継母の心得

トール

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第二部 第3章

486.レッツ、ダンシング

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「タンッ、タタンッ、はい、そこでクルンッと、はい、お上手です」

ディバイン公爵家の広いダンスホールで、わたくしは今、ダンスの練習をしているノアとフロちゃんを、ぺーちゃんと見学している最中だ。
今はまだ、ステップの確認のようで、曲に合わせて踊るわけではないので、ノアもフロちゃんも真剣な顔で足運びを頑張っている所だ。

ちょうど良く、我が家にフロちゃんが滞在してくれたから、ノアのダンスの練習相手になってもらえて良かったですわ。

「かぁちゃ、ぺぇちゃ、みょ!」

膝の上にちょこんと座って、大人しくノアを眺めていたぺーちゃんが、突然片手を上げる。

「え? ぺーちゃんも、ダンスがしたいんですの?」
「にゃ!」
「まぁっ、でしたらお母様が、エビさんとカニさんのダンスを教えてさしあげましてよ」
「にゃ?」

ダンスが好きではなかったブルちゃんが、ダンス好きになった、あのエビさんとカニさんのダンスですわよ!

「奥様、お手伝いいたします」

以前伝授したからから、喜々として手伝いを申し出てくれたカミラに強く頷くと、よくわかっていないぺーちゃんをダンスホールへと連れ出した。

ノアたちの邪魔をしないよう、少し離れた所まで移動すると、ぺーちゃんにカミラと二人でエビさんとカニさんのダンスを披露する。もちろん歌も歌う。

「……と、このような感じでダンスするのですわ!」
「ほぁ~」

ぽかーんと口を開けたまま見ていたぺーちゃんが、感心したように、声を上げ、恐る恐る、わたくしたちが見せたように手を上げたり、足ぶみをしたりし始める。その様子の何と可愛らしい事か!

「まぁっ、ぺーちゃんお上手ですわ!」
「ぺーちゃん様は天才ですね」

マディソンまで、孫バカになったおばあちゃんのように、大絶賛しているのだ。それに気を良くしたのか、ぺーちゃんの動きはのびのびとしてきて、楽しそうにダンスをしている。

「ふふっ、ララララ~♪そう、お上手!」

歌いながら、手拍子をしつつぺーちゃんのダンスを応援する。

すると……

「ふりょ、しょっち!」
「あ、フロちゃん、じゅるいのよ!」

と言い合いながら駆け寄ってくる天使たちの姿が!!
ノアとフロちゃんの後ろでは、ダンス講師が苦笑いしているではないか。

「あらあら、ノアもフロちゃんも、どうしましたの?」
「よーてーたん、ふりょ、しょっち」
「おかぁさま、わたちも……」

二人が、楽しそうに踊るぺーちゃんを見て、わたくしに訴えてくるのだ。

「く……っ、かわ……っ、いえ、ですが二人は今、ダンスのレッスン中でしてよ?」
「め?」
「めぇ?」

見上げてくる天使たち……っ、わたくし、負けてしまいますわ!

「ディバイン公爵夫人、少し休憩ということで、ノア様とフローレンス様に、そちらの可愛いダンスをさせてあげてくださいませ」

ダンス講師がそう言ってくれたので、二人の顔が明るくなる。

「休憩中なら、二人が好きな事をしましょうか」
「はい!」
「あい!」

では、わたくしはピアノで伴奏しようかしらね。

「フロちゃん、ぺーちゃん、おてて、のびちて」
「にゃ!」

あら、ノアはお兄ちゃんらしく、フロちゃんとぺーちゃんに教えてあげておりますのね。微笑ましいですわ。

子供たちはあっという間に振り付けを覚えて、歌を歌いながら踊っている。わたくしも軽快にピアノを弾き、子供たちを喜ばせた。

「はぁ~、いい汗かきましたわ」
「奥様、シモンズ伯爵がリビングでお待ちになっております」

伴奏したり、一緒にダンスしたりと楽しんだ後、ダンスホールを出ると、そこへメイドがやって来た。

「お父様が? お仕事をされているはずではなかったのかしら?」
「奥様とお話がされたいという事です」

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