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第二部 第5章
569.魔石の修行
しおりを挟む「おしょーじ、ピッカピカ、なぁれ!」
フロちゃんは掃除のイメージで、あっと言う間に浄化魔法のコツを掴むと、魔石に魔法を込めてくれたのだ。
「まぁっ、フロちゃんとってもお上手ね!」
「ふりょ、ピッカ、じょーじゅ!」
可愛いわぁ!
お上手と言いながら抱きしめれば、フロちゃんはキャッキャと喜んでくれる。しかし、
「おかぁさま、わたしも、まほーできるの!」
ヤキモチをやいたのか、ノアは箱の中の魔石を掴むと、氷の魔法を込め始めたではないか。
「ノア、魔石に魔法を込めるのであれば、最小限の力で込めなければ、魔石は壊れてしまう⋯⋯」
テオ様がそう言い終わる前に、ノアの手の中にあった魔石が粉々の砂になり、手のひらからこぼれてしまった。
「ぁ⋯⋯」
見る間に涙目になっていくノアを慌てて抱き上げる。
「ノア、初めてだったから加減が難しかったですわよね。なんたってノアの魔法は、水と風の二つの魔法を一つの魔石に入れるのですもの! それは難しいに決まっておりますわ」
「ぐす⋯⋯っ、ふ、ふたちゅ⋯⋯?」
「そうよ。一気に二つの魔法を込めるのですから、たくさん入れると魔石が耐えられなくなって砕け散ってしまいましたのよ」
「たくさん⋯⋯」
ノアは自分の手を見ながら呟いた。
「たとえば、ノアのお口にたくさんのおやつを、入れたらぱんぱんになりますわよね」
「リスさん、なるの」
涙目のまま、ぷくぅとほっぺを膨らませる息子の可愛いこと。
「そうですわ。そこにまたたくさんおやつを入れようとしたら、どうなるかしら?」
「もう、はいらないのよ」
「その通りですわ。それでも無理やり入れてしまったのが、先ほどの魔石ですの」
あら⋯⋯そう考えると、二種類の魔法は魔石に込められるということよね? なんなら、魔力量を微調整していけば、三種類、四種類と混ぜる事ができる⋯⋯?
「おかぁさま、もぅいっかい、したいの⋯⋯」
「あ、そうね。もう一度魔力を込めてみましょう」
「はい!」
テオ様もアドバイスをしようと、ノアが魔石に魔力を込めようとしている所を上から覗き込んでいる。
「ノア、魔法を糸のように細めて、魔石に少しずつ流し込んでいくんだ」
「いと⋯⋯はい!」
「ふりょも、ピッカピカ、しゅる!」
「フローレンスとノアがするのなら、わたしも、やりたい!」
あらあら、子供たちが魔石を手に集中しておりますわ。これはもはや修行ではなくて?
「ゆっくり込めていれば、これ以上入らないという感覚がわかるはずだ。殿下はもう少し魔力を抑えてください。フローレンスは⋯⋯得意なようだな。二人に比べて魔力量が少ないからか?」
テオ様を先生にして魔石に魔法を込める子供たちは、案外楽しそうで、新しい遊びを見つけたように真剣に向き合っていた。
「フロちゃん、ちょっとお願いがあるのだけれど、よろしいかしら?」
「ぅ? よーてーたん?」
ーーーーーーーーーーーーーーー
「───シモンズはくしゃくが、ごびょうきとは、ほんとうなのか?」
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「はい⋯⋯おかぁさま、わたしに、おしょばいてあげてって、いって、ぃます⋯⋯よ」
幼い子供が話しているくらいだ、おそらく本当の事なのだろう。男はそう思ったが、動揺はしなかった。
何故なら男はもう、この身体には用がないと思っていたからだ。
「次は、アイツだ───」
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