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第二部 第5章
573.表裏一体
しおりを挟む「ベル、実は私もずっと疑問に思っていた事がある」
「テオ様?」
オリヴァーに、お姉様は何を言っているのか、と自分を見られたからか、テオ様が口を開く。
「王女たちの裏切りや、私たちがこの屋敷に居る事を、二代目はロギオン国王に報告するそぶりも見せなかった。義父上の性格を無視したような話し方を貫き、ノアに冷たい態度をとった事も、部屋から出てこず、堂々と日記を見ていた事も、影のいるディバイン公爵家において、迂闊すぎる行動だ」
テオ様が言うように、二代目の話し方や行動がおかしかったから、わたくしは憑依に気付けましたわ。
「まるで、憑依という得意魔法に気付かせようとしていたようだ」
「それではやはり⋯⋯」
二代目は、ロギオン国王から解放されたかった⋯⋯いえ、わざと憑依を見せたのなら、彼は父親を、止めたかった⋯⋯?
「閣下⋯⋯いえ、お義兄様。それでは二代目は、お姉様の作戦も、僕が寝たふりをしていた事も全部知った上で⋯⋯!?」
「ああ。だからあの時、わざわざ乗っ取りを宣言したのだろう」
「その人を、お姉様は浄化したのですね」
弟がわたくしを横目で、浄化しても良かったんですか⋯⋯というように見てくるのだけど、浄化以外に方法がありまして!?
「その浄化だが、ベル」
まさかテオ様まで、浄化したらダメだったと仰いますの!?
「浄化時に、闇魔法が発動したようだが、何をしたんだ?」
「え、あ⋯⋯わたくしも何がなんだか⋯⋯、ただ魔石を起動する為に、魔力を込めただけですのよ?」
「⋯⋯起動する際、何を考えていたか覚えているだろうか」
何をって⋯⋯
「フロちゃんから込めてもらった治癒魔法は、魂の傷を治して、浄化魔法は魂の汚れを綺麗にするという事しか⋯⋯」
「ベル、光属性の魔法は器の外傷や汚れを綺麗にする事は出来るが、精神⋯⋯魂には作用しない」
え?
「精神に作用する属性は、闇のみだ」
「ま、待ってくださいまし! 先代の聖女は、悪霊を除霊しましたのよ!?」
「おそらく光魔法では、魂の傷や汚れはそのままに、強引に輪廻の輪に蹴り出すのだろう」
蹴り出す!? 強引って、聖女のイメージが崩れそうなのですけれど⋯⋯
「お義兄様、魔石を起動する為の魔力注入で、お姉様が考え事をしながら注入作業をしただけで、魔法が展開されるなど考えられません。そんな事が可能なら、相当な数の事例が上がってくるはずです」
オリヴァーがもっともな事をテオ様に言挙げすると、テオ様はその通りだと頷きわたくしを見る。
「それは、ベルの属性に関係あるのだろう」
「わたくしの属性に?」
「ああ。光属性と闇属性は稀少な属性だというのは有名だが⋯⋯」
オリヴァーとわたくしに交互に目をやると、テオ様は説明をしようとしたのだが⋯⋯
『あのさ、光と闇は一見正反対に思えるでしょ? でも実際は、光があるから闇が出来るよね』
なーたんに台詞を取られ、口を噤んだ。
なーたんの存在を忘れておりましたわ⋯⋯
『だから表裏一体なわけなのさ。それでね、人間にはあまり知られていないけど、実は光と闇の神は双子の兄妹なんだよ』
まぁっ、そうでしたの? それは初耳ですわね。
『そんな表裏一体の特性を持つの二つの属性が掛け合わさると、今回みたいな事が起きてもおかしくはないと思うよ』
なるほど。と納得していたのだけど、オリヴァーにはなーたんが見えないものだから、何でお義兄様はいきなり黙るのか、何でお姉様は一人で納得しているのか、と突っ込まれてしまいましたわ。
テオ様はというと⋯⋯
「テオ様、機嫌を直してくださいませ」
「⋯⋯私は不機嫌になってはいない」
こんなに眉間にシワを寄せて、不機嫌じゃないなんて嘘、通じませんわよ。
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