継母の心得 〜 番外編 〜

トール

文字の大きさ
179 / 186
番外編 〜 ミーシャ 〜

番外編 〜 ミーシャの日常 授業参観編8 〜

しおりを挟む

ミーシャ視点


「ねぇ、皇帝陛下と皇后陛下はアカデミーの見学に行かれたのに、ディバイン公爵閣下と、公爵夫人はいらっしゃるけど、どうしてかしら……」

担任が三者面談用の部屋へと移動し、一組目が呼ばれてからすぐのことだ。

お父様とお母様が教室から移動しない事に気付いたクラスメイトが、おかしいと思い始めたらしい。

「さっき、皇帝陛下が仰っていたミーシャって、ディバイン公爵家の公女様の事よね」
「あ、私もそれ、引っかかってたの!」
「陛下の口ぶりだと、まるでディバイン公爵家の公女様がこのクラスにいるみたいな言い方だったわよね……」
「そうそう!」
「もしかして、変装して紛れてたりして」
「同じ名前の子もいるし、あの子だったり?」
「えー、わざわざ同じ名前は使わないと思うなぁ」

と、話しだしたではないか。

ネロおじ様の言葉は、やっぱり誤魔化しきれていなかった。

額に汗が浮かぶ。

「まぁ、そうなるわよね」
「隠しきれないとは思ってたけど……」
「結局時間の問題なのかな」

と、友人三人は苦笑いだが、まだ私がディバイン公爵家の人間だとバレたわけではない。

「ミーシャ、あきらめなさい」

クロエ、そんなはっきりと……!

「三者面談で呼ばれたら、わかる事だしね」

ナツィーまで……っ

「ご両親が変装してきてない時点で、結果はわかっていたかも?」
「ミーシャ、女神様たちが話しかけたがっているし、行ってあげなさいよ」
「そうだね。みんな親の所に行って話してるしね」

確かに、それぞれが保護者の所へ駆け寄っていっている。でも……

「ミーちゃん、考えてみたんだけど……バレてもバレなくても、あまり学園生活にかわりないかも?」
「え?」

コニーがコテンと首を傾げ、言ったのだ。

「ミーちゃん、今も私たち以外仲良くしている子いないでしょう」
「うん……」
「たとえ公爵令嬢だってバレても、遠巻きにされるだけだと思うの」

遠巻き……

「それって、今とあまり変わらなくなぁい?」

!? 確かに変わらないかも……っ、なぜだか今も遠巻きにされているし、公爵令嬢とバレても、この三人は友だちのまま変わらないし……

「本当だっ、三人さえ一緒にいてくれるなら、変わらない!」

目から鱗とはこの事か。

コニーの発言に頭を殴られたような衝撃を受けた。

「もちろん私たちは友だちのまま一緒にいるけど、遠巻きにされてる事が変わらないって、どうなのよ……」
「アハハッ、でも、皆驚くだろうね」

クロエの言葉にホッとし、笑ってるナツィーに、やっぱり驚くかなぁ、と保護者席に座る両親をチラチラ見る。

「本当ね! 実はちょっとワクワクしてる自分がいるのだけど、不謹慎かしら」
「私は授業の時から保護者がいる方見れないよ……でも、私もワクワクしてるの」
「実は私も」

と笑い合う三人に、友だちがこんなに楽しそうにしているなら、良いかと思い始めた。

そして───

「お父様、お母様、今日は来てくれてありがとう」

保護者席に近付いていき、二人に抱きついたのだ。
やっぱり二人の腕の中は安心する。

「「「「「ぅえエェェェ!?」」」」」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ミーシャの担任視点


ふぅ……やっと8割方終わった。
次は……アボット君か。先日は忙しかったから、彼女の冗談を上手く返してあげる事が出来なかったが、傷ついてはいないだろうか。アボット君は真面目で優秀だから、あの対応では気にしてしまっているのではないかと思う。

私もまだまだ未熟だ……。

「では、アボット君を呼んでいただけますか」

部屋の外にいる副担任に声を掛けると、「わかりました」と言って、隣の教室へ呼びに行ってくれた。

「ヒエェェェ!!」

何だ!? 隣の教室から悲鳴が……って、ああ、もしかしたら両陛下や公爵夫妻がいらっしゃるのかもしれないな。
この世のものとは思えぬほど美しい方々だ。悲鳴があがるのもわかる。生徒の失神者も、一人だけとは運が良かった。
私も、あの美しさは直視できず、授業中も保護者席を一切見る事が出来なかった。もし直視していたら、今頃は医務室のベッドの上だっただろう。

「せ、せ、せ、先生! おつ、おつれ、お連れしました!!」

扉がノックされ、何やら慌てているような副担任の声が耳に届く。

「どうぞ、お入りください」

中から声を掛けると、扉が開き、アボット君が入ってきた。そして……、

「先生、娘がいつもお世話になっておりますわ」

女神様が、私に微笑んだのだ。

しおりを挟む
感想 51

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

処理中です...