継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜ノア5歳〜 〜

番外編 〜 ノア13歳、アカデミー編4 〜

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ノア視点


「アオ! どこに行ってたの!? 探したんだよ……っ」
『ノア~!!』

アオが飛んでいってから、必死で探していたら、アカがやって来て、部室に案内されたんだ。
部活の時間はまだだから、誰もいないと思ったら、そこに泣きじゃくるアオと、アス殿下の姿があってびっくりしたよ。

『ごめんなさぃ!! アオ、やくたたず!!』
「え?? アオ、どういうこと?」

泣きじゃくるアオを抱きしめて聞くが、アオはダメな子、役立たず、と泣くばかりで、話をしてくれない。どうしよう……と困っていたら、アス殿下が言ったんだ。

「ノア……アオは、友だちがほしいというノアの為に、行き交う者にノアと友だちになってくれと声をかけていたのだ」
「え!?」
「妖精は誰にも見えぬから、立ち止まる者はいなかったが……」

そんな……、私の迂闊な一言が、アオを傷つけたの?

「ノア、お前は公爵や夫人に心配をかけたくないから、新たな友人が欲しいと言ったそうだな」
「……はい」
「友人とは、親に心配をかけたくないからと作るものではない。仲良くなりたいと思うからこそ、友となるのだ。ノア、そこを間違ってはいけない」

そうだ。私はなんてことを言ってしまったんだろう。

「はい……っ」
「うむ。ノアは、自分の間違いを素直に認められる男だ。偉いのだぞ」
「アス殿下……っ」
「さぁ、アオともきちんと話すといい」

殿下は優しく微笑むと、何かの鍵を私に渡した。

「これは部室の鍵なのだ。放課後返してくれたら良い。アカ、行くぞ」
『はーい!』

そう言って、部屋を出ていく後ろ姿を、暫く見つめていた。

「……アオ、ごめんね。私の迂闊な一言で、アオを傷つけてしまったんだね……」
『ちがう!! ノア、わるくない!! アオ、やくたたず……ごめんなさぃ』

腕の中で縮こまるアオを、ギュッと抱きしめる。

「役立たずなわけがないよ! 私の為に、皆にお願いしてくれたんだよね。ありがとう」

すごく、すごく嬉しい。でも、

「アオが傷つくのは嫌だよ」
『ノア~!!』
「泣かないで、アオ」
『ノアも、ないてるー!!』

アオが泣くから、私も涙が出てきたんだ。

二人で泣いて暫くした時、柔らかな風が私たちを包んでいる事に気付く。

「ルピナス……?」
『泣いてる子たちを放ってはおけないでしょ!』

ああ……、私は、家族にも、友人たちにも、皆に支えられてここにいるんだ。

「『ありがとう、ルピナス』」
『っ……か、かわい~!! ノアもアオもかわい~!!』
「ちょ、ルピナス苦しいよ」
『ルピナスに、つぶされる!!』

抱きついてきたルピナスに潰されそうになったけど、何だかそれで、アオにも私にも元気が出た気がした。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



その頃、アカデミーの門前での事。


「───ここに、悪霊がいるのですね……」

足元まで隠れる白い服に身を包んだ一人の男性が、アカデミーの敷地内に足を踏み入れようとしていた。

「神官様! よく来てくださいました!」

その時、太陽の光をよく反射する頭と狸の置物のようなフォルムに脂ぎった汗をダラダラ流しながら、肩で息をする初老の男性がやってきたのだ。

「貴方が、帝都アカデミーの学長でしょうか」
「はい! 神官様、アカデミーまでご足労いただきありがとうございます! それで、その、」
「わかっております。こちらに悪霊が出たとか……私は教会の中でも優秀なエクソシストですから、お任せください」
「これは頼りになる!! ではさっそくご案内いたします」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ノア視点


『ノア、あれなにー??』

放課後になり、部活に参加して大型帆船の設計図と格闘していた時だ。アオが扉の外を見て私を呼ぶと、楽しそうに廊下を見ている。

「アオ? どうした……え?」

神官?

「何だろう??」

どうしてアカデミーに神官がいるのだろうか?

「あちらの音楽室では、突然ピアノが鳴り出すという怪奇現象が、度々目撃されていまして……」

学長が、そんな事を話しながら部室の目の前を神官と共に通り過ぎていった。

『ピアノ!! あのひと、アカのピアノ、きになってるー!!』
『アカのピアノ、ききたいひと、いたー!』

え?

「まさか学長は、神官にお清めを頼んだのだろうか」

アス殿下がやって来て、扉から廊下側にひょっこりと顔を出し、呟いた。

た、大変だ!!

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