継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜 ノア3〜4歳 〜

番外編 〜 スプリングベッドとソファが誕生した日2 〜

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「ノア、お前はどのマットレスが良い?」

あのテオ様が、ノアにどれが良いか聞いておりますわ!

「わたち、これ!」

さすがノア。高密度のスプリングマットレスを選ぶなんて……、高品質なものに囲まれて育ってきたからかしら。と思っていたら、その理由が、「いちばん、とりゃんぽ!」なのだそうだ。

思わず笑ってしまいましたわ。

「ふむ。ではお前の部屋のマットレスはこれにしよう。さてベル、私たちの寝室のマットレスを選ぶので、君は私の隣に横になってもらえるか」
「え!?」

突拍子もないテオ様の言葉に、カミラとミランダ、ウォルトまでもがわたくしたちから視線をそらしたではないか。

「当たり前だろう。私たちは同じベッドで眠るのだからな」
「おとぅさま、わたちも、いっちょ、よ」
「ノアは自分の部屋のマットレスを新調するのだから、一人で眠れるだろう」
「ちがうのよ。わたち、おかぁさまと、ねんねしゅるの!」

バチバチっとテオ様とノアの間に火花が散る。

「ま、まぁまぁ、とりあえずテオ様も寝心地を試してみてくださいまし」

やはり大人げないのが通常運転のテオ様でしたわ。ブレませんわね。

こうしてテオ様もわたくしも試した結果、三人で眠るのであれば、高密度のスプリングマットレスだろうという事になった。

「とはいえ、他のマットレスの寝心地も、今までのものとは比べものにはならんほど良い」
「高密度のスプリングマットレス以外は、庶民でも購入出来そうなほど安価に設定されておりますから、恐らく庶民の間でも大流行するのではないかと推察します」

テオ様とウォルトはこう言ってくれるけれど、わたくしとしては、睡眠の質を高めるマットレスと評判の、ポリエチレン樹脂で作られたあのマットレスを開発したいと思っているのよね。

前世で使用していたが、スポーツ選手も愛用するだけあって熟睡できる素晴らしいマットレスだった。何より水洗い出来るのが素晴らしかったのだ。

「続いてソファですわね……、こちらは四種類ございますの」
「おかぁさま、しょふぁ、ベッドと、おなじ?」

まぁっ、ノアったら頭の良い子ですわ。ソファがマットレスと同じスプリングを使用したものなのか、と言いたいのですわね。

「そうよ、ノア。こちらのソファは、あのマットレスと同じ、ポケットコイルが使われておりますの。よくわかりましたわね」
「とりゃんぽ!」
「そうですわね。ソファも十分な跳ね返りがありますわね」

息子の言葉にフフッと笑っていると、テオ様がポケットコイルのソファへと座った。

「ふむ。やはり同じポケットコイルとはいえ、ソファに使われている素材が革だからなのか、マットレスとは座り心地が違うな」
「そうですわね。通常同じソファを長年使用していると、座面がへたってきたり座り心地が低下してきたりと経年劣化がありますが、ポケットコイルのソファはへたりにくいのが特徴ですわ。バネが1つ1つ独立しているので、上からの荷重に対してとても強いのです」
「しかし、マットレスに比べて随分しっかりしている気がするが」
「実は、ポケットコイルだけでなく、S字型のバネも組み合わせて、より耐久性を上げておりますの」
「S字型のバネ……」

テオ様は立ったり座ったりを繰り返し、ノアはそれで起きる揺れを隣で座って楽しんでいるようだった。

「他にも、ゴム素材のベルトとS字型のバネを組み合わせたものや、コイルスプリングなどがありますわ」

ベルトタイプはきしみ音がしにくく、弾力があるのが特徴よね。コイルスプリングは弾力性があってちょっと硬めの座り心地になるし、S字型のバネは座り心地と弾力に強弱があるのよね。この中だと、長時間座ることを考えたら、ポケットコイルが一番だと個人的には思いますわ。

「ソファとして使用するならば、このポケットコイルとS字型のバネを組み合わせたものが良さそうだ」
「わたくしもそう思いますわ。張地や形を貴族と庶民で異なるものにすれば、安価にも高級品にもできますわ」

このソファで、ノアと一緒にお茶する事を考えると、頬が勝手に緩んでいきますわね。

ノアを見れば、ニコニコとソファに座って、「わたち、もしゅこし、あち、とどくのよ」と全然届いていない足のつま先をぴんと伸ばし、絨毯に向けている。
疲れたのか力を抜いたら、ポヨンッとほんの少し跳ね返り、身体が揺れ、そしてまたつま先を伸ばす。

ほのぼのしますわぁ。

テオ様とウォルトは張地のサンプルを見ながら、あーでもない、こうでもないと話し合っている。

後は二人に任せて、可愛い息子を眺めるのもいいかもしれませんわね。

その後、ノアの報告を受けたイーニアス殿下から皇后様に伝わり、襲撃を受けるのだけれど、それまではほのぼのした光景を見られましたから、良しといたしましょう。

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