(学園 + アイドル ÷ 未成年)× オッサン ≠ いちゃらぶ生活

まみ夜

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第一巻:春は、あけぼの

報道=誘導

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「えええー。手料理でパーティーとか、なんで友達のボクも呼んでくれなかったの?あみりん」
 学食で、俺たちに昨日の夕食のことを聞き、騒ぐミホ。
「しかも、メニュー聞いたら、ボクが読んでた雑誌の丸パクリじゃない?」
「言い方よくない」
 ビシーッと指刺されて、注意されても、ミホは気にしてない。
「ボクがおいしそうって言ったらあみりん、いかにも体育会系で茶色いって笑ったくせに」
「い、彩アレンジしたもん!」
 まあ、がんばった形跡はあったけど、全体的に茶色かったのは否めない。
「あーあ、あみりんの手料理、ボクも食べたかったー。あみりんとは、何が食べられるとか結構、話したつもりだったのにな」
 ミホは、言ってから慌てて口を閉じた。
 好き嫌いの話でもしたのか?
 それなら、炊き込みご飯をおにぎりにして肉じゃがと弁当にしてもってきてやればよかったとか、朝食に食べたから足りないか、などと言えば、泊まったことまで話さないといけなくなるので、俺は口をつぐんだ。
 あみのスマホが鳴り、
「・・・志方さんが、話があるから、来るって」
 珍しいな。
 俺たちのつきあいを知る、共犯者である志方マネージャーは、なるべくあみの学園生活を邪魔しないように、学園には来ないように気を使ってくれているのだ。
 再び、着信。
「熱愛発覚報道について、お話あります。え?」
 熱愛発覚?

「これが、写真週刊誌に掲載予定の記事になります」
 志方マネージャーが小会議室のテーブルに広げたのは、『深夜の密会』と題された、あみと五十代くらいの男が並んで歩いている写真数枚と文章だった。
 俺とのことがバレたのだと覚悟していたのだが、
「誰です、これ?」
 あみの隣の男は、俺ではなかった。
「ここ、××スタジオの楽屋口だよね?」
 ミホが、低い声で言った。
「っていうか、ボクが振り付けしてる、ミュージカルであみりんと共演してるフジナミさんとだよね?」
 俺のことがバレたと思い、つきあいのことを知っているミホにも意見を聞きたくて、同席を志方に頼んだとき、部外者なのに、すんなり許可したのは、なるほど、そういうことか。
 俺は、深く椅子に座り直した。
 あみは、一言も口を開かずに、平坦な目で、マネージャーを見ていた。
「とんでもない誤報だよ。え?どういうこと?」
 自分とズレた反応をする俺とあみに、ミホが戸惑った声を上げた。
 志方は、ため息をついて、
「お察しのように、番宣のやらせです」
 つまり、あみと五十代男優とのミュージカル共演を宣伝するために、熱愛では?という記事を出す、ということだ。
 正直、それはどうでもいいのだが、
「でも、あみの周辺は、騒がしくなりますよね?」
 やらせ記事でも、彼女に注目が集まれば、俺のことがバレやすくなる。
 志方は頷き、
「ご相談したいのはそこです。言ってしまえばやらせ記事なので、止めるのは可能です」
「でも、止めれば、ミュージカル側としては、おもしろくない、でしょうね?」
「その通りです」
 どこまで影響があるか俺には想像できないが、これを断れば裏で、あみの今後の仕事に影響してくるだろう。
 考えたものだ。
 十七歳と父親ほどの男優との熱愛発覚報道。
 誰も本気にしないし、あみが「年上の男性、安心できて好きです」とでもコメントすれば、ファン層も広がり、好感度も上がるだろう。
 男優にしても、「芸能界の父親のように見守ってます」とでもいえば、誰にもデメリットがないのだ。
 表向きには。
 そして、あみには、彼女の一途な性格から、共演俳優と『熱愛』などと言われて受け入れられないことは予想できる。
 今後のアイドルとしての仕事に悪影響が出ようともだ。
 だからこそ、志方は、相談してきたのだろう。
「・・・志方さん、私!」
「いや、ちょうどいいから、利用しましょう」
 あみが、決意して口を開くのを、俺は遮った。

 あみの熱愛報道の写真週刊誌が発売され、彼女は注目を浴びた。
 しかし、年相応の関係と疑ってもいない世間の反応は緩く、番宣枠として義務的に、テレビのワイドショーで短時間に取り上げられるだけだった。
 それでも、鼻がきく者は、あみが鳳凰学園に通っていることを知った。
 女子高校生が、大人も通う学園に通学している。
 しかも、この学園には、他にも有名人が通っているのだ。
 彼らは、予想通りに、スキャンダルを追い始めた。
 そして、困っただろう。
 鳳凰学園は、様々な分野の有名著名人が通っているために、セキュリティーが厳重なのだ。
 入口には、駅の自動改札のようなゲートがあり、学生カードがないと通れない。
 彼らが選択したのは、学園への正式な取材申し込みだった。
 もちろん、それは、俺たちが予想していた通りだった。

 鳳凰学園としても、優秀な学生に集まってほしい。
 建前として、鳳凰学園の理念をPRするとなれば、両者の利害は一致する。
 しかし、学園内の取材を許可された彼らが狙うのは、有名人のスキャンダルだ。
 俺とあみが、学食で『ふたり』で昼食をとっているのを、『報道』の腕章をつけた連中が見つけて近づいてきた。
 実は、今日『報道』が来るのは、裏で事前に通達されていて、芸能関係者など、かなりの人数が、欠席しているのは、秘密だ。
「北乃あみさんですよね?学園について、お話伺ってよろしいでしょうか?」
 『学園について』と言われれば、断りにくいと知っているのだろう。
「はい。でも、食べるのに大口開けてる写真はNGです」
 一笑い。
「『ごいっしょ』の、こちらの方は?」
 下卑た内心を隠しているつもりだろうが、まるわかりだぞ。
 『ごいっしょ』である俺は、笑顔を浮かべることに全力投球中。
「午前中、私が受けた生物学で講師役をされていた沢田さんです。興味深い内容でしたので、食事をしながら、議論させていただいています」
 紹介されて、俺は頭を下げて、
「この学園では、人脈づくりと知識の継承が理念です。なので、俺のようなオッサンでも、アイドルと議論しながら、昼食をとることができます」
 しまった、わざとらしすぎか。
「私も、『アイドル学』の講師役をするので、いろいろアドバイスいただいてます」
 あみがフォロー。
 そこに、
「やあ、キミたち、お昼ご飯かい?」
 打ち合わせ通りに、ミホが、やってきた。
 こいつ、俺以上に大根だぞ。
「やあ、元バレリーナの門崎ミホさん。どうしたんです?」
「前回の講義で、どうやら一般的でない専門用語を使いすぎてしまったようで、どの程度なら専門家でない二人が、知っているか、聞いてみたいんだ」
「ミホちゃん。それは、講師役にとって、とても大事な確認ですね」
 あみ、俺たちの演技レベルに合わせたのかもしれないが、下手くそだぞ。
 戸惑ったように、『報道』記者が、
「いつもこんな風に、『みなさん』で食事を?」
 俺は、極力にっこり笑って、
「先にも言いましたが、『人脈づくり』も、この学園の理念ですから。アナタも、鳳凰学園では、アイドルの先生や、同級生になれますよ」
 あみが、小さく、「せーの」と声をかけ、三人で、
『鳳凰学園では、学生を随時募集しております。奮ってご応募ください!』
 結局、俺の作戦どおり、単なる学園の宣伝となった取材の結果は、動画として世に出ることなく、『アイドルと同級生になれる?』と題された雑誌記事も扱いは、とても小さなもので、モノクロ写真はあみとミホだけでトリミングされていた。
 同級生以上に、俺とあみの関係に触れられることもなく、あみを後追いするマスコミもなかった。
 すでに、本家の熱愛報道も沈静化しているので、一安心だろう。
「あ、先輩、肩がちょっとだけ写ってる」
 一応、俺の肩は、雑誌デビューしたらしい。
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