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第一章 修復の絆編【第二話】
白薔薇庭園での女子会
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*
ここは年中、白薔薇が咲き誇るとある公爵家。
その美しい庭園では、数人の高貴な少女達が宝石のようなケーキやマカロンを囲んで、楽しそうに過ごしていた。
「——オルク伯爵令嬢。あのお話を皆さんにも聞かせて差し上げては?」
公爵令嬢エリーチカ・ヴァイスローズが茶会に参加するオルク伯爵令嬢に声を掛けた。
伯爵令嬢は「はい…」と答えると、とても悲しそうな表情を浮かべて、先日皇宮で出会ったルクレツィアとの事を誇張しながら話し始めた。
「ま、まぁ!? 皇后陛下と皇子殿下にそのような無礼を!?」
「ありえませんわ!」
彼女の話を聞き怒りを露わにする令嬢達が口々にルクレツィアへの不満を口にしていた。
無礼を働いたのはヴィレンなのだが、オルク伯爵令嬢は全てルクレツィアのせいにして皆に話して聞かせる。
「…私、あの方の鋭い目にいつも怯えてしまって…私が下の爵位の家柄だと馬鹿にしているんです。きっと…」
オルク伯爵令嬢はヴィレンとディートリヒについては敢えて話さなかった。
話してしまえば自分が、あの無能なノーマン公女の前で父親に無理やり頭を下げさせられた事まで話さなくてはならなくなりそうだったから。そんなの、彼女のプライドが許さなかった。
「下の家格って…ノーマンのくせに、何を偉そうに!」
一人の令嬢が顔を真っ赤にして憤っていた。
オルク伯爵令嬢は彼女たちに見えないようにニヤ…と笑って、エリーチカに視線を向ける。彼女の緑色の瞳と目が合った。
「私はあのような恐ろしい皇太子妃なんて…」
オルク伯爵令嬢は演技がかった声で皆に聞かせるように続ける。
「お仕えしたいと思えるか、不安ですわ!」
すると、周りから確かに…と同意する声が上がった。
「将来、魔術師である私たちがノーマンに頭を下げるなんて、屈辱すぎて耐えられません!」
「いくらクラウベルク公爵様の娘だとしても、これはあんまりだわ!」
オルク伯爵令嬢は心の中で、いいぞ。とほくそ笑んでいた。
(…そろそろかしら)
令嬢達の怒りを煽り、タイミングを見計らう彼女は次なる爆弾を投下する。
「私としては…エリーチカ様のようなお方が未来の皇后に相応しいお方だと思います…」
エリーチカの目は満足そうにオルク伯爵令嬢を見ていた。
令嬢達は頷いて、エリーチカを称賛した。
「白薔薇姫と名高いエリーチカ様以外にユーリ皇子殿下に釣り合うお方はいませんわ!」
絹糸のように独特な光沢と深みのある白い髪、そして目が醒めるように鮮やかな緑色の瞳。その地位も相まって、同年代のご令嬢達から絶大な支持と感心を得ている少女だ。
魔法の才もあり、美貌も備わっており、穏やかな性格で…ルクレツィアと同じ公爵令嬢でありながら正反対の彼女はよく比較対象とされ、そして称賛されてきた。
正義はエリーチカ、そして悪はルクレツィア。そんな風潮もある。
「…もう、よして下さいな皆さん」
満更でもない様子だが、建前上謙遜するエリーチカ。
「私、悔しいです! 父親が偉大な魔術師ってだけで、分不相応なものを手にする者がいることに! 立場ってものを分からせてやりたいです!」
演技の熱が入ったオルク伯爵令嬢が涙ながらに言うと、エリーチカは思わずニヤリと笑ってしまった。
「…では…」
エリーチカは歪んだ笑顔をレースで出来た扇子で隠しながら言う。
「もうすぐ我が家で開催するローズ・ガーデンパーティーに、ルクレツィア公女を招待して差し上げるのはどうでしょうか?」
—【第二話】・終—
ここは年中、白薔薇が咲き誇るとある公爵家。
その美しい庭園では、数人の高貴な少女達が宝石のようなケーキやマカロンを囲んで、楽しそうに過ごしていた。
「——オルク伯爵令嬢。あのお話を皆さんにも聞かせて差し上げては?」
公爵令嬢エリーチカ・ヴァイスローズが茶会に参加するオルク伯爵令嬢に声を掛けた。
伯爵令嬢は「はい…」と答えると、とても悲しそうな表情を浮かべて、先日皇宮で出会ったルクレツィアとの事を誇張しながら話し始めた。
「ま、まぁ!? 皇后陛下と皇子殿下にそのような無礼を!?」
「ありえませんわ!」
彼女の話を聞き怒りを露わにする令嬢達が口々にルクレツィアへの不満を口にしていた。
無礼を働いたのはヴィレンなのだが、オルク伯爵令嬢は全てルクレツィアのせいにして皆に話して聞かせる。
「…私、あの方の鋭い目にいつも怯えてしまって…私が下の爵位の家柄だと馬鹿にしているんです。きっと…」
オルク伯爵令嬢はヴィレンとディートリヒについては敢えて話さなかった。
話してしまえば自分が、あの無能なノーマン公女の前で父親に無理やり頭を下げさせられた事まで話さなくてはならなくなりそうだったから。そんなの、彼女のプライドが許さなかった。
「下の家格って…ノーマンのくせに、何を偉そうに!」
一人の令嬢が顔を真っ赤にして憤っていた。
オルク伯爵令嬢は彼女たちに見えないようにニヤ…と笑って、エリーチカに視線を向ける。彼女の緑色の瞳と目が合った。
「私はあのような恐ろしい皇太子妃なんて…」
オルク伯爵令嬢は演技がかった声で皆に聞かせるように続ける。
「お仕えしたいと思えるか、不安ですわ!」
すると、周りから確かに…と同意する声が上がった。
「将来、魔術師である私たちがノーマンに頭を下げるなんて、屈辱すぎて耐えられません!」
「いくらクラウベルク公爵様の娘だとしても、これはあんまりだわ!」
オルク伯爵令嬢は心の中で、いいぞ。とほくそ笑んでいた。
(…そろそろかしら)
令嬢達の怒りを煽り、タイミングを見計らう彼女は次なる爆弾を投下する。
「私としては…エリーチカ様のようなお方が未来の皇后に相応しいお方だと思います…」
エリーチカの目は満足そうにオルク伯爵令嬢を見ていた。
令嬢達は頷いて、エリーチカを称賛した。
「白薔薇姫と名高いエリーチカ様以外にユーリ皇子殿下に釣り合うお方はいませんわ!」
絹糸のように独特な光沢と深みのある白い髪、そして目が醒めるように鮮やかな緑色の瞳。その地位も相まって、同年代のご令嬢達から絶大な支持と感心を得ている少女だ。
魔法の才もあり、美貌も備わっており、穏やかな性格で…ルクレツィアと同じ公爵令嬢でありながら正反対の彼女はよく比較対象とされ、そして称賛されてきた。
正義はエリーチカ、そして悪はルクレツィア。そんな風潮もある。
「…もう、よして下さいな皆さん」
満更でもない様子だが、建前上謙遜するエリーチカ。
「私、悔しいです! 父親が偉大な魔術師ってだけで、分不相応なものを手にする者がいることに! 立場ってものを分からせてやりたいです!」
演技の熱が入ったオルク伯爵令嬢が涙ながらに言うと、エリーチカは思わずニヤリと笑ってしまった。
「…では…」
エリーチカは歪んだ笑顔をレースで出来た扇子で隠しながら言う。
「もうすぐ我が家で開催するローズ・ガーデンパーティーに、ルクレツィア公女を招待して差し上げるのはどうでしょうか?」
—【第二話】・終—
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