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第八章 次世代へ
第八十九矢 急転
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今川が支配してからというもの、三河国は不安定ながらも平穏を保っていた。
だが、先の両家による蜂起はその平穏を打ち砕くには充分な出来事であった。
吉良義安の挙兵で三河国内に動揺が広がる中、これに対してすぐさま動いたのは同じく今川に反旗を翻した鈴木信重だった。
信重は義安が挙兵するや否や、義安と盟を結び味方を増やそうとしたのだ。
義安もこれを断る理由もなく、かくして両者の間に同盟が成立した。
そして、信重に続くように大河内信貞があらかじめ目を付けていた数人の国衆たちが挙兵した。
ここで信貞にも想定外のことが起こる。
なんと、それを機に半数以上もの国衆たちが義安の呼びかけに応じたのである。
(多少は応じるとは思っておったが、まさかここまでとは…)
嬉しい誤算に信貞の口角もほんの少しだけ上がる。
そんな国衆たちの中には、かつて今川に与し、現在は織田に与している水野信元の姿もあった。
水野といえば、三河国内でも吉良と同等かそれ以上の影響力を持つ勢力。
そんな巨大な勢力を味方につけたことに、義安は自慢げに鼻を高くしていた。
「どうじゃ!あの水野も麻呂に従ったぞ!」
「流石は殿にございまする。殿の名声の前には今川も敵いますまい。」
「そうじゃろう、そうじゃろう!」
信貞におだてられた義安はさらに調子に乗り、ついには小躍りを始める始末だ。
しかし、対照的に信貞の胸の内は穏やかでなかった。
確かに水野が味方につけば頼もしい。
また、水野と繋がっている織田も手を貸してくれるだろう。
だが、それは前提として互いに対等な関係であればのこと。
そう、義安は何としてでも信元を味方につけたかったがために、信元に人質を差し出していたのだ。
(織田が三河を狙っておるのは明白。ゆえに織田の手先に隙を見せてはならぬのだが…)
信貞は義安の方をチラリと見た。
相変わらず、義安はすっかり水野を味方にしたと舞い上がっている。
(…まあ、元より殿など頼りにしてはおらんのだが。)
「水野の動向には注視しておかねばな…」
一方、三河の反乱のことは駿府館にも伝わってきた。
「三河でも反乱とか…俺って人望ないのかなあ。」
俺はこの事態に思わず、ため息をつく。
一連の出来事は、今川の支配が盤石でないことを内外に知らしめることとなってしまった。
それによって、兵の士気や今川の影響力の低下を招いていた。
加えて、もし三河の反乱が長引くようなことがあれば、俺の次なる目標の尾張国への進出が後退することになるのは確実だ。
「一揆はともかく、三河の反乱を早急に鎮めないと。」
そう判断した俺はすぐに岡部元信を大将として、三河国へ軍を送った。
(これでもダメなら、俺が自ら出陣するのも考えておかないとな…)
俺が次の一手に考えを巡らせていると、一人の使者が大広間に転がり込むように入ってきた。
よほど急いでいたのか、髪は乱れて息づかいも荒い。
「何?なんかあったの?」
俺が聞くと、使者は少々取り乱した様子で俺に言った。
「殿!急報にございまする!」
そして使者はその勢いのまま、俺にその報を伝えた。
「え…」
それは、とても受け取りがたい急報だった。
俺はただ唖然として使者を見る。
俺の師であり、今川の重臣であった太原崇孚が急死したのだ。
だが、先の両家による蜂起はその平穏を打ち砕くには充分な出来事であった。
吉良義安の挙兵で三河国内に動揺が広がる中、これに対してすぐさま動いたのは同じく今川に反旗を翻した鈴木信重だった。
信重は義安が挙兵するや否や、義安と盟を結び味方を増やそうとしたのだ。
義安もこれを断る理由もなく、かくして両者の間に同盟が成立した。
そして、信重に続くように大河内信貞があらかじめ目を付けていた数人の国衆たちが挙兵した。
ここで信貞にも想定外のことが起こる。
なんと、それを機に半数以上もの国衆たちが義安の呼びかけに応じたのである。
(多少は応じるとは思っておったが、まさかここまでとは…)
嬉しい誤算に信貞の口角もほんの少しだけ上がる。
そんな国衆たちの中には、かつて今川に与し、現在は織田に与している水野信元の姿もあった。
水野といえば、三河国内でも吉良と同等かそれ以上の影響力を持つ勢力。
そんな巨大な勢力を味方につけたことに、義安は自慢げに鼻を高くしていた。
「どうじゃ!あの水野も麻呂に従ったぞ!」
「流石は殿にございまする。殿の名声の前には今川も敵いますまい。」
「そうじゃろう、そうじゃろう!」
信貞におだてられた義安はさらに調子に乗り、ついには小躍りを始める始末だ。
しかし、対照的に信貞の胸の内は穏やかでなかった。
確かに水野が味方につけば頼もしい。
また、水野と繋がっている織田も手を貸してくれるだろう。
だが、それは前提として互いに対等な関係であればのこと。
そう、義安は何としてでも信元を味方につけたかったがために、信元に人質を差し出していたのだ。
(織田が三河を狙っておるのは明白。ゆえに織田の手先に隙を見せてはならぬのだが…)
信貞は義安の方をチラリと見た。
相変わらず、義安はすっかり水野を味方にしたと舞い上がっている。
(…まあ、元より殿など頼りにしてはおらんのだが。)
「水野の動向には注視しておかねばな…」
一方、三河の反乱のことは駿府館にも伝わってきた。
「三河でも反乱とか…俺って人望ないのかなあ。」
俺はこの事態に思わず、ため息をつく。
一連の出来事は、今川の支配が盤石でないことを内外に知らしめることとなってしまった。
それによって、兵の士気や今川の影響力の低下を招いていた。
加えて、もし三河の反乱が長引くようなことがあれば、俺の次なる目標の尾張国への進出が後退することになるのは確実だ。
「一揆はともかく、三河の反乱を早急に鎮めないと。」
そう判断した俺はすぐに岡部元信を大将として、三河国へ軍を送った。
(これでもダメなら、俺が自ら出陣するのも考えておかないとな…)
俺が次の一手に考えを巡らせていると、一人の使者が大広間に転がり込むように入ってきた。
よほど急いでいたのか、髪は乱れて息づかいも荒い。
「何?なんかあったの?」
俺が聞くと、使者は少々取り乱した様子で俺に言った。
「殿!急報にございまする!」
そして使者はその勢いのまま、俺にその報を伝えた。
「え…」
それは、とても受け取りがたい急報だった。
俺はただ唖然として使者を見る。
俺の師であり、今川の重臣であった太原崇孚が急死したのだ。
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