継母の心得 〜 番外編 〜

トール

文字の大きさ
177 / 186
番外編 〜 ミーシャ 〜

番外編 〜 ミーシャの日常 授業参観編6 〜

しおりを挟む


皇帝ネロウディアス視点


「では陛下、我々は別行動を取りますので、囮……いえ、ご自由に見て回ってください」
「公爵、今囮って言った!?」

朕は今日を楽しみにして来たのに、まさか自分が目立たない為……いや、奥方を目立たせない為に朕とレーテを利用したのか!?

「まぁっ、テオ様、別行動ってどういう事ですの?? 皇帝陛下も皇后様も、あの子の学園生活を見に来てくださったのですよ。目的は同じですもの。一緒に行動したら良いのではありませんの?」
「ベル、陛下はミーシャだけでなく、色々見たいようだ」
「? わたくしも色々見学したいですわ」

いいぞ夫人、もっと言ってやるのだ!

「ベル……陛下たちが一緒だと注目されてしまうぞ?」

公爵、本音がチラリしたのだぞ!?

「フフッ、それはテオ様と二人でも同じですわ。だってテオ様は素敵ですもの」
「っ……なんと可愛いことを言う……、そうか。ベルの女神のような美しさでは、陛下たちがいてもいなくても変わらないのだな……」

どういう意味なのだ!? 朕はまだしも、レーテは公爵の奥方より美しいのだぞ!!

「ちょっと三人とも、ミーシャちゃんの授業始まるわよ」

朕の絶世の美女妻であるレーテが、急かしてくるのでハッとする。

「それは急がねばならないのだ!」
「テオ様、行きましょう」
「ああ。ベル」

公爵は自分の腕を差し出し、ディバイン公爵夫人は当然のように腕を組む。

「レーテ、朕たちも腕を組むのだ」
「仕方ないわね。きちんとエスコートしなさいよね」

うむ、幸せなのだ。公爵、色々酷いけど、今だけは感謝するぞ。

「ところで、ミーシャの教室はどこなのだ?」
「私がご案内いたします」

いざ出発と思いきや、ミーシャの教室がわからず勇み足をしてしまったが、学長が案内してくれるというのでお願いしたのだ。

そうして部屋を出たのだが……、

「イザベル様、アカから聞いたのだけど、テオ様がつけ髭付けたって本当!?」
「本当ですわ。髭の形が悪かったのか、全く似合いませんでしたの」
「見たかったわー!」

公爵が、つけ髭だと!?

レーテとディバイン公爵夫人がコソコソと話している内容が、気になって仕方ないのだ。

チラリと公爵を見れば、絶対零度の目を向けられたものだから、そこからは震えながら前だけを見ていたのだぞ。

「授業が始まっているからだろうか、生徒は廊下には見当たらないのだ。確か6年前は、大勢の生徒が教室の扉や窓から覗いていたような……」
「今回はそのような失礼のないよう、注意して、万全を期しております」
「そうなのか? あれはあれで、子供らしく元気があって良かったのだが?」

リュークは周りに呆れた視線を向けていたが、フレンドリーだったし、朕はああいう雰囲気も好きなのだ。

「ミーシャはきっと、友だちもたくさん出来たのであろうな」
「そうねぇ。ミーシャちゃんは可愛いから、色んな令息からアピールされないか心配よね」
「!? ミーシャはイーニアスと結婚するのだから、男はダメなのだ」

ミーシャはイーニアスのお嫁さんと生まれたら時から決まっているのだぞ。

「誰が、誰と結婚すると……?」
「ヒィィィッ」

魔王が……っ、魔王が降臨したのだ!!

「テオ様、皇帝陛下を脅してはいけませんわ」

そうなのだぞ! いずれ近しい親戚になるのだから、そ、そんなに睨まなくても良いではないか!



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ミーシャ視点


2限目の授業も終わり、3限目が始まる少し前から、廊下には保護者の姿が見えだして、あっという間に混雑する。
この様子だと、クラスメイトの家族以外の人も来ているのかもしれないが、私のお父様もお母様も、ネロおじ様やレーテおば様もまだ来ていない。

「ミーシャ、女神様たちの姿が見えないね」
「ナツィー、うん。もしかしたら、混雑するのを避けて、授業が始まってから来るのかも……」
「それはそうかもしれないわね! この混雑じゃあ……」

クロエがそう言って廊下を見る。
私たちの教室の前だけ、かなりの密集度だ。

「やっぱり、両陛下も、公爵様ご夫妻も、すごい人気」

おっとりとコニーが笑うが、そういうコニーも、さっきまで廊下側のクラスメイトを蹴散らして、まだ来てもないネロおじ様たちを見に行っていたよね。

お母様やお兄様の時は震えていたけど、ネロおじ様は平気なのかな?

「「「「キャーーーーーーーー!!」」」」

その時、廊下で黄色い悲鳴があがったのだ。

しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

処理中です...