18 / 103
一目惚れの出会い編
14 この天使を守りたい。(数斗視点)(後半)
しおりを挟むいや、待て……。
七羽ちゃん、どこまで、これ読んだんだ? 全部読んだ? 自分の悪意を全部読むって相当つらいだろうけど……ここの部分まで読んだ? え? 俺、一応訂正しておくべき? 慰める? なんて言うんだ?
無邪気な七羽ちゃんが、”夜に関すること”に、どこまで許容範囲なのかわからない……。
勃つよ、なんていきなり言われたら、せっかく許してくれた距離が台無しになりそう。
とりあえず、寝取るってことには、普通に反応はしているだろうけれど……。
隣の七羽ちゃんは、顔を伏せたまま、ポカリを目元に当てたまま、動かなかった。
真樹だ、真樹。あの腹黒女の毒牙にかかる前に、なんとか…………。
「……七羽ちゃん。コレを真っ先に見せなかったのは、どうして?」
「……真樹さんが……傷付く、と思って……」
やっぱり……。真樹にはこんなこと、ダイレクトに知らせたくなかったんだ。傷付くだろうからって。
そもそも、真樹があの女を紹介するって言い出したし……今回も、真樹が会わせちゃったからなぁ。俺が元凶ではあるけど、また会わせてしまったのは、真樹だ。責任を感じるだろう。
自分の方が、酷い言葉を書かれているのに……周りの方に気遣って…………いい子だけれど、いい子すぎて、心配だ。
「新一さんも……」
「新一?」
「数斗さんと真樹さんが……大事だから……すっごい怒るかと……」
目を見開いてしまう。
新一が、俺達を大事だっていう言葉を……口にするわけないだろう。
でも、七羽ちゃんにはわかったんだろうな。
悪意だけじゃなくて……周りの感情に敏感で、それで、気を張っちゃってて…………強いな。
「酷い、人ですが……本当に放って置き去りなんて、よくないし……でも、帰るまで、私は耐えられなくて……だから……ごめんな、さい」
あんな女でも、悪女だって暴露して置き去りにさせることが出来ない。
しょうがないと、すんなりと納得した。
七羽ちゃんは、他人を傷付けるなんて、出来ない子だ。
反撃する言葉を口にすることだって、震えてしまうくらいなんだから。
だからと言って、帰りの長時間、本性がわかったあんな女と一緒の車に乗るなんて、我慢が出来ないくらい限界だったんだ。
もう一度、今度は強く抱き締めてしまいたかった。
けれど、それは堪えて、片手で七羽ちゃんの頭を引き寄せて、肩に凭れかけるようにして、頭を撫でて宥める。
「謝らなくていいよ。いいから。もっと甘えていいから、我慢しないで」
どんなワガママだって受け止める自信があるから、大丈夫だ。
ぐすん、と鼻を啜る音を聞いて、ここまで追い込んだあの女に殺意を沸かせる。
もうあの女の本性は知れた。
……どうしてやろうか。
真樹も危ないしな……何も知らないし、あんな猫被りがしなだれてくれば、コロッと落ちるよな。
新一にも話して…………そうか、新一だ。
「……どうするのですか?」
「ん? とりあえず、新一に電話するよ。七羽ちゃんを見付けたって報告しないとだし」
顔を上げる七羽ちゃんを離してあげて、携帯電話を返す。
「あとね、真樹にもこのアカウント、見せると思う。というか、真樹も見るって言うはずだから」
七羽ちゃんが気遣ってくれたのは嬉しいけれど、苦笑しながらも正直に話す。
どうして、と眉を下げて見上げる七羽ちゃんは、不安げ。
「隠すより、ずっといいよ。見ていて気分がいいものじゃないけれど、現実を見て、受け止めてもらわないと」
こうでもしないと、腹黒女の本性を理解出来ないだろう。
どうせ、仲間内に暴露してやるんだから、先に被害に遭いそうだった真樹にも、教えてあげないとね。
んー、あそこに公園があるから、そこがいいかもな。
「電話、するね」と、俺は自分の携帯電話を取り出して、新一にかけた。
〔数斗。無事?〕
「うん、ちゃんと見付けられたよ。すぐに電話に出たね?」
もう高速道路に入っただろうから、すんなり電話が繋がったことに疑問に思う。
〔お前が戻るかもって言うから、まだ遊園地の駐車場にいるんだ〕
「あ~、ホントだ。あの女が言い出したんでしょ?」
〔そうだけど……なんで?〕
七羽ちゃんがまた見せてくれた画面には、新しいツブヤキ。
【チョロ男の慰め、うっざ! 誤解誤解ってうっさい! はぁ~早くわたしの本命♡戻ってきて~! 自分の車を放っておいて、あんなちんちくりんと電車で帰るとか、マジあり得ないw戻るから待つっしょ!w】
また七羽ちゃんを、悪意を持って”ちんちくりん”だなんて……。
小柄で可愛いのは、チャームポイントだろ。
本命♡とか、気色悪い、鳥肌が立つ。
また真樹を蔑ろにして……。
「今、二人から離れてる?」
〔電話きたから、ちょっと離れたとこ〕
「よかった。二人から目を離さないで」
〔うん。……で?〕
新一が急かす。絶対に怒るだろうけど、直球を好むだろうから、一言で伝えた。
「新一の元カノと同じタイプだった」
〔は……? ……はぁ……〕
心底怒りを込めた低い声。
予想通り。無理もない。新一の軽いトラウマだからな。
〔古川は? 大丈夫か? 何された?〕
「泣いてすっきりしたところ。七羽ちゃんが、アイツの裏アカを見付けてくれたんだ」
〔裏アカ? ツブヤキか?〕
「そ。真樹を利用して俺を寝取るって書いてあったから、七羽ちゃんも我慢の限界だったんだって」
〔……はぁ~?〕
「他にも、今日だけで、七羽ちゃんの悪口を中心に……20個は書いてるよ」
ドスの効いた声。新一は殺意を込めて、沢田を睨んでいるに違いない。
〔わかった……で、どうする? その裏アカ晒すのは簡単だけど、それだけじゃ済ませないよな?〕
「念のため、今日のはスクショしておいて…………まぁ、本性出させてみるよ」
裏アカを晒されたらすぐに消されるだけだろうから、スクリーンショットで今日の分だけでも、保存しておこう。
でも、もちろん、それだけだと言い逃れするのがオチだ。
何か別の証拠も手に入れて、グループ内だけでも、破滅させてやる。
〔ふぅーん。わかった。で、詳しく〕
「そうだな……俺が追い付いた七羽ちゃんに、手ひどくフラれたとでも言って、こっち来てくれる?」
〔なるほど。お前を慰めろって、仕掛けるわけだ。了解。古川を一人にはしないよな? どこで合流?〕
新一も、かなり七羽ちゃんを気にかけてくれるな……。
妹分で可愛がりたいって言い出したのも意外だったけど、親友に想い人が認めてもらえて、嬉しいな。
「今、コンビニの前。おあつらえ向きに近くに公園があるんだ。電話繋げておくから、録音、よろしく」
〔フッ。いいな。わかった。じゃあ、古川はトイレの中にでも待たせて。合流する〕
サクッと計画を立てて、電話を切る。
俺自身がボイスレコーダーで会話を録音しないのは、念のための処置。失敗したり、変な方向に行ってしまったら、乗り込んでもらうためだ。
あの女の本性を暴くためだけど……七羽ちゃんには、つらいだろうな。
一人にはしたくないけど、ことが終わるまでは、車の中で待ってもらおうか。
そう言おうとしたが、七羽ちゃんは、何故かパチクリと瞬かせる目を、キラリと輝かせたように見えた。
「す、すみませんっ……なんか、だめだってわかっているのに……ワクワクしてきましたっ!」
「っぷ! ……ワクワクって……! 七羽ちゃん!」
噴き出してしまう。
さっきまで泣いていたのに、秘密を暴く作戦に、興味が惹かれてしまって、ワクワクしてきてしまったようだ。
素直! 正直!
あんな腹黒すぎる文ばかりが読んでいたから、癒される。無邪気だ。
笑われてしまった七羽ちゃんは、恥ずかしがって頬を真っ赤にして、それを両手で押さえて隠す。
ちょっと気が楽になるなら、いいか。
どうせなら、スッキリする結果にしてあげよう。
俺は愛しい気持ちで、七羽ちゃんの頭を撫でた。
あんな腹黒女が身近にいたなんて、気付けなかったんだ。
毒牙にかかる前に、教えてくれた七羽ちゃんには感謝しかない。
真樹のことも、新一のことも、必死に考えてくれて、それでいっぱいいっぱいになってくれた。
君は、天使なの?
なんて。
尋ねたくなった。
33
あなたにおすすめの小説
ヤンデレ旦那さまに溺愛されてるけど思い出せない
斧名田マニマニ
恋愛
待って待って、どういうこと。
襲い掛かってきた超絶美形が、これから僕たち新婚初夜だよとかいうけれど、全く覚えてない……!
この人本当に旦那さま?
って疑ってたら、なんか病みはじめちゃった……!
私は既にフラれましたので。
椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…?
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた
夏菜しの
恋愛
幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。
彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。
そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。
彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。
いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。
のらりくらりと躱すがもう限界。
いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。
彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。
これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?
エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。
最高魔導師の重すぎる愛の結末
甘寧
恋愛
私、ステフィ・フェルスターの仕事は街の中央にある魔術協会の事務員。
いつもの様に出勤すると、私の席がなかった。
呆然とする私に上司であるジンドルフに尋ねると私は昇進し自分の直属の部下になったと言う。
このジンドルフと言う男は、結婚したい男不動のNO.1。
銀色の長髪を後ろに縛り、黒のローブを纏ったその男は微笑むだけで女性を虜にするほど色気がある。
ジンドルフに会いたいが為に、用もないのに魔術協会に来る女性多数。
でも、皆は気づいて無いみたいだけど、あの男、なんか闇を秘めている気がする……
その感は残念ならが当たることになる。
何十年にも渡りストーカーしていた最高魔導師と捕まってしまった可哀想な部下のお話。
単純に婚約破棄したかっただけなのに、生まれた時から外堀埋められてたって話する?
甘寧
恋愛
婚約破棄したい令嬢が、実は溺愛されていたというテンプレのようなお話です。
……作者がただ単に糸目、関西弁男子を書きたかっただけなんです。
※不定期更新です。
虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります 番外編<悪女の娘>
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
私の母は実母を陥れた悪女でした
<モンタナ事件から18年後の世界の物語>
私の名前はアンジェリカ・レスタ― 18歳。判事の父と秘書を務める母ライザは何故か悪女と呼ばれている。その謎を探るために、時折どこかへ出かける母の秘密を探る為に、たどり着いた私は衝撃の事実を目の当たりにする事に―!
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる