悪役令嬢の名誉を挽回いたします!

みすずメイリン

文字の大きさ
2 / 36

第1話、悪役令嬢リリアンナ(リリアンナ視点)

しおりを挟む
 イジメと家庭崩壊に屈して自分の人生に希望を見出せずに、首吊り自殺をして死んだはずの私、白山光しらやまひかるは、いわゆる異世界転生というものをしたのか、また、人生を異世界でやり直すことになった。
 異世界といっても、中世ヨーロッパ風味のファンタジー小説みたいな世界観で、純粋な日本人として育った私にとってはお米も食べられずに、その世界で赤ちゃんから人生をやり直すことになった。
 この世界の食事は、油っぽくて、お米もない。せっかく人生をやり直せるのに、なんでこんな不便な世界なんだろう、と幼心にぼんやり考えていた。

 平凡以下の私には似つかない貴族として生まれてしまい、名前は、リリアンナ・フォン・リヒテンベルクと名付けられて私の見た目は日本人どころか、コスプレした日本人かゲルマン系のヨーロッパ人みたいな見た目をしていた。
 厳密にいうと、ゆるふわウェーブのショートヘアでクリーム色のブロンドでにサファイアブルーの瞳。
 そして、こんな私を産んだであろうこの世界でのお母様曰く「あなたの貴族としての階級は伯爵ですのよ。だから、恥ずかしくないような伯爵令嬢として在ることを自覚しなさい」とのことだった。
 お父様はリヒテンベルク伯爵と呼ばれていて、よく家族と一緒に他の階級の貴族の茶会に参加させられ、礼儀作法もうまくいかずに、お母様からよく叱られていたし私は相変わらず、臆病で人見知りで自分から声をかけることもできなかった。
 そんな私をお母様は叱りつつも幼少期から愛してくれていた。前世のお母さんのように否定し放置しなかった。

 そして幼少期のある日突然、天使のような男の子と出会った。
 名前は、ハインリヒ・フォン・ヴァルドシュタインで、階級は王子で本物の王子様だった。
 お母様とお父様には、ハインリヒ・フォン・ヴァルドシュタイン王子には恥ずかしい振る舞いをするんじゃないとお母様から躾けられたものの、私の臆病で人見知り加減は治らなくていつもハインリヒ王子から、声をかけていただいてもらっていた。
 ハインリヒ王子は王子様らしく、短髪で爽やかな容姿端麗の少し落ち着いたように見えるアッシュブロンドでブルーグレー色の瞳をしていた。
 私と同じ金髪碧眼でも見た目に差異が出るんだなぁと自分のリリアンナとしての姿を鏡を見つつ、ハインリヒ王子と見比べながら、小さい頃からそう思った。
 どうやら、ハインリヒ王子の方が私よりも三歳ぐらい年上で、こんな私にでもにこやかに接してくれた。
 ハインリヒ王子がいるときはいつも、私の心は温かくなった。
 当然ながら、ハインリヒ王子と私しか貴族の茶会に子供がいない時は二人だけで、お庭の中を駆け巡ったりクレヨンで紙にハインリヒ王子と私がお庭にいる絵を一緒に描いたり、ハインリヒ王子が持ってきた絵本を持ってきて一緒にページをめくってよんだり、時には児童向けの小説のエルフと人間の冒険譚の本を持ってきて読み聞かせてくれたり、遠いところに住んでいる魔族の噂などを教えてくれた。
 ハインリヒ王子は、他の貴族の子が貴族の茶会に集まっていた時も私に声をかけてくれて一緒にみんなで遊ぶように誘ってくれて、かけっこをしたり男の子たちだけで木登りをしたりみんなで乗馬をしている想像をして、それを話し合ってどんな品種の馬に乗って走っているか等、語りあった。
 いつも他人に対して臆病だった私にとって、ハインリヒ王子だけは、私の心の唯一の救いだった。
 そして、ハインリヒ王子はいつだってみんなの人気者だった。

 しばらくして小学校に通うようになり三歳年上のハインリヒ王子は当然ながら、先に卒業してしまってショックを受けたりと、ハインリヒ王子にもっと近づくため、私は勉学に励んだけれども飛び級もできずに小学生の単位は全て取り終わり、ハインリヒ王子と同じ中学校にもいけなくて、学校では大人しい女子グループに囲まれて、形だけのお友達として過ごしていた。
 でも、プライベートの定期的に行われる貴族の茶会では、ハインリヒ王子と会うこともあって私の心は安心した。
 ハインリヒ王子が白馬に乗ってハインリヒ王子の騎士ではあるアッシュブラウン色の髪で緑色の瞳をしたレオンハルトというハインリヒ王子と同年齢ぐらいの男性が一緒に乗馬をしていたら、私は貴族の女子達とは距離を置いて遠くからハインリヒ王子に手を振ったり、歳を重ねるたびにだんだん少しだけハインリヒ王子とは、距離ができてしまった。
 それでも二人きりの時間はあったけれども、少し居心地が悪くちょっと照れ臭かった。
 距離ができてしまったとしても、私の心の拠り所はいつもハインリヒ王子だった。



 そして時が過ぎて、リリアンナとしての私は15歳になり、平民も貴族も通うというグリュックシュロス高等学園に入学したと同時に社交界にもデビューすることになった。
 小さい頃は天使のようだったハインリヒ王子もグリュックシュロス高等学園を卒業し、今は公務をしつつ大学へ行くようになり、今や立派な美青年となっていた。
 彼の小さい頃からのアッシュブロンドも変わらず、ブルーグレーの瞳も変わっていなかった。
 男女の壁もあって、私も第二次性徴期を迎えてお互い幼馴染ながらも気恥ずかしいことはあったけれども、交流は続いていた。
 そんな中、私にとってはかなり不安で恐ろしいお知らせ知ることになった。
 両親が私の体を抱きしめてくれて、そしてお互いの体を香水の匂いを漂わせながらも離れ、お互い向かい合ってテーブルのある椅子に座った。
 お父様が魔法で印刷したと思われる亜麻色の長髪で緑色の瞳をしている端正なか顔立ちをしているハインリヒ王子と同じぐらいの年齢の男性が映っている写真とタイプライターで綴られた書類を机の上に置いて、私に話しかけた。
 「いきなりですまないが、リリアンナ。この写真に映っているご子息、アルブレヒト・フォン・ノイシュタット公爵子息とリリアンナは婚約することになった。アルブレヒト様はお人好しで純粋な紳士だ。何も気にすることはない」とお父様に告げられたけれども、あまりにもいきなりでショックな話で気が動転してしまいそうだったので、速攻で席を立って、ドアまで走って向かって無理矢理ドアを勢いよく開けて、私はハインリヒ王子か騎士のレオンハルトがいそうな場所へ涙を流しながらも出て行ってしまった。
 いつもの庭にある洋風の東屋、いわゆるガゼボに私は走って行った。
 そこには、ちょうどハインリヒ王子がいたので話しかけてみた。
 「ハインリヒ様」
「どうしたんだい? リリアンナ」
「私、実は先ほど両親から、私の婚約相手が決まったと写真を見せられましてショックのあまりに出て行ってしまったんです」と私はハインリヒ王子に告げている最中に、涙が止まらなかった。
 ハインリヒ王子は微笑んでいるようだけどもどこか悲しげで遠い目で「そうか。おめでとうと言いたいところだか、あまり祝える気持ちじゃないな。すまない。その婚約者と結婚してもまた二人で会わないか、リリアンナ?」と問いかけ、私は彼の瞳を見つめながら涙目で「はい」と告げるしかなかった。
 ハインリヒ王子は、そのまま表情を変えずに「貴族社会だもんなぁ。仕方がないよ」と呟き、しばらく二人で沈黙した時間を過ごし、時間になりハインリヒ王子に家まで二人で馬に乗って送ってもらった。
 その後は、お父様にこっぴどく叱られてからお母様にもう一度抱きしめられて慰めてもらい、感情がおさまったところでお風呂に入りに行きシャワーを浴びて頭と髪を洗い、湯船に浸かって明日の社交界への初めての参加を考えて緊張しつつもお風呂から上がって髪の毛を乾かし、パジャマに着替えて、緊張して眠れないながらもベッドの中に入り、私は静かに目を閉じた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ツンデレ王子とヤンデレ執事 (旧 安息を求めた婚約破棄(連載版))

あみにあ
恋愛
公爵家の長女として生まれたシャーロット。 学ぶことが好きで、気が付けば皆の手本となる令嬢へ成長した。 だけど突然妹であるシンシアに嫌われ、そしてなぜか自分を嫌っている第一王子マーティンとの婚約が決まってしまった。 窮屈で居心地の悪い世界で、これが自分のあるべき姿だと言い聞かせるレールにそった人生を歩んでいく。 そんなときある夜会で騎士と出会った。 その騎士との出会いに、新たな想いが芽生え始めるが、彼女に選択できる自由はない。 そして思い悩んだ末、シャーロットが導きだした答えとは……。 表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_) ※以前、短編にて投稿しておりました「安息を求めた婚約破棄」の連載版となります。短編を読んでいない方にもわかるようになっておりますので、ご安心下さい。 結末は短編と違いがございますので、最後まで楽しんで頂ければ幸いです。 ※毎日更新、全3部構成 全81話。(2020年3月7日21時完結)  ★おまけ投稿中★ ※小説家になろう様でも掲載しております。

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

【完結】悪役令嬢はおねぇ執事の溺愛に気付かない

As-me.com
恋愛
完結しました。 自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生したと気付いたセリィナは悪役令嬢の悲惨なエンディングを思い出し、絶望して人間不信に陥った。 そんな中で、家族すらも信じられなくなっていたセリィナが唯一信じられるのは専属執事のライルだけだった。 ゲームには存在しないはずのライルは“おねぇ”だけど優しくて強くて……いつしかセリィナの特別な人になるのだった。 そしてセリィナは、いつしかライルに振り向いて欲しいと想いを募らせるようになるのだが……。 周りから見れば一目瞭然でも、セリィナだけが気付かないのである。 ※こちらは「悪役令嬢とおねぇ執事」のリメイク版になります。基本の話はほとんど同じですが、所々変える予定です。 こちらが完結したら前の作品は消すかもしれませんのでご注意下さい。 ゆっくり亀更新です。

【完結】モブの王太子殿下に愛されてる転生悪役令嬢は、国外追放される運命のはずでした

Rohdea
恋愛
公爵令嬢であるスフィアは、8歳の時に王子兄弟と会った事で前世を思い出した。 同時に、今、生きているこの世界は前世で読んだ小説の世界なのだと気付く。 さらに自分はヒーロー(第二王子)とヒロインが結ばれる為に、 婚約破棄されて国外追放となる運命の悪役令嬢だった…… とりあえず、王家と距離を置きヒーロー(第二王子)との婚約から逃げる事にしたスフィア。 それから数年後、そろそろ逃げるのに限界を迎えつつあったスフィアの前に現れたのは、 婚約者となるはずのヒーロー(第二王子)ではなく…… ※ 『記憶喪失になってから、あなたの本当の気持ちを知りました』 に出てくる主人公の友人の話です。 そちらを読んでいなくても問題ありません。

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

【長編版】悪役令嬢は乙女ゲームの強制力から逃れたい

椰子ふみの
恋愛
 ヴィオラは『聖女は愛に囚われる』という乙女ゲームの世界に転生した。よりによって悪役令嬢だ。断罪を避けるため、色々、頑張ってきたけど、とうとうゲームの舞台、ハーモニー学園に入学することになった。  ヒロインや攻略対象者には近づかないぞ!  そう思うヴィオラだったが、ヒロインは見当たらない。攻略対象者との距離はどんどん近くなる。  ゲームの強制力?  何だか、変な方向に進んでいる気がするんだけど。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...