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第七章 栄耀栄華
第七十六矢 栄華、花開く
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長い冬が終わりを告げ、春の陽気が訪れる。
駿府の町では桜が満開となっていた。
「そっか、もう春かあ~」
俺は庭園に面している廊下で足を止めて、堂々と咲き誇る桜を見ていた。
「殿、お急ぎくださいませ。」
桜に見とれていた俺を吉田氏好が大広間へ行くように促した。
「そうだそうだ、桜を見てる場合じゃなかった。」
氏好の促しを受けて、俺は早足で大広間へと向かった。
「ごめん、待たせちゃった?」
「いえいえ、お気になさらず。」
俺が大広間に着くと、一人の男がいた。
名は安部元真。
俺が推し進めている経済政策である金山開発を担当している家臣だ。
かつて金山開発を担当していた三浦範高亡き後、範高の跡を継いで現在に至っている。
今回は、金山開発の経過を聞くために俺が呼び寄せたのだ。
「それで金山開発の調子はどう?」
「順調でございます。また殿の心配りに皆が感謝しておりまする。」
「そりゃ良かった。」
俺は金山での労働環境の改善を進めており、金山で働く者の運搬を保証をするなど金山採掘の環境が整備していったのだ。
「それでさ、金山開発のことなんだけど開発の規模をもっと大きくしようと思うんだ。」
「規模を大きく?」
「うん、人員をより多く動員して金の生産量をもっと上げたいんだよね。」
「なるほど…承りました。」
「よろしくね。」
こうして、俺は開発の規模を大きくし、今川はさらなる莫大な富を得ることになっていくのであった。
元真が大広間から去った後、俺は自分の部屋に戻ろうとした。
それを氏好は引き留める。
「殿、三条西様がいらっしゃっておりまする。」
「わかった、連れてきて。」
俺がそう言うと、氏好は犬丸に公家の三条西実枝を大広間へ連れてこさせた。
三条西家は、公家の中でも名門である三条家の分家の正町三条家のそのまた分家の家である。
しかし分家とはいえ、内大臣と呼ばれる高位の役職に何人も輩出しているのだから充分名門と言えるだろう。
実枝は俺に頭を下げた。
「此度は麻呂を受け入れて頂き、ありがたく存じまする。」
この頃、京では畿内で権勢を振るっていた細川晴元と晴元の重臣であった三好の争いが勃発していた。
両者の争いは長きに渡って続き、京はすっかり荒れ果ててしまっていた。
それゆえに、公家たちは『東国の京』と名高かった駿府へと逃れてきていたのだ。
この三条西実枝もその一人であり、今回は俺にあいさつをしに来ていた。
「しかし、流石は東国の京。かつての都のようにございますなあ。」
「そう言ってもらえると嬉しい限りです。」
元々、駿府の町は華やかであったが、京から公家や文化人が移り住んだことで、ますます京風の公家文化が町に取り入れられていた。
これにより、駿府はかつての京と遜色ないほど栄えていたのだ。
「ところで近日、駿府へ参った記念として是非とも連歌会を開こうと思うのだが、義元殿も如何かな?」
「あ~…」
俺は少し躊躇いを見せる。
俺は連歌が大の苦手だった。
ただ、連歌は公家のみならず武将も嗜むので苦手を克服したかった。
そのため、実枝と同じく公家である冷泉為和から指導を受けてはいたが、それでも苦手意識を払拭できなかった。
(まあでも、苦手を払拭するためにも場数は踏んでおいた方がいいだろうし…)
「…じゃあ是非その会に参加させてください。」
俺は渋々連歌会の参加を決めた。
そしてそれから他愛もない談笑を二十分ほどした後、
「では、麻呂はこれで…」
と言って実枝は大広間から去っていった。
俺もまた、あくびをして自身の部屋へと戻ろうとした。その時、俺はあることを思い出した。
「あ、そういえば大事な話があるんだった。犬丸君と藤三郎君、ちょっとこっちに来て。」
俺がそう手招きをすると、二人は何だろうと首を傾げながらも俺の前へと来た。
駿府の町では桜が満開となっていた。
「そっか、もう春かあ~」
俺は庭園に面している廊下で足を止めて、堂々と咲き誇る桜を見ていた。
「殿、お急ぎくださいませ。」
桜に見とれていた俺を吉田氏好が大広間へ行くように促した。
「そうだそうだ、桜を見てる場合じゃなかった。」
氏好の促しを受けて、俺は早足で大広間へと向かった。
「ごめん、待たせちゃった?」
「いえいえ、お気になさらず。」
俺が大広間に着くと、一人の男がいた。
名は安部元真。
俺が推し進めている経済政策である金山開発を担当している家臣だ。
かつて金山開発を担当していた三浦範高亡き後、範高の跡を継いで現在に至っている。
今回は、金山開発の経過を聞くために俺が呼び寄せたのだ。
「それで金山開発の調子はどう?」
「順調でございます。また殿の心配りに皆が感謝しておりまする。」
「そりゃ良かった。」
俺は金山での労働環境の改善を進めており、金山で働く者の運搬を保証をするなど金山採掘の環境が整備していったのだ。
「それでさ、金山開発のことなんだけど開発の規模をもっと大きくしようと思うんだ。」
「規模を大きく?」
「うん、人員をより多く動員して金の生産量をもっと上げたいんだよね。」
「なるほど…承りました。」
「よろしくね。」
こうして、俺は開発の規模を大きくし、今川はさらなる莫大な富を得ることになっていくのであった。
元真が大広間から去った後、俺は自分の部屋に戻ろうとした。
それを氏好は引き留める。
「殿、三条西様がいらっしゃっておりまする。」
「わかった、連れてきて。」
俺がそう言うと、氏好は犬丸に公家の三条西実枝を大広間へ連れてこさせた。
三条西家は、公家の中でも名門である三条家の分家の正町三条家のそのまた分家の家である。
しかし分家とはいえ、内大臣と呼ばれる高位の役職に何人も輩出しているのだから充分名門と言えるだろう。
実枝は俺に頭を下げた。
「此度は麻呂を受け入れて頂き、ありがたく存じまする。」
この頃、京では畿内で権勢を振るっていた細川晴元と晴元の重臣であった三好の争いが勃発していた。
両者の争いは長きに渡って続き、京はすっかり荒れ果ててしまっていた。
それゆえに、公家たちは『東国の京』と名高かった駿府へと逃れてきていたのだ。
この三条西実枝もその一人であり、今回は俺にあいさつをしに来ていた。
「しかし、流石は東国の京。かつての都のようにございますなあ。」
「そう言ってもらえると嬉しい限りです。」
元々、駿府の町は華やかであったが、京から公家や文化人が移り住んだことで、ますます京風の公家文化が町に取り入れられていた。
これにより、駿府はかつての京と遜色ないほど栄えていたのだ。
「ところで近日、駿府へ参った記念として是非とも連歌会を開こうと思うのだが、義元殿も如何かな?」
「あ~…」
俺は少し躊躇いを見せる。
俺は連歌が大の苦手だった。
ただ、連歌は公家のみならず武将も嗜むので苦手を克服したかった。
そのため、実枝と同じく公家である冷泉為和から指導を受けてはいたが、それでも苦手意識を払拭できなかった。
(まあでも、苦手を払拭するためにも場数は踏んでおいた方がいいだろうし…)
「…じゃあ是非その会に参加させてください。」
俺は渋々連歌会の参加を決めた。
そしてそれから他愛もない談笑を二十分ほどした後、
「では、麻呂はこれで…」
と言って実枝は大広間から去っていった。
俺もまた、あくびをして自身の部屋へと戻ろうとした。その時、俺はあることを思い出した。
「あ、そういえば大事な話があるんだった。犬丸君と藤三郎君、ちょっとこっちに来て。」
俺がそう手招きをすると、二人は何だろうと首を傾げながらも俺の前へと来た。
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