229 / 369
第二部 第3章
444.ペンダントと魔法陣 〜 イザベル視点/テオバルド視点〜
しおりを挟む「きゃーっ」
「ノア、すごいっ、とんでる!」
風の神殿に行くには、何段あるんだという、長い長い階段で上がるか、それとも風に乗って逆バンジーするか、なのだそうだ。当然わたくしは皆から止められ、塔の下から上を眺めている。
ノアの転移でも行けるのだろうけれど、ノアはこの逆バンジーが大好きらしい。先程からイーニアス殿下と逆バンジーをして大喜びしているのだ。
「まぁ、楽しそうですわ」
モモンガ改め、ももんちゅが起こす魔法の風なので、怪我も絶対しない、安全な逆バンジーというので、こうして安心して見ていられるというものだ。
「おもちゃの宝箱にも欲しいアトラクションですわね」
「奥様、このアトラクションは親御様から、心配の声が上がりそうです」
ミランダに冷静に止められ、気まずくなってゴホンッと咳をして話を変えようとしたが、マディソンとカミラが生温い目でわたくしを見ていた。
「そ、そろそろ帰らないと、テオ様も皇后様たちも心配しますわね」
「そうですね。ノア様とイーニアス殿下にお声をかけてまいります」
「お願いしますわね。ミランダ」
マディソンのアドバイスもあり、神殿に来る前にテオ様には伝えておりますから、騒ぎになってはいないと思いますが、遅くなるとよくありませんものね。
こうして、風と水の神殿見学兼名付けは無事に終わり、公爵家へと転移したのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
テオバルド視点
風と水の神殿……あの扉にあったディバイン公爵家の紋章が気になり、当主のみが出入り出来る宝物庫の奥にある、公爵家に関する資料を、ノアとベルが出かけている間に調べていた。
ベルは妊婦だが、あまり部屋に閉じ込めてストレスを溜める事は身体に良くない、とマディソンに言われ、神殿に行く許可を出したが、心配だ。
「───これは……」
先祖の日誌を見ていたのだが、初代の日誌の装丁の厚みがおかしい事に気付く。
他と比べると、明らかに厚みがある……。初代の遺物だから凝った装丁にしているのかと思っていたが……
「まさか、」
ポケットからナイフを取り出し、表紙の内側に張られた革を切ってみると、四角い切れ込みがあり、それにナイフの刃を入れこじ開ける。すると、中に何かが入っているようで……
「公爵家の紋章を模したペンダント……?」
出てきたのは、青の石がはめ込まれたペンダントだったのだ。
「魔石のようだが……」
青い石は宝石ではなく、魔石のようで、そういえば、このようなペンダントに見覚えがある。と少し前に神殿内で起きた、枢機卿が発端の事件を思い出したのだ。
「あの時、枢機卿が『証』だと言って持っていたものに、似ている」
だとしたら、これは初代ウェルス様が管理者ないし、神殿に関係していた証拠ではないだろうか。となると、あの家紋を扉に刻んだのもウェルス様が……?
「待て……、この魔石の中に、何かの模様が浮かんでいる」
夜になると、ぺーの目にも浮かぶあの魔法陣とやらに似ているな。
魔法陣ならば、魔石に魔力を込めれば何らかの魔法が発動するのではないだろうか。
「……やってみるか」
日誌の中に隠されいた、証に似たペンダント。そして魔法陣が刻まれた魔石……、どこかに転移させるものであれば、もっと大規模なものになるはずだ。となると、考えられるのは……
ペンダントの魔石に魔力を込めてみれば、
『───……』
魔石から、光とともに、向こう側が透けた銀髪の男が現れたのだ。
『───この、映像を見ている者よ……、───は、ウェルス……、バイン……家の、───当主……』
7,267
あなたにおすすめの小説
妻を蔑ろにしていた結果。
下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。
主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。
小説家になろう様でも投稿しています。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
継母の心得 〜 番外編 〜
トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。
【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
【完結】王妃はもうここにいられません
なか
恋愛
「受け入れろ、ラツィア。側妃となって僕をこれからも支えてくれればいいだろう?」
長年王妃として支え続け、貴方の立場を守ってきた。
だけど国王であり、私の伴侶であるクドスは、私ではない女性を王妃とする。
私––ラツィアは、貴方を心から愛していた。
だからずっと、支えてきたのだ。
貴方に被せられた汚名も、寝る間も惜しんで捧げてきた苦労も全て無視をして……
もう振り向いてくれない貴方のため、人生を捧げていたのに。
「君は王妃に相応しくはない」と一蹴して、貴方は私を捨てる。
胸を穿つ悲しみ、耐え切れぬ悔しさ。
周囲の貴族は私を嘲笑している中で……私は思い出す。
自らの前世と、感覚を。
「うそでしょ…………」
取り戻した感覚が、全力でクドスを拒否する。
ある強烈な苦痛が……前世の感覚によって感じるのだ。
「むしろ、廃妃にしてください!」
長年の愛さえ潰えて、耐え切れず、そう言ってしまう程に…………
◇◇◇
強く、前世の知識を活かして成り上がっていく女性の物語です。
ぜひ読んでくださると嬉しいです!
お前は家から追放する?構いませんが、この家の全権力を持っているのは私ですよ?
水垣するめ
恋愛
「アリス、お前をこのアトキンソン伯爵家から追放する」
「はぁ?」
静かな食堂の間。
主人公アリス・アトキンソンの父アランはアリスに向かって突然追放すると告げた。
同じく席に座っている母や兄、そして妹も父に同意したように頷いている。
いきなり食堂に集められたかと思えば、思いも寄らない追放宣言にアリスは戸惑いよりも心底呆れた。
「はぁ、何を言っているんですか、この領地を経営しているのは私ですよ?」
「ああ、その経営も最近軌道に乗ってきたのでな、お前はもう用済みになったから追放する」
父のあまりに無茶苦茶な言い分にアリスは辟易する。
「いいでしょう。そんなに出ていって欲しいなら出ていってあげます」
アリスは家から一度出る決心をする。
それを聞いて両親や兄弟は大喜びした。
アリスはそれを哀れみの目で見ながら家を出る。
彼らがこれから地獄を見ることを知っていたからだ。
「大方、私が今まで稼いだお金や開発した資源を全て自分のものにしたかったんでしょうね。……でもそんなことがまかり通るわけないじゃないですか」
アリスはため息をつく。
「──だって、この家の全権力を持っているのは私なのに」
後悔したところでもう遅い。
私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。