心が読める私に一目惚れした彼の溺愛はややヤンデレ気味です。

三月べに

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一目惚れの出会い編

15 腹黒女を追い込み尋問。(後半)

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〔なっ、何もしてないってば! なんでなの!? ど、どうしてッ! どうしてわたしを信じてくれないの!?〕
〔君のこと、信じる価値ないからだよ〕
〔なッ……!〕
〔知ってて来たよね? 俺が七羽ちゃんを口説くって。それなのに、ランチで、兄妹みたいって……サラッと恋愛対象外にしようとしてさ。酷いな〕
〔そ、それはっ! ただ、思っただけで!〕
〔そうなの? そうなんだろうね。七羽ちゃんからも聞いたよ。俺が七羽ちゃんのお兄ちゃんみたいだねって、言ったって。……傷付いたよ〕

 サッと、新一さんと真樹さんが、私の顔を見た。
 ……傷付いた、のは多分、数斗さんのことかと……。

 おず、と顔を伏せて、新一さんの携帯電話を見つめた。

〔ご、ごめん! だ、だって、本当に……仲のいい兄妹に見えて、悪気があったわけじゃないの!〕
〔まぁ、わかるよ。七羽ちゃん、可愛いしね。妹みたいに可愛がっちゃうんだよ、新一も、真樹もさ〕
〔う、うんっ! そうなんだよ! ちっちゃくて可愛いから! わたしだって〕
〔嘘つくなよ。そんなこと思ってないくせに、そうやって平然と嘘を吐くんだな? だから目の中、真っ黒に濁ってるんだよ〕
〔はっ……?〕

 ズバッと、数斗さんが両断しては、また言い放つ。


〔何を言っても、嘘にしか聞こえないよ。七羽ちゃんが天使みたいに心が綺麗だって表現するなら、沢田は悪魔みたいに心が濁っているってことかな。いや、悪魔にも失礼かな? ドブみたいに濁ってるんだろうね〕

〔ひ、ひどい……わ……笑えない、よ……〕




 私は『ひえぇえっ』と真樹さんと凍えるような寒さを感じて、ぶるりと震え上がった。

 今、沢田の前にいる数斗さん……人を、視線で凍らせられるのではないか……?

〔ねぇ、なんで俺の恋路を邪魔するのさ。わざわざ俺が誰かを想ってる時になんて…………何? 誰かのモノを盗りたいっていう悪癖持ちだったの?〕
〔ち、ちがッ! 違うのッ! 本当は前から、ずっと! 片想いしてて、諦めきれなくてッ! だから〕
〔ハッ。このタイミングで? 横恋慕って……どう足掻いても、悪女じゃん〕
〔違うっ、違うって〕
〔いいから、その演技。もう、うざい。七羽ちゃんは、素直で純真無垢で天真爛漫なのに……同じ女として、どうしてそこまで汚れられるのさ?〕

 す、凄まじいッ! 数斗さん!
 めっちゃ私を持ち上げて、沢田さんを落とすだけでは飽き足らず、ゲシゲシッと踏み潰しているッ! 容赦ない!

『古川……自分が褒められていることより、この話の行方しか気にしてないような……?』と、新一さんに、またもやバレている。

 いや、もうっ!
 数斗さんの猛攻に、あの外面がどこまで耐えれるか、気になって気になって、しょうがないでしょ!?

〔女子が女子に可愛いって言うのは、本心とは限らないってのは理解してるけど……心の中で自分のこと、本気で七羽ちゃんより可愛いって思ってる? 鏡に、ヘドロが映らなかった?〕
〔い、いや……嫌……いやっ……なんで? 本気で”あんな子”、可愛いって思ってるの?〕
〔そう言ってるだろ。”あんな子”って何さ? 貶さないでくれる?〕

 お! ボロ出してきた!?

〔いやいや、おかしい、おかしいって数斗くん。子どもみたいに小さいから、庇護欲で可愛いって思うだけで、異性としての魅力とは違うって。よく考えてみてよ〕
〔ハハッ。逆に、自分には異性の魅力があるってこと? どこ? ヘドロにしか見えないって〕
〔へ、ヘドロって!〕

 ヘドロ……! 煽る煽る、数斗さん!

〔普通におかしいでしょ! あんな子より、わたしが可愛いって!〕
〔どうして? どこが?〕
〔数斗くんは、珍しい小動物に夢中になっているだけなんだよ!〕
〔小動物ならともかく、珍しいって何? それなら、猫被りがとんでもない悪女の方じゃない?〕
〔悪女じゃないって! あんな子! ちんちくりんなだけじゃん!〕

 ギシ、と軋む音がした。
 ん? となんの音かと、三人で不思議に思ったが、会話の方に意識が戻る。

〔ちんちくりんな珍獣! 素直で純真無垢? ただのあか抜けなくて、子どもなまま年を重ねただけのイマイチすぎる子なんだよ!? ナチュラルメイクって聞こえはいいけど、ただ下手なだけで童顔で誤魔化してるだけ! あんな子、数斗くんに釣り合わないよ! だから兄妹にしか見えないって思っちゃうんだよ!?〕

 おお! かなりボロを出した! すごい!
 でも、兄妹発言を正当化するために言ったみたいに修正をする! 本当に、やり手な腹黒女子だ!

『この子、貶されてるのに、全然ダメージ受けてない気が……』と、また新一さんが私を盗み見る。
 真樹さんも貶した言葉に口をあんぐりさせては、矛先の私を気にしていた。

 いや、釣り合い云々の言葉は、もう今日は散々吐かれたので、今更です。

〔釣り合わない、ね……。で? 沢田なら俺に釣り合うって、言いたいわけ?〕
〔そ、そうだよ? 変じゃないでしょ? わたし達〕
〔どう考えても、人間とヘドロは釣り合わないよ〕

 

 バッサリと言い放つ。
 あんな腹の中はともかく、美人な女子に向かって、ヘドロ連呼!
 数斗さんの情け容赦ない毒吐き!

〔ヘドロ、ヘドロって……いい加減にしてよ! どうしてそこまでわたしを貶すの!?〕

 もう限界だと、甲高い声で叫ぶ沢田さん。

〔意趣返しかな。七羽ちゃんも、いい加減にしてって叫んでなかった? それに自分が一番わかってるくせにって、言ってたよね。自分でわかってるんでしょ?〕
〔だぁかぁらぁ! あんなチビブスに、何もしてないってば!!〕

 私のための意趣返し。
 トドメになったのか、ついに定着していた私の呼び名を叫んだ。

〔数斗に釣り合わないって、ダサいって、遠回しには話してたけど! でも全然許容範囲だから! 親切に優しく言ってただけだもん! あの子だって、釣り合わないからって、頑張って努力しても、足りなくて、最後にはボロボロになるって! あんなヒステリックに叫んで逃げたんだから! 正しかったじゃん! 親切でしょ!?〕

 親切、か。
 確かに客観的に見れば、無害な会話だった。

 、だ。

 彼女の言う親切は、ドロドロの真っ黒な腹から出されて、綺麗に着飾っただけの言葉。
 それを聞きつつも、その真っ黒な腹の真の言葉を聞いていた私には、親切の薄っぺらい皮を被ったどす黒い悪い人でしかなかった。


〔親切なわけないだろ、このヘドロ。七羽ちゃんは、ずっとお前のその悪意に気付いてて、我慢してたんだよ〕


 数斗さんは、強く吐き捨てた。怒りを孕んだ声。

 急に、プツリと切れてしまった。
 新一さんの電話画面には、通話が終わったという表示がある。

「えっ? ど、どうしたんですか!? か、数斗さんはっ!?」
「大丈夫だ。終わったってことだろ。すぐに数斗が戻ってくる」
『あとは、古川に聞かせたくない言葉で罵るんだろうから、切ったんだろうな』

 ふぅ、と新一さんは息をついた。

 慌てふためいた私も、私には聞かせたくないほどの激しい罵倒をしたいのだと受けて止めて、新一さんと同じく肩を下げて力を抜く。

 ……殺す、とか言ってたけれど、本当にしないよね。
 怒りを表した心の声であって、有言実行されるわけがない、はず。

「……もう……事情、聞いていいっすか?」

 ポッカーンと唖然とした真樹さんが、詳しい事情を話してほしいと、声を絞り出した。


 
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