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第二部 第4章
488.始まりの夜
しおりを挟む『キャーッ』
『いやー!!』
玄関からチロとアオの悲鳴が上がり、慌てて向かえば、頬は赤紫色に腫れ上がり、父に支えられて足を引きずりながら必死に歩いている女性がいたのだ。
「な、何がありましたの!?」
やって来たわたくしに父が気付き、首を横に振る。
わたくしと同年代だろう女性は、申し訳なさそうに、こちらを見て、その後俯いてしまった。
もちろんすぐに公爵家へ常駐している医師を呼び、手当てをしてもらいながら、お父様へ伺えば、
「この方は、ロギオン王国の王女殿下だよ」
「王女殿下!?」
明らかに暴行を受けたような頬と足の腫れ。痣の痛々しい様子に、まさか他国の王族の方だとは思わなかった。
両手で口を押さえ、包帯を巻かれ、客間のベッドで眠りについている王女様を見る。
疲れからか、それとも痛みからか、手当ての最中に気を失うように眠ってしまったのだ。
「閣下からは許可は得ているし、身元も確かな方だけれど、念の為にプライベートなエリアから一番遠い客間に、という事だった。イザベルと子供たちは近づかないようにね」
「ですが、他国の王女様ですのよね? きちんと挨拶をした方が良いのではありませんの?」
お父様は、「怪我をしているし、あまり騒ぐのもよくないからね。挨拶も不要だよ」とは言うが、気になりますわよ。だけど、一番気になるのは、
「お父様、王女様はなぜこのようなお怪我をされて、皇城ではなく公爵家へ運ばれましたの? しかもお父様が連れて帰られたようでしたが……」
「……それは、」
───お父様が皇城のパーティーに行かれた後の話だ。
シモンズ伯爵家がパーティーに参加したという噂は、あっという間に広まっており、会場に入るなり次々と挨拶を受けたそうだ。多くは自国の貴族だったそうだが、中には他国の王族も混ざっていたのだとか。
それで緊張もあり、風に当たろうとバルコニーに出た際、庭の方から小さな悲鳴が聞こえた気がしたらしく、お父様は不審に思いながら、バルコニーから庭へと降りたのですって。
いくらなんでも、一人夜の庭に出るなんて、危険ではありませんの!? しかも悲鳴が聞こえた庭に!
わたくし、お父様のお話を聞いて、お父様の身が心配になりましたわ。
「耳を澄まさないと聞こえないような、そんな小さな声だったしね、風の音と聞き間違えているのかもしれないって思いながら、声が聞こえた方へ行ったんだ」
皇城の庭はかなり広い上、夜は暗く、整備されているとはいえ、何があるのか見えにくい。それを、お父様は……
「そこには、ロギオン王と王女が居てね……口論、いや、あれは一方的に暴言を吐かれ、責め立てられていたのかな」
他国の王族が居たとなれば、お父様も大層驚いた事だろう。
「あまりの事に、さすがに止めようとしたんだけど、その時にロギオン王が王女の頬を打って、バランスを崩した王女が、転んでしまったんだ。そこに追い討ちをかけるように、王女の足を踏みつけたんだよ」
なんて事を……っ
「ロギオン王はそのまま去っていったけどね、実の家族に暴力を振るわれたとなると、あまり騒ぎにはできないから……」
王族が家族に暴力を……それは、おそらく騒ぎたてても揉み消されるだけでしょうね……。日常的に暴行を加えていた可能性もありますから、下手に首を突っ込めば、増々酷く当たられるかもしれませんものね。
「それでね、これはロギオン王から隔離して、内密に保護すべきなんじゃないかって、閣下に相談して、王女をここに連れ帰ってきたわけなんだ」
「お父様、それって王族を誘拐、なんて話になりませんの!?」
「大丈夫だよ。ロギオン王は王女の事に興味がないのか、今はパーティーに夢中だし、皇后陛下が誤魔化してくれるそうだから」
家族に暴力を振るって、パーティーの方が大事だなんて……っ
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皆様の応援が、いつも励みになっています。
少しお仕事をたくさんいただきまして、9/22~一週間程、更新をお休みさせていただく事にしました。
先日お休みしたばかりで申し訳ないのですが、よろしくお願いいたします。
次回の更新は、9/30(月)を予定しております。
皆様に楽しんでいただけるよう、精進して参ります。
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