心が読める私に一目惚れした彼の溺愛はややヤンデレ気味です。

三月べに

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一目惚れの出会い編

14 この天使を守りたい。(数斗視点)(後半)

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 いや、待て……。
 七羽ちゃん、どこまで、これ読んだんだ? 全部読んだ? 自分の悪意を全部読むって相当つらいだろうけど……ここの部分まで読んだ? え? 俺、一応訂正しておくべき? 慰める? なんて言うんだ?
 無邪気な七羽ちゃんが、”夜に関すること”に、どこまで許容範囲なのかわからない……。
 つよ、なんていきなり言われたら、せっかく許してくれた距離が台無しになりそう。

 とりあえず、寝取るってことには、普通に反応はしているだろうけれど……。


 隣の七羽ちゃんは、顔を伏せたまま、ポカリを目元に当てたまま、動かなかった。


 真樹だ、真樹。あの腹黒女の毒牙にかかる前に、なんとか…………。

「……七羽ちゃん。コレを真っ先に見せなかったのは、どうして?」
「……真樹さんが……傷付く、と思って……」

 やっぱり……。真樹にはこんなこと、ダイレクトに知らせたくなかったんだ。傷付くだろうからって。
 そもそも、真樹があの女を紹介するって言い出したし……今回も、真樹が会わせちゃったからなぁ。俺が元凶ではあるけど、また会わせてしまったのは、真樹だ。責任を感じるだろう。

 自分の方が、酷い言葉を書かれているのに……周りの方に気遣って…………いい子だけれど、いい子すぎて、心配だ。

「新一さんも……」
「新一?」
「数斗さんと真樹さんが……大事だから……すっごい怒るかと……」

 目を見開いてしまう。
 新一が、俺達を大事だっていう言葉を……口にするわけないだろう。
 でも、七羽ちゃんにはわかったんだろうな。
 悪意だけじゃなくて……周りの感情に敏感で、それで、気を張っちゃってて…………強いな。

「酷い、人ですが……本当に放って置き去りなんて、よくないし……でも、帰るまで、私は耐えられなくて……だから……ごめんな、さい」

 あんな女でも、悪女だって暴露して置き去りにさせることが出来ない。

 しょうがないと、すんなりと納得した。
 七羽ちゃんは、他人を傷付けるなんて、出来ない子だ。
 反撃する言葉を口にすることだって、震えてしまうくらいなんだから。

 だからと言って、帰りの長時間、本性がわかったあんな女と一緒の車に乗るなんて、我慢が出来ないくらい限界だったんだ。


 もう一度、今度は強く抱き締めてしまいたかった。
 けれど、それは堪えて、片手で七羽ちゃんの頭を引き寄せて、肩に凭れかけるようにして、頭を撫でて宥める。

「謝らなくていいよ。いいから。もっと甘えていいから、我慢しないで」

 どんなワガママだって受け止める自信があるから、大丈夫だ。

 ぐすん、と鼻を啜る音を聞いて、ここまで追い込んだあの女に殺意を沸かせる。

 もうあの女の本性は知れた。
 ……どうしてやろうか。

 真樹も危ないしな……何も知らないし、あんな猫被りがしなだれてくれば、コロッと落ちるよな。
 新一にも話して…………そうか、新一だ。

「……どうするのですか?」
「ん? とりあえず、新一に電話するよ。七羽ちゃんを見付けたって報告しないとだし」

 顔を上げる七羽ちゃんを離してあげて、携帯電話を返す。

「あとね、真樹にもこのアカウント、見せると思う。というか、真樹も見るって言うはずだから」

 七羽ちゃんが気遣ってくれたのは嬉しいけれど、苦笑しながらも正直に話す。
 どうして、と眉を下げて見上げる七羽ちゃんは、不安げ。

「隠すより、ずっといいよ。見ていて気分がいいものじゃないけれど、現実を見て、受け止めてもらわないと」

 こうでもしないと、腹黒女の本性を理解出来ないだろう。
 どうせ、仲間内に暴露してやるんだから、先に被害に遭いそうだった真樹にも、教えてあげないとね。

 んー、あそこに公園があるから、そこがいいかもな。

「電話、するね」と、俺は自分の携帯電話を取り出して、新一にかけた。

〔数斗。無事?〕
「うん、ちゃんと見付けられたよ。すぐに電話に出たね?」

 もう高速道路に入っただろうから、すんなり電話が繋がったことに疑問に思う。

〔お前が戻るかもって言うから、まだ遊園地の駐車場にいるんだ〕
「あ~、ホントだ。あの女が言い出したんでしょ?」
〔そうだけど……なんで?〕

 七羽ちゃんがまた見せてくれた画面には、新しいツブヤキ。

 【チョロ男の慰め、うっざ! 誤解誤解ってうっさい! はぁ~早くわたしの本命♡戻ってきて~! 自分の車を放っておいて、あんなちんちくりんと電車で帰るとか、マジあり得ないw戻るから待つっしょ!w】

 また七羽ちゃんを、悪意を持って”ちんちくりん”だなんて……。
 小柄で可愛いのは、チャームポイントだろ。

 本命♡とか、気色悪い、鳥肌が立つ。

 また真樹を蔑ろにして……。

「今、二人から離れてる?」
〔電話きたから、ちょっと離れたとこ〕
「よかった。二人から目を離さないで」
〔うん。……で?〕

 新一が急かす。絶対に怒るだろうけど、直球を好むだろうから、一言で伝えた。


「新一の元カノと同じタイプだった」

〔は……? ……はぁ……〕


 心底怒りを込めた低い声。
 予想通り。無理もない。新一の軽いトラウマだからな。

〔古川は? 大丈夫か? 何された?〕
「泣いてすっきりしたところ。七羽ちゃんが、アイツの裏アカを見付けてくれたんだ」
〔裏アカ? ツブヤキか?〕
「そ。真樹を利用して俺を寝取るって書いてあったから、七羽ちゃんも我慢の限界だったんだって」
〔……はぁ~?〕
「他にも、今日だけで、七羽ちゃんの悪口を中心に……20個は書いてるよ」

 ドスの効いた声。新一は殺意を込めて、沢田を睨んでいるに違いない。

〔わかった……で、どうする? その裏アカ晒すのは簡単だけど、それだけじゃ済ませないよな?〕
「念のため、今日のはスクショしておいて…………まぁ、本性出させてみるよ」

 裏アカを晒されたらすぐに消されるだけだろうから、スクリーンショットで今日の分だけでも、保存しておこう。
 でも、もちろん、それだけだと言い逃れするのがオチだ。
 何か別の証拠も手に入れて、グループ内だけでも、破滅させてやる。

〔ふぅーん。わかった。で、詳しく〕
「そうだな……俺が追い付いた七羽ちゃんに、手ひどくフラれたとでも言って、こっち来てくれる?」
〔なるほど。お前を慰めろって、仕掛けるわけだ。了解。古川を一人にはしないよな? どこで合流?〕

 新一も、かなり七羽ちゃんを気にかけてくれるな……。
 妹分で可愛がりたいって言い出したのも意外だったけど、親友に想い人が認めてもらえて、嬉しいな。

「今、コンビニの前。おあつらえ向きに近くに公園があるんだ。電話繋げておくから、録音、よろしく」
〔フッ。いいな。わかった。じゃあ、古川はトイレの中にでも待たせて。合流する〕

 サクッと計画を立てて、電話を切る。
 俺自身がボイスレコーダーで会話を録音しないのは、念のための処置。失敗したり、変な方向に行ってしまったら、乗り込んでもらうためだ。

 あの女の本性を暴くためだけど……七羽ちゃんには、つらいだろうな。
 一人にはしたくないけど、ことが終わるまでは、車の中で待ってもらおうか。


 そう言おうとしたが、七羽ちゃんは、何故かパチクリと瞬かせる目を、キラリと輝かせたように見えた。

「す、すみませんっ……なんか、だめだってわかっているのに……ワクワクしてきましたっ!」
「っぷ! ……ワクワクって……! 七羽ちゃん!」

 噴き出してしまう。
 さっきまで泣いていたのに、秘密を暴く作戦に、興味が惹かれてしまって、ワクワクしてきてしまったようだ。

 素直! 正直!
 あんな腹黒すぎる文ばかりが読んでいたから、癒される。無邪気だ。

 笑われてしまった七羽ちゃんは、恥ずかしがって頬を真っ赤にして、それを両手で押さえて隠す。

 ちょっと気が楽になるなら、いいか。
 どうせなら、スッキリする結果にしてあげよう。

 俺は愛しい気持ちで、七羽ちゃんの頭を撫でた。


 あんな腹黒女が身近にいたなんて、気付けなかったんだ。
 毒牙にかかる前に、教えてくれた七羽ちゃんには感謝しかない。

 真樹のことも、新一のことも、必死に考えてくれて、それでいっぱいいっぱいになってくれた。


 君は、天使なの?


 なんて。
 尋ねたくなった。


 
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