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第二部 第5章
548.ノリで始める作戦会議
しおりを挟む「ディバイン公爵夫人、アベラルド様がその強奪の能力を使って、色々な人間に身体を乗り換えていた、というのはわかったのだが、それとロギオン国王と、どう関係があるのだ?」
皇帝陛下はアベラルド様の話が、ロギオン国王とどう繋がるのかわからず、首を傾げている。すると皇后様が理解した、という表情で口を開く。
「アベラルド様は、ロギオン国の王族の誰かの身体を、能力ごと奪ったのね」
「仰る通りですわ。アベラルド様の身体を乗り換えていく能力は、ロギオン国の王族の能力だったのではないか、と考えます」
この話に皇帝陛下は、「なんと!?」と驚きを隠せない様子で皇后様とわたくし、テオ様を順番に見ていた。
「早世したとある二代目の国王ですが、彼の能力を奪ったのだとしたら……」
「待つのだ。二代目は病で亡くなったと言われているのだろう?」
「歴史は改ざんされる事も多々ありますので、病で亡くなった、という事が本当の事だとは限りませんわ」
それに、若くして亡くなった二代目は、元々心臓が悪かったのでは、と資料にはあったけれど、剣術が得意で、遠征にもよく行っていたとありましたのよね……。それって、矛盾しますわ。
「そうなのか。しかし、アベラルド様が二代目の身体を奪ったとして、そこから今のロギオン国王とどう繋がるのか、朕には皆目見当もつかぬ」
「陛下、先ほど妻が話したように、初代双子王の特異魔法は身体を乗り換えるものだと考えると……」
「うむ。どちらも同じ特異魔法持ちなのだろう。聞いておったぞ。仲良し兄弟なのだな! 朕もイーニアスと、同じ魔法を持っておる。朕は魔力が少なく使えぬが、仲良し親子だろう!」
テオ様の言葉に、イーニアス殿下と同じ能力を持っている事が、魔力が少ない事を気にしなくなるほど嬉しいらしく、笑いながら返事をする皇帝陛下は本当に息子が可愛くてたまらないようだ。
でも、何か違いますわ。
「陛下、皇族の皆様が仲良し家族という事は痛いほど伝わってまいりますわ。素敵なご家族ですわ」
「うむ。そうなのだ! 朕は妻も子も死ぬほど愛しておるからな!」
「ちょっとネロ!」
皇帝陛下の言葉に、皇后様は慌てて口を閉じさせようとしているが、顔が真っ赤で照れているのが丸わかりだ。
「ご夫婦の仲もよろしいのはわかりましたわ」
「ちょ、イザベル様!?」
「うむ! さすがはディバイン公爵夫人なのだ。よくわかっている」
大きく頷く皇帝陛下の頬を、皇后様が真っ赤な顔で引っ張っている。本当に仲良しですわね。
「お二人とも、話をもどしますわ。テオ様が想像しているように、初代ロギオン国王は、三代目の身体を奪ったのではないかと思いますの」
ただ、ここで思い出してもらいたいのは、初代ロギオン国王は双子だったという事だ。
「双子の兄であった王が、恋焦がれて衰弱死してしまったという記述がこの資料にありますが、わたくし最初は、この時に双子の兄が三代目の身体を奪ったので、身体は亡くなったと考えましたの」
「違うというのか?」
この考えに、テオ様が眉間に皺を寄せ、わたくしに問うてきた。
「ええ。双子兄は海外の女性に恋焦がれておりました。衰弱するほどに。そこまで執着しているのであれば、わたくしなら、その女性の婚約者の身体に乗り換えますわ」
ーーーーーーーーーーーーーーー
カミラ視点
「いまから、さくせんかいぎ、はじめましゅ!」
ノア様がお客様用リビングの扉前で座り込み、子供たちを集めて輪になると、キリッとしたお顔で意気揚々と話し始めました。
いくらふかふかの絨毯の上とはいえ、廊下で地べたに座るのは、次期公爵となられる方としてどうなのかと、カミラは慌てて止めよしました。ですが侍女長から待ったがかかったのです。
「うむ!」
「ちゃく、しぇ……? あーい!」
「にょあ、ぺぇちゃ、みょ!」
「ぺーちゃんも、さくせんかいぎ、いっしょ、ちましょーね」
「にゃ!」
侍女長、どうしてノア様たちを止めないのですか? と口には出さず目で訴えました。
すると侍女長は、「ノア様たちは今、己の力で考え行動しようとしているのです。成長しようとする子供たちを、大人のルールに当てはめて止めてしまう事は、成長の妨げになってしまいます」と仰いました。
「良いですかカミラ、私たちがお止めしなければならないのは、主が過ちを犯す時だけなのです。こういった際の私たち侍女の役割は、主を信じ、おそばで見守る事なのです」
「は、はい!」
そうですよね。カミラは主であるノア様のおそばで、ノア様を応援します!
「ところでノア、これははなんの、さくせんかいぎなのだろうか?」
「えーと、うーんと、あのね、りょぎ……りょぎお……? の、あべらりゅどさまの、たっち……?」
ノア様、もしかしてその場のノリで、作戦会議を始めてしまったのですか?
「あっ、おうさま、おたしゅけ、ちます!!」
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