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第一章 修復の絆編【第六話】
少女と護衛兵士
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「ヴィレン、心配するな。俺が選んだこの4名は第一部隊の中でも指折りの実力者だ。ルクレツィアをしっかり守るよ」
「そんな事心配してねぇし!」
ふんと鼻を鳴らして、ヴィレンは言った。
「それに、俺がいるからルーシーが危ない目に合うはずもない!」
ヴィレンが自信満々に胸を張ってそう言うと、さっきまで無関心そうにしていた筈のグリムがクスリと笑った。
「…何笑ってんだよ?」
「いや、別に…君は確かに強いんだろうけど、人を守ったことはあるのかなと思って」
ヴィレンは少し呆気に取られた表情を浮かべる。グリムもレイモンドのような事を言っていたからだ。しかしすぐに、彼が自分を馬鹿にして笑った気がしてむっとした顔を浮かべた。
「強さに違いがあるわけないだろ! 勝負だ、グリム! 俺とお前、どちらが多くの魔獣を狩れるか!」
まるで果し状を突き付けるようにヴィレンはグリムを指差して声高らかに言った。
するとグリムは呆れた表情で小さく息を吐くと「馬鹿らしい…」と、呟いてヴィレンに背を向けては他の隊員のところへと行ってしまった。
「おい、俺と勝負しろぉ!」
相手にされなかったヴィレンが悔しそうな顔で子供らしく地団駄を踏む横で、イクスが慰めるように彼に飴玉を手渡そうとしていた。
イクスはルクレツィアが北の領地に帰ってきてからというもの、子供が喜びそうな飴玉やチョコなどのお菓子を持ち歩くようにしているのだ。
「落ち着け、ヴィレン…」
イクスが飴玉を直接少年の口の中に入れてやると、やっと静かになったヴィレン。
「飴玉、美味しい。ありがとうございます、イクスお兄様」
「そうか、そうか。美味しいか」
イクスは小さな従姉妹が可愛くて仕方ないらしく、顔をだらしなく緩ませながらルクレツィアに笑いかけていた。
「…イクスの顔、デレデレしてて気持ち悪い…」
ムスッとしたヴィレンの八つ当たりにも近い指摘に、部下の手前イクスはグッと表情を引き締め直すのだった。
(しかし、ヴィレンのグリムへの拒絶感が凄いな…)
イクスはヴィレンと何の障害もなく仲良くなれたから、他の隊員とも同じだろうと考えていた。
単純に実力順で選んだ今回のメンバーだが…もしや、グリムを選んだのは良くなかったか…?と、先行きの不安を感じるのであった。
魔獣討伐作戦は開始され、兵士達が隊を組み山の中へ入っていく中、ルクレツィア達も山の中にいた。と、言っても深い所にまでは入らず、すぐに丘へ出れる浅い範囲の場所だ。
ヴィレンとイクス、そしてグリムは道中に出会った魔獣を狩りに行くためルクレツィアと別行動を取っていた。
グリムは面倒がっていたが、どうしても彼を負かしてやりたいヴィレンが我儘を言って魔獣狩りの勝負をする事になったのだ。
どちらが先に魔獣を見つけて狩れるか…とても子供っぽいがヴィレンにとっては大事な勝負。
ヴィレンとグリムを二人きりにすることに不安に感じていたイクスも同行する事となった。
そして…留守番をしていたルクレツィアが鼻歌を歌いながら図鑑を広げていると、それを見ていた護衛兵士の一人が「お気楽なもんですね」と、鼻で笑いながら独りごちた。
ルクレツィアは顔を上げる。そう言ったのは、赤髪に意地悪そうな笑みを浮かべたニックという男だった。
「ニック…!」
アルバが彼を咎めるように呼ぶが、ニックはその卑下た笑みをやめなかった。
「だって、アルゲンテウスの中でも実力者の俺たちが魔獣討伐に参加もしないでこんなところで少女のお守りだなんて…普通に考えて損失ですよね?」
どうやらニックは、自分に下された護衛の任に不満があるらしく、歪んだ笑顔でアルバとエイシャを被り見た。
イクスがいる間はそんな素振りを見せなかったのに…ニックの本心を聞いて戸惑うルクレツィア。そして、アルバもエイシャも彼の言葉を否定はせず気まずそうな表情を浮かべている様子から、三人ともルクレツィアがいると仕事の邪魔になると考えているのだと悟った。
「ご、ごめんなさい…」
この魔獣討伐は北の領地に住む人々の安全を守るために行う大切な仕事だ。ルクレツィアもそれは分かっていて、決して軽んじていたわけではないが…。
(私、浮かれすぎてたんだ。お父様とヴィレンと過ごす毎日が楽しくて、周りの迷惑を考えてなかった…)
ルクレツィアは自分の考えが至らなかった事を反省して謝った。
もう丘へ戻ろう。せめて三人の負担にならないように、安全なところで図鑑を眺めていよう…そう思ったルクレツィアが、再び口を開こうとした時…。
「俺たちを振り回して、偉いもんだよな。ディートリヒ様のご息女じゃなければ、何の価値もないノーマンのくせに…」
続くニックの言葉にルクレツィアはすぐに口を閉じた。
「そんな事心配してねぇし!」
ふんと鼻を鳴らして、ヴィレンは言った。
「それに、俺がいるからルーシーが危ない目に合うはずもない!」
ヴィレンが自信満々に胸を張ってそう言うと、さっきまで無関心そうにしていた筈のグリムがクスリと笑った。
「…何笑ってんだよ?」
「いや、別に…君は確かに強いんだろうけど、人を守ったことはあるのかなと思って」
ヴィレンは少し呆気に取られた表情を浮かべる。グリムもレイモンドのような事を言っていたからだ。しかしすぐに、彼が自分を馬鹿にして笑った気がしてむっとした顔を浮かべた。
「強さに違いがあるわけないだろ! 勝負だ、グリム! 俺とお前、どちらが多くの魔獣を狩れるか!」
まるで果し状を突き付けるようにヴィレンはグリムを指差して声高らかに言った。
するとグリムは呆れた表情で小さく息を吐くと「馬鹿らしい…」と、呟いてヴィレンに背を向けては他の隊員のところへと行ってしまった。
「おい、俺と勝負しろぉ!」
相手にされなかったヴィレンが悔しそうな顔で子供らしく地団駄を踏む横で、イクスが慰めるように彼に飴玉を手渡そうとしていた。
イクスはルクレツィアが北の領地に帰ってきてからというもの、子供が喜びそうな飴玉やチョコなどのお菓子を持ち歩くようにしているのだ。
「落ち着け、ヴィレン…」
イクスが飴玉を直接少年の口の中に入れてやると、やっと静かになったヴィレン。
「飴玉、美味しい。ありがとうございます、イクスお兄様」
「そうか、そうか。美味しいか」
イクスは小さな従姉妹が可愛くて仕方ないらしく、顔をだらしなく緩ませながらルクレツィアに笑いかけていた。
「…イクスの顔、デレデレしてて気持ち悪い…」
ムスッとしたヴィレンの八つ当たりにも近い指摘に、部下の手前イクスはグッと表情を引き締め直すのだった。
(しかし、ヴィレンのグリムへの拒絶感が凄いな…)
イクスはヴィレンと何の障害もなく仲良くなれたから、他の隊員とも同じだろうと考えていた。
単純に実力順で選んだ今回のメンバーだが…もしや、グリムを選んだのは良くなかったか…?と、先行きの不安を感じるのであった。
魔獣討伐作戦は開始され、兵士達が隊を組み山の中へ入っていく中、ルクレツィア達も山の中にいた。と、言っても深い所にまでは入らず、すぐに丘へ出れる浅い範囲の場所だ。
ヴィレンとイクス、そしてグリムは道中に出会った魔獣を狩りに行くためルクレツィアと別行動を取っていた。
グリムは面倒がっていたが、どうしても彼を負かしてやりたいヴィレンが我儘を言って魔獣狩りの勝負をする事になったのだ。
どちらが先に魔獣を見つけて狩れるか…とても子供っぽいがヴィレンにとっては大事な勝負。
ヴィレンとグリムを二人きりにすることに不安に感じていたイクスも同行する事となった。
そして…留守番をしていたルクレツィアが鼻歌を歌いながら図鑑を広げていると、それを見ていた護衛兵士の一人が「お気楽なもんですね」と、鼻で笑いながら独りごちた。
ルクレツィアは顔を上げる。そう言ったのは、赤髪に意地悪そうな笑みを浮かべたニックという男だった。
「ニック…!」
アルバが彼を咎めるように呼ぶが、ニックはその卑下た笑みをやめなかった。
「だって、アルゲンテウスの中でも実力者の俺たちが魔獣討伐に参加もしないでこんなところで少女のお守りだなんて…普通に考えて損失ですよね?」
どうやらニックは、自分に下された護衛の任に不満があるらしく、歪んだ笑顔でアルバとエイシャを被り見た。
イクスがいる間はそんな素振りを見せなかったのに…ニックの本心を聞いて戸惑うルクレツィア。そして、アルバもエイシャも彼の言葉を否定はせず気まずそうな表情を浮かべている様子から、三人ともルクレツィアがいると仕事の邪魔になると考えているのだと悟った。
「ご、ごめんなさい…」
この魔獣討伐は北の領地に住む人々の安全を守るために行う大切な仕事だ。ルクレツィアもそれは分かっていて、決して軽んじていたわけではないが…。
(私、浮かれすぎてたんだ。お父様とヴィレンと過ごす毎日が楽しくて、周りの迷惑を考えてなかった…)
ルクレツィアは自分の考えが至らなかった事を反省して謝った。
もう丘へ戻ろう。せめて三人の負担にならないように、安全なところで図鑑を眺めていよう…そう思ったルクレツィアが、再び口を開こうとした時…。
「俺たちを振り回して、偉いもんだよな。ディートリヒ様のご息女じゃなければ、何の価値もないノーマンのくせに…」
続くニックの言葉にルクレツィアはすぐに口を閉じた。
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