心が読める私に一目惚れした彼の溺愛はややヤンデレ気味です。

三月べに

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一目惚れの出会い編

14 この天使を守りたい。(数斗視点)(前半)

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 感情を爆発させたみたいに声を張り上げた彼女は、怒りで睨み付けているはずなのに、苦しそうな顔は泣きそうだった。


 一体、何があったのか。


 沢田から悪意を感じるというから、近寄らせないようにしたのに、露骨には避けにくいからって、二人でお手洗いに行かせたのが間違いだった。

 出てきたかと思えば、沢田の手首を掴んで叫んでいる姿を見て駆け付ければ、”大嫌いだ”と力一杯に声をぶつける。

 激しい怒りを爆発させるなんて、正直言って意外だった。

 何があったのか。
 聞き出そうとはしたけど、余裕のない様子の七羽ちゃんは、そんな暇を与えてはくれなかった。

 沢田だけを攻撃する言葉を吐いて、俺と真樹に誠意を込めて謝罪。さらには、戻ってきた新一にもまくし立てるように早い口調で、謝って頭を下げたら、逃げるみたいに足早に行ってしまう。

「よくわからないけど、そっとしてあげなよ!」

 なんて、沢田が俺の腕を掴んで止めてきた。
 不快だッ。

「……七羽ちゃんに何した?」
「えっ……? 何もしてないよ?」
「じゃあなんで急に怒ったんだよ? ついさっきまで、一緒にいただろ」

 振り払いたいのを堪えて、どんな仕打ちをしたのか、聞き出そうとするが、沢田は首を横に振る。

「あっ、ちょっとぶつかった! で、でもっ! すぐに謝ったよ!? 本当に、ちょっとぶつかっただけなのに……どうして……」

 涙をポロリと落とす沢田は、しおらしく俯いた。

 それだけで、楽しい空気を壊したくないって、朝から我慢していた七羽ちゃんが、あんなに怒るか?
 そんなわけがないだろっ!

「何か誤解があったんじゃない? とりあえず、七羽ちゃんを探そ?」

 沢田の肩をポンポン叩く真樹の言葉に、慌てて七羽ちゃんの姿を探したけど、もう姿が見えない。

「でも、目が合った時から、最低だって言ってたよね? なんでなのかな……きっと、わたしとは居たくないはずだよ」
「う、うーん。でも、七羽ちゃんを一人で帰すわけには……な?」

 困惑で一杯の真樹には悪いが、同情を買いたい嘘泣きにしか見えない沢田を任せよう。

「俺が探してくる。先帰っていいから」
「えっ!? 数斗くんの車なのにっ?」

 は? 年下の女の子が、一人で帰るって飛び出したっていうのに、ここで車の心配? ふざけんな、この女……!
 七羽ちゃんにした仕打ちがわかったら、覚悟しろよッ。

「頼んだ、新一。……沢田を見張ってくれ」
「わかってる。見付けて来い」

 新一に鍵を手渡して、すれ違う時に小声で伝えた。
 七羽ちゃんから聞いて、新一も沢田が悪いって疑っているはずだ。
 何かわかれば、それ相応の報復を手伝ってくれるだろう。

 遊園地から、飛び出した。
 どっちだ?
 分かれ道を左右確認して、駅の方角に走ってみる。
 電話をするべきか。いや、この先に姿が見えないのなら、電話を…………いたっ! 七羽ちゃん!

 全力で走ったから、なんとか追いつけた。

 俺が追いかけてきたことに驚いている七羽ちゃんは、今にも涙を落としそうな目をしている。

 七羽ちゃんまでアイツと同じく車について言いかけるけど、自分の車なんかより、七羽ちゃんを優先するに決まっているじゃないか。


 七羽ちゃんは、苦しげに顔を歪めると、大きな瞳から、涙を溢した。

 アイツの涙とは違う。全然違う。


 七羽ちゃんの涙は、胸を抉る痛みを感じた。


 我慢してた多分、吐き出していいよ。
 溜め込ませて、ごめんね。

 すぐにでも、抱き締めてしまいたかった。

 悪意を警戒してきて生きていたのだから、たくさん傷付いてきたであろう七羽ちゃんが、ただでさえ小柄なのに、小さくなって、脆く崩れてしまいそうだ。

 でも、まるで弱っているところを漬け込んでるみたいに思えてしまったから、堪えた。
 七羽ちゃんだって、いきなり抱き締められたら、びっくりするだろうし……。
 ただただ頭を撫でるだけでは心苦しかったけれど、そうやってあやす方法しか思い付かなかった。

 だけれども。
 七羽ちゃんの方から、歩み寄ってくれた。

 一歩近付いて、額を押し付ける。

 それは十分、七羽ちゃんが勇気を出して、俺に頼ってくれた行為だと理解出来た。


 ――――よかった……俺を頼ってくれた…………。


 心から安堵して、軽くだけ、抱き締めた。

 腕の中に簡単に閉じ込められると思ったことがあるけれど、想像通りだ。
 小さい。

 俺の腕の中で震えて、余計に泣きじゃくってしまったような七羽ちゃんが、痛々しくて、俺も泣きたくなった。


 もう――――全てから、この腕で、君を守れたらいいのに――――……。



 ぐすん、と鼻を啜る七羽ちゃんが、軽く胸を押してきたので、泣き止んだらしい。

「……ごめ、なさいっ」
「いいんだよ。謝らなくていいから」

 七羽ちゃんが悪いわけではないんだろうから。

「落ち着いてきた? 座るとこ……あ、コンビニ。目、冷やすの、買っておこうか」

 近くにコンビニを見付けたので、目元を手でこすってしまったから、少し赤くなっているところをなんとかしよう。
 手を繋いだまま、コンビニに入って、ついでに水分補給のためにも、ポカリを買おうと手に取る。

「あ、あのっ。新一さんが、二人を送って帰るってことになったんですよね?」

 まだ涙声の七羽ちゃんが、確認してきた。

「そうだよ。気にしなくて大丈夫」
「い、いえっ。……真樹さんは? 真樹さんは……沢田さんと、二人にはなりませんよね?」
「真樹?」

 なんで、真樹……?
 首を傾げる俺は他の客が並んでいたから、セルフレジの方でサッとポカリを買って、顔を曇らせている七羽ちゃんを連れてコンビニを出た。
 
 座れる場所を探してみたけれど、確かこの先に公園があったはずだから、そこのベンチにでも座ろう。
 けれど、先に七羽ちゃんが、目の前の黒のガードレールのところまで行くと、寄りかかるように腰を下ろした。

 七羽ちゃんがそこでいいのなら、と俺も隣に行く。

「すぐに数斗さんに知らせようと思ったんです……。トイレを出る前に……あの人の裏アカを見付けて、しまって…………」

 グッと唇を噛み締めて、何かに耐えるように両手で携帯電話を握る仕草をしたあと、恐る恐るとした様子で躊躇をしながらも、その携帯電話を差し出してきた。
 それを受け取って、俺は画面を確認する。

 裏アカ。
 SNSアプリのツブヤキで、一つのアカウントのツブヤキがつらつらと並んでいた。
 全部、悪口だ。性格悪いって一目瞭然の貶す言葉以外、ない。


 ……はっ……?


 【決めた! このチョロ男をオトして、利用してやろ(笑)喧嘩して相談してもらえば、いいんだよ! ホント、この手を早く使いたかったぁ~! どうせ、チョロ男の使い道はそれぐらいでしょ(笑)あんなチビブスから寝取るなんて、簡単だもん♪】

 そんなクソみたいな文面を見て、ぷつんと頭の血管の一つが切れた気がした。

 チョロ男って……。
 遡ってツブヤキを確認しても、真樹しか当てはまらない。
 この裏アカの持ち主が沢田ならば、ずっと話し相手を努めていた真樹のことのはず。
 そんな真樹を、チョロ男呼ばわり?

 【いきなりチビブスがブチギレた~! なんなの? ヒステリックでかまってちゃん? わたしの本命♡が行っちゃった~! でもあんなヒステリックなチビブス、自滅してくれたラッキー♪ チョロ男と無駄に寝なくて済む(笑)】

 最新のツブヤキを見ても、沢田しか思い当たらない。

 本命が、俺か? ハートなんかつけて、胸くそ悪い。
 真樹を踏み台に利用して、俺を寝取るとまで書いてあった。
 吐き気がするっ!

 あんの女……想像を遥かに超えた性悪の腹黒女じゃないか。

 寝取る? ふざけんなよ。真樹にも近付くなっ。


 ! ……そうか……。
 さっき、いち早く真樹のことを気にしたから、きっと七羽ちゃんが、コレで真樹を利用するって知って、耐え切れなくて怒り出したんだ。

 真樹にも、何かしようとして…………でも、あの完璧な猫被りの腹黒女には、勝てないと思って……。どうすればいいかわからなくて、飛び出したのか……。
 後先考えずには、このアカウントを突き付けられなくて……一人で泣いちゃった……。追いかけて見付けられてよかったよ……よかった。


 俺は「最悪だな……アイツ」と腹黒女についての怒りを静かに吐き出して、手だけはポカリを目に当てている七羽ちゃんの背中をさする。


 見れば見るほど、怒りが沸く。

 チビブスとか、ちんちくりんとか……妹枠の珍獣?
 七羽ちゃんのことを、こんなにも悪く書いてる。あんなに可愛いって、笑って褒めていたのに……!
 悪意をずっと感じてた七羽ちゃんだって、本音じゃないって気付いてて、嫌だったろうな……それなのに、ずっとあんな奴と行動させてたなんて……自分が許せない。

 って。
 は? 何これ?

 チビブス体型じゃあ、つわけない!?
 ふざけんな、勝手なこと書きやがって! ロリコン疑惑だぁ!?
 七羽ちゃんをそこまで貶して……殺してやりたいっ。

 押し倒したら、真っ赤な顔で恥ずかしがる七羽ちゃんを想像するだけで、余裕でつ!
 ロリコン体型なわけないだろ! 太ももの肉付きのよさ! 下半身デブじゃないし! 普通にそそる足じゃん! 今日のミニワンピースにドキドキしまくってんのに、勝手なことをつらつらと! あっても、なくても、全然愛せる自信しかないけど、多分七羽ちゃんは胸が結構ある!
 七羽ちゃんは小柄なだけで、しっかり女の身体だ! さっきも軽く抱き締めただけでも、柔らかかったし! 全部可愛いんだよ!


 ハッ!? そんなこと考えている場合じゃなかった!



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