148 / 186
番外編 〜 ぺーちゃん 〜
番外編 〜 アベルの正体と教会3 〜 ノア10歳、アベル5歳
しおりを挟む「な、なん……っ、公爵!? 大司教が妖精が見えると知っていたか!? 何か朕の肩を見ていたのだぞ!?」
教会関係者が全員帰った後、ヒィィ! と、皇帝陛下が叫んだ。
「陛下、落ち着いてください」
「ち、朕も聖人とか言われたらどうするのだ!? 怖いっ、怖いのだぞ!」
「……陛下、それは絶対ありませんから大丈夫です」
「そんなにハッキリ言われると、それはそれで傷つくのだ!」
漫才? 陛下がボケでテオ様がツッコミかしら。皇后様が執務中だから止める人がいないのよね。
「そんな事よりも、大司教の能力からして、教会側があれで納得したとはとても思えん。なぜこうもあっさり引いたのか……」
『僕らがバックにいるって思ったから、ビビったんじゃない?』
「大司教が何を考えているかはわからんが、ベル、君と子供たちは当分外出は控えてくれ」
『無視!?』
そうですわね……。教会は、何か得体が知れないですもの。
「……ナサニエル、大司教や神官から、悪意などは感じられまして?」
『それがさ、ぜーんぜん。綺麗なもんだよ。なんならあの大司教なんて、普通の人間よりも魂が綺麗なくらいさ! ま、ベルたちに比べたら人間寄りではあるけどね』
悪意がない? では、教会側はなんの思惑もなく、聖者を求めているのかしら……?
「ベル、悪意なく人を傷つける者もいる。妖精の言葉を簡単に受け入れるのは軽率だ」
「テオ様……そうですわね。軽率でしたわ」
テオ様の言う通り、妖精たちの話をそのまま受け取ってしまうのは危険ですわよね。
『ちょっと!? それ暗に、僕らの話が信じられないってこと!?』
「ナサニエル、公爵は単に、妖精は純粋だから、裏が読めぬと言っているのではないだろうか?」
『なるほど! ネロってば冴えてるね!』
「それほどでも、あるのだ!」
ナサニエルと皇帝陛下は仲がよろしいのね。
「テオ様、早く帰りましょう。わたくし、アベルが心配ですわ……」
お父様との約束を破ってしまったと落ち込んでいましたもの……。ノアがついてくれているとはいえ、わたくしもテオ様も留守にしてしまうと、不安になってしまうかもしれませんわ。
「ああ。そうだな」
◇◇◇
「お゛とぉざま、おが、さま、おで……っ、おでを、どこにもやらないでぇ……っ」
公爵邸に帰ってきた途端、アベルが泣きながら抱きついてきたのだ。
「まあっ、アベル、どうしたの?」
「お、おで……ひっく、おでを、すでないでぇ……っ」
「捨てるわけないでしょう!?」
何でそんな話に!?
わたくしに縋りついて離れないアベルを唐突に、テオ様が引き剥がし抱き上げる。
「おと、おとぅさまぁ……」
「誰が何と言おうと、お前たちはどこにもやらん! 何があってもだっ」
「ふぇ……っ、おどうざまぁぁ!!」
「テオ様……っ」
アベルを抱きしめ、離さないテオ様に、何だか胸が熱くなった。
少し離れた所でノアが心配そうにこちらを見ていたので、手招きすると、静かにやって来たので抱きしめる。
「ノア、アベルのそばにいてくれてありがとう。あなたも不安でしたわよね……」
「お母様……。私は大丈夫です。でもアベルは、教会に連れて行かれるんじゃないかって、ずっと泣いていて……」
「そうだったの……。もう大丈夫よ。お父様が教会ときちんとお話ししてくれて、教会も理解してくれましたもの」
「本当に……? 教会は、本当にアベルを連れて行かない?」
「ええ。アベルは連れて行かせませんわ。絶対に」
「良かった……」
ホッとして身体の力を抜くノアをさらに強く抱きしめた。
「ベル、アベルが眠ってしまったようだ。」
あら、泣きつかれて眠ってしまいましたのね。テオ様の安定感抜群の抱っこに安心したのかもしれませんわ。
「とりあえず居間に参りましょう」
「ああ。ノア、心配をかけたな」
「いえ、上手くいって良かったです。それと、お父様、お母様、お帰りなさい」
そうでしたわ。挨拶がまだでしたわね。
テオ様と顔を見合わせると、二人一緒に、
「「ただいま。ノア」」
可愛い子供たちとの日常を奪われないよう、わたくし、頑張りますわ!
1,731
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる