなかった。大けがではないが、擦り傷、切り傷、打ち身を何カ所も負っていた。
今のスーは……。
水色のツルリとした肌には傷一つ無い。
どういうことだ、もう傷が治ったというのか?

思わずスーとティナを交互に見てしまう。
従魔はあるじと魂で繋がっている。
主がテイマーのレベルが高いと従魔の怪我や病気は早く治り、魔力の回復も早いという。
ティナは、高レベルのテイマーということなのか?

「安心して、ティナは合格で間違いない。これから入学手続きがあるから、一旦事務室の方に移動してもらう」
「入学手続き?」
ハロルドの言葉にティナは頭を傾げている。

「ティナは村から出てきたと言っていたから通学ではなくて、寮に入るのだろう。手続きが終わったら、寮にも案内するよ」
「寮……。そうです、住み込みです!」
ティナの表情が明るくなった。

「そうです、住み込みなんです。よかったぁ、合格できたんだ。これで働くことができる」
「働く?」
ティナは抱っこしているスーとちょうちょを、またもギュッと抱きしめて喜んでいる。

「手続きは食堂に行けばいいんですか?」
「食堂? いや、事務所だが」
「事務所ですか? 紹介状はそちらに出せばいいのですか? 食堂の偉い人に渡すのかと思っていました」
「紹介状?」
なんだかおかしい。ハロルドは違和感を覚える。
話がかみ合っていない。

「ティナ、紹介状とはなんだい」
「村長が持たせてくれたんです。紹介状を渡せば下働きで雇ってもらえるって。なかなか渡せなかったんですけど、やっと渡すことができるんですね」
ティナはホッとしたような笑顔をみせる。

「……すまないが、紹介状を見せて貰ってもいいかな」
齟齬そごの予感と共にハロルドはティナへと紹介状を渡してもらおうと、手を差し出すのだった。

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