継母の心得

トール

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第二部 第3章

487.団らん

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リビングに入ると、お父様とオリヴァーが待っており、何かあったのだろうか!? と急いでそばに行くと、二人は和やかにお喋りしているではないか。

「お父様、オリヴァー、お待たせいたしましたわ」

どうやら切迫した雰囲気でもないので、少し安堵しながらソファに座ると、お父様が嬉しそうに微笑むのだ。

「イザベル、子供たちのダンスレッスンは終わったのかい?」
「ええ。皆とっても楽しそうに、ダンスをしておりましたわ」

わたくしから聞く子供たちの話に、お父様はにこやかに頷くと、「幼いのに忙しいんだね。大人顔負けのスケジュールで驚いたよ」と、公爵家の教育に戸惑っていましたのよ。

「そうですわね。テオ様が幼い頃はもっと忙しい日々を送っていたそうですわ。ノアの場合は、わたくしが交渉して、ダンスレッスンの後に昼寝の時間を設けさせてもらいましたのよ」

子供は寝る事も大切なのだ。大体1時間半から二時間ほどが適当だと言われている。

「お昼寝を終えたら、芸術の時間ですの」

芸術の時間は、絵を描いたり、楽器を演奏したり、宝石を使用したアクセサリーを見たり、洋服のセンスを磨いたりと、その日によって違う。
今日はノアの好きな絵画の日で、講師のアーノルドさんが来る為、ついでに子供たちの絵を依頼しようと思っているのだ。

人気画家だから、受けてくれるかはわからないけれど。

「芸術? そういえば、ノアは絵を描くのが得意だったね」
「以前に僕も描いてくれましたよ」

オリヴァーは、ノアに描いてもらった自分の顔の絵を、額に入れて自室に飾っているらしい。

「そういえば、ノアが、今日はおじい様の絵を描くのだと張り切っておりましたわね」
「そうなのかい? それは楽しみだね」

本当に嬉しそうに笑うお父様は、ノアをとても可愛がってくれているのだ。

ノアは、一目見れば可愛がらずにはいられないほど、天使ですものね。

「お父様も、以前に描いてもらっていましたよね?」
「オリヴァー、孫には何枚描いてもらっても嬉しいものだよ」
「まぁ、それもそうですね」

ノア画伯の絵で盛り上がるリビングの隅に生けてある花が、さわさわと風で揺れ、穏やかな時間が流れている。

「そうだ、イザベル。明日は私たちは皇城に出向かないといけないから、ここを留守にするけれど、くれぐれも無茶をしてはいけないよ」

明日は皇城でパーティーが開かれますのよね。もちろんお父様たちも招待されておりますが、わたくしは妊婦なのでお断りしましたのよ。テオ様が。

「そうですよ、お姉様。お腹も大きくなっているんですから、以前のように走り回らないでくださいね」
「わたくし、以前から走り回ってはおりませんわよ!?」

オリヴァーったら、走り回っていたのは子供の時だけでしてよ。

「お姉様、自覚がないんですか!?」
「自覚も何も、身に覚えはありませんわよ!?」
「こらこら……二人とも、もう大人なんだから、落ち着きなさい」

う……またやってしまいましたわ。

「イザベル、君はそそっかしいから、少し心配だよ」
「お姉様は猪突猛進すぎなんですよ」

酷い言われようですわね。

「もうっ、わたくしは、二児(ノアとぺーちゃん)の母親ですのよ? しかもお腹にも子供がおりますし、子だくさんの肝っ玉お母さんなのですから、安心してくださいまし!」

胸を張って宣言すると、お父様は苦笑いを、オリヴァーは溜め息を吐き、使用人たちには生温かい目で見られ、居た堪れない気持ちになりましたわ。

そうして翌日を迎えたのだが、その日の夜、我が家に一人の女性が、お父様たちと共にやってきたのだ。


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