368 / 369
第二部 第5章
580.送迎パーティー
しおりを挟むグランニッシュ帝国皇城内にあるいくつかの広間のうち、王たちの会議最終日の送迎パーティーが行われるのは、焔の間と呼ばれる大広間で、イーニアス殿下が貴族の前で初めて魔法を使用した場所でもある。
あの時は皇帝陛下も悪魔に操られていたし、イーニアス殿下も無理矢理魔法を使わされた事から、苦い記憶を持つ場所ではないだろうか。
そういえば、ノアがわたくしの教えた魔法コントロール法を、イーニアス殿下に伝えていたと聞いたのも、あの焔の間でしたわ。あの時は、ノアの記憶力に度肝を抜かれましたのよね。
「おかぁさま、アスでんか、だいじょうぶ……?」
わたくしとノアはディバイン公爵家の屋敷でお留守番なので、そろそろ始まるだろうパーティーを思ってか、ノアは先ほどからソワソワと心配している様子だ。
「大丈夫ですわ。イーニアス殿下には皇帝陛下と皇后様、それにノアのお父様も付いておりますもの」
「しょうね! アスでんか、みかた、たーくさん!」
「ええ。殿下には味方がたくさんおりますわ」
『アカもいるー!!』と妖精が付いている事をアピールするのは、ノアと契約している妖精のアオだ。今日も青いキノコ帽が主張している。
チロがそれを聞いたら、自分もいると言い出して大騒ぎになりそうですわ。ノアが宥めているのが目に浮かびますわね。
「お留守番組は、信じて待ちましょう」
「はい、おかぁさま」
未だ目覚めないチロが心配ではあるが、寝返りをうつなどはしているので、早く目覚める事を願うばかりだ。
「チロが目を覚ます前に、決着がつくかしら……」
ーーーーーーーーーーーーーーー
マルグレーテ皇后視点
「おおっ、これは利発そうな子だ!」
「何と可愛らしい!」
イーニアスの周りには各国の王たちが集まり、口々にその可愛さを称えている。
正式に立太子していないとはいえ、こういった場で皇子を紹介するという事は、皇太子に決まったも同然。今日の主役はイーニアスといっても過言はないから、注目の的なのよね。
そうでしょう。アタシの自慢の息子なのよ! なんて思いながら、こちらへやって来る王たちを捌いていく。話の内容は大体が新素材や新型馬車などのイザベル様関連だ。
こういう場では、ネロは外交には明るくないから、アタシがフォローしないと。イーニアスの事はもちろん心配だけど、ネロの方が頼りないのよね。ほら、今だって口の上手い王たちに手玉に取られそうになってるわ。
「ははうえ、わたしはだいじょうぶです。アカもフィニもついていますから、ちちうえのところへ、いってください」
アタシの息子、頼もしすぎよね!
「イーニアス、何かあったらすぐに伝えるのよ」
「はい」
『アカ、いるからだいじょーぶ!』
妖精と珍獣に守護されているイーニアスを傷つけられる者はいないだろうけど、ロギオン国王の狙いがね……心配だわ。
『けーかく、イーニアス、ひとりになる、ひつよーある!』
言われなくてもわかってるわよ!
アタシがなかなか動かないからか、アカが促してくる。この広間にロギオン国王がいる事は確認できているのだ。エリス王女も一緒に参加しており、監視してくれてはいるが、まだ動きはない。きっとイーニアスが一人になれば動き出すだろう。
心配でたまらないが、アタシは後ろ髪引かれる思いでその場を後にしたのだ。
イザベル様が、ノアちゃんを誘拐された時の憔悴しきったあの気持ちが少し、わかった気がするわ。愛息子に何かあったらって、気が気じゃないわよね。
アタシは不安を振り払うように頭を振り、深呼吸をして気持ちを整えた。
絶対に、チャンスは逃さないわ───
ーーーーーーーーーーーーーーー
いつも『継母の心得』をお読みいただきありがとうございます。
皆様、大変お待たせいたしました。
やっと、久々に更新する事が出来ました!
やっぱりこうして継母を書ける時間は幸せだなぁとつくづく感じます。
こんな風に思えるのも、皆様が応援してくださり、読み返してくださったり、コメントをくださるお陰です。
本当に感謝の気持ちでいっぱいです!
楽しみにしてくださっていた読者の皆様、
本日より毎日更新を、と考えていたのですが、現在三作品を同時進行中で、ちょっとあっぷあっぷな状況により、6月いっぱいまでは不定期更新になるかと思います。
一息つきましたら、毎日更新に戻しますので、お付き合いいただけますと幸いです。
今後とも何卒、『継母の心得』をよろしくお願いいたします。
5,829
あなたにおすすめの小説
妻を蔑ろにしていた結果。
下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。
主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。
小説家になろう様でも投稿しています。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
継母の心得 〜 番外編 〜
トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。
【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつもりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた
今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。
レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。
不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。
レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。
それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し……
※短め
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
【完結】王妃はもうここにいられません
なか
恋愛
「受け入れろ、ラツィア。側妃となって僕をこれからも支えてくれればいいだろう?」
長年王妃として支え続け、貴方の立場を守ってきた。
だけど国王であり、私の伴侶であるクドスは、私ではない女性を王妃とする。
私––ラツィアは、貴方を心から愛していた。
だからずっと、支えてきたのだ。
貴方に被せられた汚名も、寝る間も惜しんで捧げてきた苦労も全て無視をして……
もう振り向いてくれない貴方のため、人生を捧げていたのに。
「君は王妃に相応しくはない」と一蹴して、貴方は私を捨てる。
胸を穿つ悲しみ、耐え切れぬ悔しさ。
周囲の貴族は私を嘲笑している中で……私は思い出す。
自らの前世と、感覚を。
「うそでしょ…………」
取り戻した感覚が、全力でクドスを拒否する。
ある強烈な苦痛が……前世の感覚によって感じるのだ。
「むしろ、廃妃にしてください!」
長年の愛さえ潰えて、耐え切れず、そう言ってしまう程に…………
◇◇◇
強く、前世の知識を活かして成り上がっていく女性の物語です。
ぜひ読んでくださると嬉しいです!
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。