146 / 369
第二部 第2章
362.鍵の行方
しおりを挟む正妖精からの情報によると、教会の地下には坑道があり、皇城の地下迷宮と繋がっているらしい。枢機卿は地図を持っており、現在フロちゃんと謎の女性と共に珍獣の神殿への転移陣に向かって進んでいるのだとか。
「枢機卿の狙いは、珍獣のいる神殿なのでしょうか?」
テオ様と皇后様に視線を向けると、二人は神妙な顔をしていて、皇后様が「そもそも、なぜ枢機卿は地下迷宮の地図を持っているのよ」とぶつぶつ言っている。
「たまねぎの、しんでんだ!」
「たまねぎの、やね!」
「ちゃっみゃ、ぃ?」
わたくしの話に子供たちが「たまねぎ」だと騒ぎ出す。確か神殿の屋根がタージ・マハルのような形をしているのですわよね。
『クーポル!!』
「しょう。くーぽる!」
「うむ。クーポルなのだ」
「きゅぅ?」
アオは前も確かクーポルを強調していたけれど、クーポルに何かこだわりでもあるのかしら? 子供たちも、クーポルという言葉が好きなようですわ。ぺーちゃんだけは首を傾げておりますが。フフッ、可愛らしいわ。
「たまねぎの神殿、わたくしも見てみたいですわ」
「おかぁさま、ちんでん、みにいく?」
タージ・マハルも実物は見たことないですし、ちょっと興味がありますのよね。
「ノアと一緒に、神殿までピクニックに行きたいですわね」
「いく!」
目が輝き、嬉しそうに抱きついてきたノアに笑みが漏れた。
『せーよーせーから、またつーしん、はいった!』
突然アカが声を上げ、皆が振り向く。
『皆、枢機卿の目的は、どうやら神殿で間違いないよ! 神殿の宝物庫にある鍵がどうのこうのって言ってる!』
神殿の、宝物庫にある鍵? どこかで聞いた覚えが……
「ほうもつこの、かぎ……、アカがひろってきたものも、かぎだった」
イーニアス殿下の言葉に一斉にアカを見れば、アカはちょっと照れたようにもじもじして首を傾げ、目をパチパチさせたのだ。
「アカ、あのかぎは、どこにやったのだろうか?」
『アカ、アスのおもちゃばこに、ポイした!』
テヘッと笑うアカの後ろに、盛大に顔を引きつらせた皇后様が見える。
「……もし仮に、その鍵が枢機卿猊下の欲しているものだとしたら、鍵は何を開けるもので、中には何があるのでしょうか……?」
「あかいとりさん、ちらないって、いってたのよ」
わたくしの呟きを拾ったノアが、どこの鍵か誰も知らないのだと教えてくれる。
「そうですわね。確かに赤い鳥さんは、知らないようでしたわね」
「しょうよ。きっとね、あのかぎ、たからばこのかぎよ」
わたち、わかってるの、と自信満々に頷くノアが可愛すぎますわ。
「まぁ、ノアは宝箱の鍵だと考えていますのね」
「ではノア、すうききょうは、たからを、ねらっているのだろうか?」
「しょう! しゅっごいたからもの、あるの!」
「なんと! すごいたからが、あるのか」
ノアったら、イーニアス殿下に楽しそうにお話ししておりますわね。
「宝箱か部屋の扉の鍵かはわからないが、目的地は神殿だ。そして、鍵はこちらの手にある。慌てる事はないだろう」
「ですがテオ様、フロちゃんが心配です。それにドニーズさんも行方不明のままですわ……」
わたくしとしては、すぐにでもフロちゃんを助けに行きたいのだ。
「ベル、君は妊娠中だ。無理は禁物だと何度も言っているだろう」
「ですが……」
「それに、ドニーズならば妖精の卵が見つけた。オリヴァーもだ」
いつの間に!?
『テオ、よーせーつかい!』
『まおーこわい!! よーせー、みんないうこときく!!』
「キノコ共、余計な事を言っていないで、ドニーズの所へ案内しろ」
『テオ、こわい!』
『きゃーっ、まおーおこった!!』
アカ、アオ、巫山戯ていると、テオ様が本当に怒りますわよ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
いつも【継母の心得】をお読みいただき、ありがとうございます。
皆様のお陰で、この物語を書き続ける事が出来ております。
楽しんでくださる皆様、応援してくださる皆様、本当にありがとうございます!
また、4/16(火)より、【継母の心得】のコミカライズの連載がスタートいたします。
作画: ほおのきソラ先生/構成: 藤丸豆ノ介先生に担当していただきました。
【継母の心得】の魅力を上げに、上げまくってくださり、かなり素敵な作品になっていますので、ご覧いただけますと幸いです。
イザベル様の美しさや、ノア君の天使な登場、冷たいテオ様にエンツォパパやフロちゃんまで、楽しんでいただけること請け合いです!
今後とも【継母の心得】をよろしくお願いいたします。
4,846
あなたにおすすめの小説
妻を蔑ろにしていた結果。
下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。
主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。
小説家になろう様でも投稿しています。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
継母の心得 〜 番外編 〜
トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。
【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
【完結】王妃はもうここにいられません
なか
恋愛
「受け入れろ、ラツィア。側妃となって僕をこれからも支えてくれればいいだろう?」
長年王妃として支え続け、貴方の立場を守ってきた。
だけど国王であり、私の伴侶であるクドスは、私ではない女性を王妃とする。
私––ラツィアは、貴方を心から愛していた。
だからずっと、支えてきたのだ。
貴方に被せられた汚名も、寝る間も惜しんで捧げてきた苦労も全て無視をして……
もう振り向いてくれない貴方のため、人生を捧げていたのに。
「君は王妃に相応しくはない」と一蹴して、貴方は私を捨てる。
胸を穿つ悲しみ、耐え切れぬ悔しさ。
周囲の貴族は私を嘲笑している中で……私は思い出す。
自らの前世と、感覚を。
「うそでしょ…………」
取り戻した感覚が、全力でクドスを拒否する。
ある強烈な苦痛が……前世の感覚によって感じるのだ。
「むしろ、廃妃にしてください!」
長年の愛さえ潰えて、耐え切れず、そう言ってしまう程に…………
◇◇◇
強く、前世の知識を活かして成り上がっていく女性の物語です。
ぜひ読んでくださると嬉しいです!
お前は家から追放する?構いませんが、この家の全権力を持っているのは私ですよ?
水垣するめ
恋愛
「アリス、お前をこのアトキンソン伯爵家から追放する」
「はぁ?」
静かな食堂の間。
主人公アリス・アトキンソンの父アランはアリスに向かって突然追放すると告げた。
同じく席に座っている母や兄、そして妹も父に同意したように頷いている。
いきなり食堂に集められたかと思えば、思いも寄らない追放宣言にアリスは戸惑いよりも心底呆れた。
「はぁ、何を言っているんですか、この領地を経営しているのは私ですよ?」
「ああ、その経営も最近軌道に乗ってきたのでな、お前はもう用済みになったから追放する」
父のあまりに無茶苦茶な言い分にアリスは辟易する。
「いいでしょう。そんなに出ていって欲しいなら出ていってあげます」
アリスは家から一度出る決心をする。
それを聞いて両親や兄弟は大喜びした。
アリスはそれを哀れみの目で見ながら家を出る。
彼らがこれから地獄を見ることを知っていたからだ。
「大方、私が今まで稼いだお金や開発した資源を全て自分のものにしたかったんでしょうね。……でもそんなことがまかり通るわけないじゃないですか」
アリスはため息をつく。
「──だって、この家の全権力を持っているのは私なのに」
後悔したところでもう遅い。
私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。