継母の心得 〜 番外編 〜

トール

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番外編 〜 ぺーちゃん 〜

番外編 〜 アベルの正体と教会3 〜 ノア10歳、アベル5歳

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「な、なん……っ、公爵!? 大司教が妖精が見えると知っていたか!? 何か朕の肩を見ていたのだぞ!?」

教会関係者が全員帰った後、ヒィィ! と、皇帝陛下が叫んだ。

「陛下、落ち着いてください」
「ち、朕も聖人とか言われたらどうするのだ!? 怖いっ、怖いのだぞ!」
「……陛下、それは絶対ありませんから大丈夫です」
「そんなにハッキリ言われると、それはそれで傷つくのだ!」

漫才? 陛下がボケでテオ様がツッコミかしら。皇后様が執務中だから止める人がいないのよね。

「そんな事よりも、大司教の能力からして、教会側があれで納得したとはとても思えん。なぜこうもあっさり引いたのか……」
『僕らがバックにいるって思ったから、ビビったんじゃない?』
「大司教が何を考えているかはわからんが、ベル、君と子供たちは当分外出は控えてくれ」
『無視!?』

そうですわね……。教会は、何か得体が知れないですもの。

「……ナサニエル、大司教や神官から、悪意などは感じられまして?」
『それがさ、ぜーんぜん。綺麗なもんだよ。なんならあの大司教なんて、普通の人間よりも魂が綺麗なくらいさ! ま、ベルたちに比べたら人間寄りではあるけどね』

悪意がない? では、教会側はなんの思惑もなく、聖者を求めているのかしら……?

「ベル、悪意なく人を傷つける者もいる。妖精の言葉を簡単に受け入れるのは軽率だ」
「テオ様……そうですわね。軽率でしたわ」

テオ様の言う通り、妖精たちの話をそのまま受け取ってしまうのは危険ですわよね。

『ちょっと!? それ暗に、僕らの話が信じられないってこと!?』
「ナサニエル、公爵は単に、妖精は純粋だから、裏が読めぬと言っているのではないだろうか?」
『なるほど! ネロってば冴えてるね!』
「それほどでも、あるのだ!」

ナサニエルと皇帝陛下は仲がよろしいのね。

「テオ様、早く帰りましょう。わたくし、アベルが心配ですわ……」

お父様との約束を破ってしまったと落ち込んでいましたもの……。ノアがついてくれているとはいえ、わたくしもテオ様も留守にしてしまうと、不安になってしまうかもしれませんわ。

「ああ。そうだな」


◇◇◇


「お゛とぉざま、おが、さま、おで……っ、おでを、どこにもやらないでぇ……っ」

公爵邸に帰ってきた途端、アベルが泣きながら抱きついてきたのだ。

「まあっ、アベル、どうしたの?」
「お、おで……ひっく、おでを、すでないでぇ……っ」
「捨てるわけないでしょう!?」

何でそんな話に!?

わたくしに縋りついて離れないアベルを唐突に、テオ様が引き剥がし抱き上げる。

「おと、おとぅさまぁ……」
「誰が何と言おうと、お前たちはどこにもやらん! 何があってもだっ」
「ふぇ……っ、おどうざまぁぁ!!」
「テオ様……っ」

アベルを抱きしめ、離さないテオ様に、何だか胸が熱くなった。

少し離れた所でノアが心配そうにこちらを見ていたので、手招きすると、静かにやって来たので抱きしめる。

「ノア、アベルのそばにいてくれてありがとう。あなたも不安でしたわよね……」
「お母様……。私は大丈夫です。でもアベルは、教会に連れて行かれるんじゃないかって、ずっと泣いていて……」
「そうだったの……。もう大丈夫よ。お父様が教会ときちんとお話ししてくれて、教会も理解してくれましたもの」
「本当に……? 教会は、本当にアベルを連れて行かない?」
「ええ。アベルは連れて行かせませんわ。絶対に」
「良かった……」

ホッとして身体の力を抜くノアをさらに強く抱きしめた。

「ベル、アベルが眠ってしまったようだ。」

あら、泣きつかれて眠ってしまいましたのね。テオ様の安定感抜群の抱っこに安心したのかもしれませんわ。

「とりあえず居間に参りましょう」
「ああ。ノア、心配をかけたな」
「いえ、上手くいって良かったです。それと、お父様、お母様、お帰りなさい」

そうでしたわ。挨拶がまだでしたわね。

テオ様と顔を見合わせると、二人一緒に、

「「ただいま。ノア」」

可愛い子供たちとの日常を奪われないよう、わたくし、頑張りますわ!

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