(学園 + アイドル ÷ 未成年)× オッサン ≠ いちゃらぶ生活

まみ夜

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第二巻:夏は、夜

想い-重い

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「志方さんが、元カレにもらった金のネックレスなくしちゃったんだって。一応、みんなにも伝えておくね」
 あみが、学食で俺のマネしたらハマったナポリタンを食べながら言った。
「学園に来たときに、落としたのですか?」
「うーん、つけてたのが、いつのまにかなくなったみたいで。どこで切れて落ちたのかも、わかんないみたい」
 小きつねうどんの麺を箸で持ちあげた志桜里が聞いたが、答えは不明瞭なものだった。
 志桜里は、猫舌なので、少しでも麺を冷やそうと、汁から持ち上げながら、喋りがちだ。
 でも、お腹が弱いので、冷たい麺は食べない。
 まあ、教えられても、どこで落としたのかもわからないから偶然、俺たちがどこかでネックレスを見つける可能性は、ほぼないだろう。
 一応、学園の事務局に、落とし物がないか、確認したようだし。
「その前に、元カレのプレゼントつけてたのが、ないわー」
 ミホは、カツサンドとコーンポタージュのセット。
 そういえば彼女は、定食のハンバーグに、ご飯ではなくパンを選んでいたりする。
「まあ、そう言ってやるな」
 志方が酔って、「男できねー」とクダ巻くのを知っているので、責める気にはなれない。
「でもいいよね、プレゼント。そういうの憧れるなあ」
 遠くを見つめ、俺と目を合わさずにプレッシャーをかけるという高度なテクニックを披露してくる、あみ。
 話題を変えよう。
「ファンから、プレゼントでアクセサリーもらったりするんじゃないのか?」
「志桜里はないです」
 アクセサリーは、もっと年齢が上のタレントの話か。
 形山は、いろいろもらっていそうだな。
「私もないけど。グループにはもらってる子もいる。いろいろあるから、卒業まで使えないみたいだけど」
 まあ、送ったファンにしてみれば、「俺のプレゼントをつけてるぞ!」ってネットで騒ぐだろうしな。
 そうなったら、高級ブランドでの金額チキンレースになりそうだ。
 そちらで勝負されたら、楽曲での売上にも響くかもな。
「でもいいよね、プレゼント。そういうの憧れるなあ」
 しまった、話題が変わっていない。
「じゃ、じゃあ、ヌイグルミとかが多いのか?」
 途端に、三人の表情が暗くなる。
「そっか、さわりんは知らないのか」
「先生は、ご存じないのですね」
「あー、ヌイグルミね」
 三人が言うには、ヌイグルミは、盗聴器がしかけられいて当然なのだそうだ。
「花束にも盗聴マイクついてて、劇場の座席でボクの楽屋の音を聴かれてたことあった」
 基本、金属探知機や盗聴器発見器で調べ、それが発見されたプレゼントの末路は悲惨らしい。
 ヌイグルミだろうが、バッグだろうが、切り裂かれて、出てきた盗聴器のタイプなどを調べ、通報する。
 もちろん、送り手が特定できれば、極秘ブラックリスト入りだ、
 ただ、逆恨みしないように、ライブなどへの出入りは禁止しないらしい。
 一応、盗聴器を取り出したプレゼントは、タレントに返却されるそうだが、受け取る者はいない。
「うちの事務所の倉庫に、年末まとめて供養するために、しまってる段ボールが、いっぱいあるよ」
 ズタボロになったヌイグルミやバッグなどが詰め込まれた箱。
 絶対に夜中、這い出てこようと、もがいてそうだ。
 こわっ。
 うちの事務所はどうなんだろう?
「社長が、ゴミ箱に放り込んでいます」
 容赦ないな。
 物に罪はないんだから、供養してやろうよ。
「でも、困るのは食べ物。ボク、なんだか手作りのお菓子もらうの多いんだ」
「ああ、困りますね、手作り」
「処分になっちゃうよね」
 基本、手作りの食べ物はすべて廃棄。
 ちゃんと封がされた市販品は、食べるタレントもいるようだが、
「志桜里は、オヤツボックスに入れてます」
「あ、事務所あるあるだよね」
 あの休憩室にある「ご自由にどうぞ」のやつ、それなの?
 美味しくいただいてるんだけど?
 俺が不安な顔をしたら、
「大丈夫ですよ先生。社長も食べてますから」
 いや、安心材料にならないから、それ。

「沢田先生?」
 声をかけられて振り向くと、俺のマネージャー茜が立っていた。
「沢田先生、昨夜お仕事のことで、事務所へいらしてくださいとご連絡しましたが、『いつものように』そのうち、とのお返事でしたので、伺いました」
 打ち合わせという名目で説教される俺。
 楽しそうですね、マネージャー。
「・・・茜は、ファンから、プレゼントもらったりしたのか?」
 ようやく許され、安心した俺は、さきほどの話題を振ってしまって、後悔した。
 元セクシー女優だ、どんなトンデモ話が出てきてしまうか。
「オモチャと下着でしたでしょうか」
「下着、おっとなー」
「やっぱりヌイグルミは、定番なんだね」
 そのリアクションは、オモチャを勘違いしているのだろうが、スルーして触れない。
「基本は全部、撮影スタッフさんに差し上げてました」
 どうして、撮影スタッフがそれら、特にオモチャを必要とするかは、理解していないらしい三人。
「それに下着は、使用ず・・・ええと、熱い想いが込められてましたので、廃棄だったみたいですね」
 ???な三人に、俺と茜は、笑ってごまかした。
 優秀なマネージャーも、言ってから、自分が話し続けるのはマズイと思ったらしく、俺に話を振ってきた。
「沢田先生は、どんなプレゼントをいただきましたか?」
「俺は一般人だから、エピソードなんてないぞ」
 ごまかしに協力するため、話に乗るが、ファンからのプレゼントなんて、今のところ経験がないから、過去の女性からの話になってしまう。
 あみの機嫌が悪くならないといいのだが。
 まあ、強いて言えば、バレンタインデーにもらったチョコが、中に洋酒が入っているタイプの市販品だったが、なぜか注射針のような穴が、全部に空いていた。
『え?』
 マフラーをもらったが、くれた相手が長い髪をばっさり切っていた。
『え?』
「さわりん、まさかマフラー、今も自分の部屋に置いてないよね?」
「クリスマスにもらったから、年末の神社で、古いお札を返すとこに置いたが」
「・・・よかった」
「・・・一週間くらいは、家に置いてたんだ」
 四人とも、リアクションが、言葉少ない。
 でも、過去の女性からのプレゼント話に、怒っているのでは、なさそうだ。
 芸能界あるあるに比べたら、エピソードが薄いからな。
 あとは、会社のイベントで受付嬢したコンパニオンが懐いてしまって、会社に電話してきて俺の出張スケジュールを聞きだし、新幹線の駅で半日待ち伏せして、夕食に食べてくれと手作りお弁当を渡してきたとか。
 これはプレゼントの話というよりは、ストーカーか。
「・・・先生」
 志桜里が、胸の前で両手を組んで、いつにも増して優しい目で、
「みんなは引いてますけど、志桜里は平気です」
「あ、茜も引いてませんよ?」
「ごめん、私は引いてる」
 気がつけば、ストーカーの話になってしまったからか、ドン引きされていた。
「さわりん、周りにいたのエキセントリックな人ばっかりだったんだねえ」
 俺の『周り』にいるお前が言うな。

『ちっ、よく聞こえないなあ』
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