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第二部 第4章
お正月特別回 〜 ノアとイーニアスのたこあげ 〜
しおりを挟む「年が明けますわ……」
わたくしがディバイン公爵家に嫁いで半年と少し、初めて嫁ぎ先で年明けを迎えた。
隣では可愛い義息、ノアがぐっすり眠っている。
いつもは自分の部屋でいい子に眠っているのに、年越しで使用人たちもバタバタしていたからか、今日に限って寝つきが悪くて、わたくしの部屋に連れてきたら安心して眠りにつきましたのよね。
「ぉか……、しゃま……ぅも……」
「ノア、どうしましたの?」
わたくしを呼んでいるので、目が覚めたのかと思って覗き込むと、ノアは口をむにゃむにゃと動かした後、すーっと寝息をたてるのだ。
「まぁ、寝言でしたのね」
わたくしがノアの夢に出ているのかしら? それなら嬉しいですわね。
「それにしても、一体どんな夢を見ているのかしら───」
☆☆☆
~ ノアの夢の中 ~
「ノア、なにをして、あそぼうか」
「あのね、とち、こち……? ちょち、ちょち? ね、たこ、おしょら、ビューン、しゅりゅの」
ここはノアの夢の中。
皇宮にいるはずのイーニアス殿下が、ディバイン公爵家の庭にいて、何をして遊ぼうかとワクワクしながらノアを見ている。幼い皇子殿下が皇宮を出るなど、普通あり得ない事だが、そこは夢。ノアはどうしてここにいるのか、という疑問もなく、当たり前のように受け入れ、仲良しの殿下と何をして遊ぼうかと、ウキウキしながら考え、そういえば年越しだった事を思い出す。
「たこ、とは、なんだろうか?」
「たこ、あかくてぇ、なが~い、あち、いーっぱいの」
実はタコを食べる習慣が無いグランニッシュ帝国では、知る者も少ないのが現状だ。おそらく、タコを見た者は、恐ろしい化け物だと、「悪魔の使いだ」と戦慄するのだろう。
しかしノアは違う。イザベルから、タコについて教わっているからだ。
「あしが、いっぱいなのか……」
「しょうよ。ぐにゃぐにゃ」
「ぐにゃぐにゃ? なんだか、ふしぎないきものだ」
「ふちぎ」
イーニアス殿下の言葉に大きく頷き、ノアは言った。
「ちょち、ちょち、たこ、ビューン、しゅりゅのよ」
「としこしに、ぐにゃぐにゃのたこを、おそらにとばすのか?」
「しょう! おかぁさま、たのちぃって」
「うむ。イザベルふじんが、たのしいというのなら、まちがいない」
凧あげをする事にした二人は、早速凧を探しにいく事にする。
「たこは、どこにいるのだろうか?」
「たこ、おいちぃ。おかぁさま、しゅきって」
「ならば、たこはたべものなのか」
「たべもにょ……ちっちん、かちりゃ?」
ノアは、食べ物ならキッチンにあると、歩き出す。殿下も嬉しそうにノアの後をついて回るのだ。
タコはキッチンにあった。
しかしそれは、ノアの夢の中のタコ。だからか、やけに可愛らしい、デフォルメされたタコであった。ノアはイザベルのイラストのタコしか見ていないのだ。
そう、イザベルは食べるタコではなく、凧あげとは凧をあげるのだと説明していたのだが、ノアは食べるタコと勘違いしていた。何故なら、凧あげの説明中、たこ焼きの話になり、タコへと移行してしまったから。
かくして、夢の中でデフォルメされたタコを空に飛ばすという、ファンシーなのか、グロテスクなのかわからない凧あげとなったのだった。
「ノア、ほんとうに、ぐにゃぐにゃだ!」
「ぐにゃぐにゃね!」
「おそらを、とんでいる」
「しゅっごい!」
二人は空を見上げ、嬉しそうにタコに手を振る。タコも長い足を上げて振り返してくれて、ノアはとっても嬉しそうに笑ったのだ。
空を飛ぶタコの後ろに浮かぶ雲は、ノアの大好きなおかぁさまの形をしていた。
「あっ、おかぁさまぐも!」
ノアの言葉と共に、おかぁさま雲の前をビューンと、タコが横切っていった。タコまでもが楽しそうな、ノアの夢だったとさ。
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新年明けましておめでとうございます。
いつも【継母の心得】をお読みいただき、誠にありがとうございます!
皆様の応援と、優しいコメント、そして楽しみにしてくださっているという言葉に支えられ、継母から始まる2025年を迎える事ができました。
本当に、感謝の気持ちでいっぱいです!
2025年が皆様にとって、笑顔と幸運溢れる年になりますように。
【継母の心得】を本年もよろしくお願いいたします!
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