継母の心得 〜 番外編 〜

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番外編 〜 ミーシャ 〜

番外編 〜 ミーシャの日常 授業参観編5 〜

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ミーシャ視点


授業参観当日、朝からアカデミーは警備の人たちがそこら中を闊歩し、先生たちはぴりぴりとして、物々しい雰囲気の中で、1限目の授業開始の鐘が鳴った。

授業参観は3限目で、それが終われば三者面談が始まる。
3限目の授業は担任の先生の担当教科である数学で、得意科目だが、両親が見学に来ると思うとドキドキしてくるものだ。

周りもみんな、心なしかソワソワしているように見える。

1限目の先生は、まだ授業参観が始まってもないのに緊張しているのは何故だろう。
生徒たちか集中していなくても、今日だけは先生も何も言わないのだ。

そして2限目の途中、早い保護者はもうアカデミーに到着しているようで、窓の外を見れば、保護者らしき人たちがまばらに歩いていた。馬車も一台だけ停まっている。

「うわっ、母さん……っ、何でもう来てんだよ……」

と窓際の男の子が気まずそうに呟き、他の子たちもその声に余計ソワソワしだす。何だか私まで落ち着かない。

アカデミーに入学後、参観日があるのは、デビュタントを控えた学年以上だ。だから私たちは、こんなことは初めてで、親にどう良く見せようかとみんなが思っている。

2限目の授業が進むにつれ、駐車場が馬車で埋まって行く。

わかっている。警備の関係で、お父様やネロおじ様たちは、表の駐車場には馬車を停めないだろう。だけど、きっと今頃アカデミーに着いているんじゃないかって、ソワソワするのだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



学長視点


「ミーシャが授業を受けている所を見られるとは、楽しみなのだ!」
「ちょっと、他の人の目もあるんだから、はしゃぎ過ぎないでよ」
「うむ。わかっているのだ。朕は一応皇帝だからな!」

ディバイン公爵家の影として、アカデミーの学長の座に就任してから十数年経つが、やはり皇帝陛下と皇后陛下をアカデミーにお招きする事は警備面でとても緊張する。

ここ、学長室にお二人を迎い入れ、授業参観が始まるまでの間ゆっくりしてもらっているのだが……。

お二方ともお人柄は、とても親しみやすいのだ。しかし、韜晦皇帝と評判の陛下は、意外にふらふら、ウロウロと落ち着きがなく、自由な方だから気が抜けない。

「それにしても、ディバイン公爵と夫人はまだ着かぬのか?」
「何言ってるのよ。テオ様とイザベル様ならアタシたちより前に皇城を出たでしょ。先に到着して、今部屋の外で騎士たちと話しているわよ」
「ぬ? 朕は話に混ざらなくても良いのだろうか?」
「護衛対象のアタシたちは、こうして部屋でゆっくりしながら守られていたらいいの。経験上わかってるでしょ。下手に動くと護衛しにくいって」

皇后陛下の仰る通りだ。ウロウロされると、護衛側からすれば守りにくい。大人しくしてくださっているのが一番良いのだ。

「しかしディバイン公爵はいつも、朕の前で騎士たちと話すのだ」
「それはアンタがウロウロしないように、わざと聞かせてんのよ」
「そ、そうだったのか!?」

やはり皇帝陛下は天然だ。

そんな事を思っていると、学長室の扉がノックされ主が入ってきた。

主の姿を見ると、陛下とはまた違う緊張感がある。
こちらに向けられた氷のように冷たい瞳は、心まで凍りそうなほど冷え冷えとしている。

やはりミーシャ様の事でお怒りなのだろうか……。

「皇帝陛下、皇后陛下、そろそろ移動します」
「うむ。ディバイン公爵、夫人はどうしたのだ?」
「陛下、わたくしでしたらこちらにおりますわ」

主の後ろからひょこっと現れた奥様は、小動物のようで、主の睨みに冷っとした心がほっこりしてしまう。

主が獰猛な獣なら、奥様はその背に乗るリスだろう。

「そこにいたのだな。ディバイン公爵夫人、今日はミーシャが授業を受けている様子を見させてもらうのだぞ!」
「はい。ミーシャも両陛下に見てもらえるなんて、喜んでいると思いますわ」

なんというか、このお二人は人を和ませる才能がおありのようだ。

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