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一目惚れの出会い編
19 腹黒の暴露で一件落着。(後半)
しおりを挟む「結局、他人の価値観だし、それを押し付けられるのは納得いかない。なんで好きな子の隣にいることを、否定されなきゃいけないの? 合う合わないとか、他人が決めて、好きなのに一緒にいても、苦労するだけだなんて……ショックだよ」
『御曹司だからって、煌びやかな派手な美女がお似合いだろって、勝手に決めて言い寄ってきた女達の顔を覚えてないけれど、彼女達を思い出して気分が悪くなるな。なんで勝手にボロボロになるだけだ、なんて言うんだ。俺は、頑張り屋な七羽ちゃんを守る』
悲しげな雰囲気ながらも、数斗さんは強い意志を込めた綺麗な黒い瞳を、私に向ける。
数秒見つめ返してから、私は前、というか下を向く。
他人が決める釣り合う釣り合わないの価値観は拒否。
ただ好きだから想い人と一緒にいる。
釣り合うから付き合うわけじゃない。
でも、左右されすぎないように、とは思っても、気になるものは気になるじゃないか。
ちょっと目が潤んだ。
『あ、気にしてんだ……数斗と釣り合わないってこと。別にいいと思うんだけどなー。逆に釣り合わないって、何? どんなこと?』
『チッ。かなりダメージを受けてんじゃないのか? 数斗のことは、好きだろうが、そのことで一歩踏み出せないのに……あんの腹黒め』
『……どうすれば、気にしないでくれるかな。俺は――――好きだから、付き合ってほしいのに…………』
むぅーっと唇を尖らせて、首を傾げる。
真樹さんが、釣り合わないカップルの例えを考えているのを聞きつつ、迷う。悩む。
でも、なんだか、ふわふわして、よくわからない。
『『考え込んでる……』』
『……何考えているんだろうか。可愛いんだけど』
反対側にも首を傾げて、ポロリと言った。
「……まぁ……釣り合うからって付き合うのは、おかしいですよね……」
そんな理由で付き合うなんて、ない。
自分こそは釣り合うから付き合うべきだ。なんていうのは、あの沢田さんの主張だった。
「……でも、相手がとっても素敵なら……頑張って釣り合う努力はしたいですよねぇ……」
むにゃと口元を動かして、枝豆とお酒を持ってくれた女性店員に「ありがとうございます」と笑顔を向けて受け取る。
『とっても素敵って言われた? 俺のこと? ねぇ? 俺?』
『い、いや、わからん!』
『聞けよ、お前が』
どうやら、数斗さんが自分を指差して、無言で真樹さん達に尋ねているようだ。
ぐびっと追加のカシスソーダを飲んだ私は、ちょっと口を押えた。
「まずい……」
「え? 不味い?」
「ち、違います。お酒はもう、やめた方がいいみたいです……」
「ああ、セーブね。じゃあ、ジュースにしようか」
酔いが限界だと、自己判断。このままでは、お酒に呑まれるかもしれないので、ジュースに切り替えるべき。
ちゃんと呑まれないお酒の飲み方が出来るじゃないか、と新一さんが感心する中、数斗さんに差し出されたソーダを飲んだ。
数斗さんの飲みかけのソーダ。また間接キスをしてしまったことに気付いたのは、ちょっと酔いが和らいだあとのことだった。
ちまちま。
ちまちまと、枝豆を押し潰して中身を口に入れて、もぐもぐと咀嚼。
『ひたすら、枝豆を食べてる……可愛い』
『小動物』
『小動物みたいだ』
酔い覚ましをかねて、ひたすら、枝豆を食べ続ける私。
「あれ? そういえば、七羽ちゃん。休みが並べば、ネイルするって言わなかった? 今日はしてないね。今思い出した」
ついた塩を舐めとった指を凝視する数斗さんが、尋ねてきた。
「ああ……忘れちゃいました。どうせ、あの人に、安物のマニュキュアで下手に塗ってる~とか思われるのオチですよ。自分と違って、ネイルサロン行ないんだ、とかなんとか」
「確かにツブヤキに書きそうだね……」
「アイツは、なんかネイルしてたのか?」
「あぁー、うん。白い花でデコッたネイルしてたよ。自慢したあと……七羽ちゃんの手の小ささを褒めてた気がするんだけど…………」
「「……」」『『比べたな……?』』
真樹さんが言えば、自分の可愛いネイルと自慢しては、何もしていない私の手に注目させて、比べさせたのだ。
いちいちのマウントと貶し。
新一さんと数斗さんから、冷たい雰囲気を感じ取れた。
「最低だな! もう!」
プンプンとしながら、真樹さんはハイボールをまた飲み干す。
「よし。手筈は、整ったぞ~」
ニヤリ、と、とっても悪い顔で不敵に笑う新一さん。
その腹黒女子の正体を暴いてやる手はずが、整ったとのこと。
「おれも送信オッケ~」
ちょびちょびとハイボールを飲みながら、へらへらと真樹さんは携帯電話を揺らして見せる。
知らせるべき友人には、メッセージを送ったそうだ。
矛先が特定出来た悪口のツブヤキは、本人にスクショも送った。
【楽しく遊園地で遊んだはずなのに! こんなにも、ボロボロ書かれてる! 酷くね!? チョロ男って、おれのこと!!(号泣)】
同情を誘う言葉の真樹さんのツブヤキに、スクショとともに裏アカのIDが貼られる。
数斗さんも、似たようなことを書き込む。仲のいい友人に向けて。
【俺の友だちをこんなにも悪く言う人は許せない。最低だ】
淡々と冷たく感じる文章だ。怒りが伝わる。
新一さんだけは、それほどリアルの友だちとツブヤキは繋がっていないので、ツブヤキには書いていない。
頬杖をついて、メッセージアプリを様子見。
『んじゃー、古川に直接発火してもらうか』
「古川、送って」
「あ、はい」
ふきふきとウェットティッシュで手を拭きとってから、携帯電話を操作。
沢田さんに、返信。
彼女本人に、放火されたと知らせるのだ。
作り上げた外面を燃やし尽くされるという知らせ。
【自分が一番わかってますよね。本当に大嫌いですよ】
そうネタバラシのメッセージを送ったあと、彼女の裏アカのスクショを送りつける。
私と数斗さん、そして真樹さんを利用するという部分のスクショ。
「あ。即読つきました」と、彼女が私のメッセージを見たと報告。
「早いな」
にやりとする新一さん。
嬉々として、ツブヤキを眺めた。沢田さんの裏アカ。
さっそく、削除されたらしい。
こんな腹黒を吐きまくった裏アカ。バレたことに、かなり焦っただろうなぁ。
しかし、もう証拠は残されている。
トドメ作業。
新一さんと真樹さん、そして数斗さんも揃って、スクショしておいた書き込みをグループメッセージを送る。
さらには、数斗さんに向かって、言い放った録音も。
三人揃っての証拠提示。言い逃れは、出来ない。
分厚かった外面の真っ黒な腹を、暴かれた。
これで、彼女が築き上げた交友関係は、粉々に崩れ落ちただろう。
「ブロックしろよ、古川」
「うん。そうした方がいいよ。もう無駄に関わらなくていいから」
新一さんと数斗さんは、もう彼女からの悪意を受け取らないように、繋がりを断つことを言ってくれた。
裏アカも消え、メッセージアプリのやり取りも不可能にすれば、もう会うこともないので、あの黒い声はもう聞かずに済む。
コクリと頷いて、ブロック設定をして、そしてメッセージ履歴も削除。
あの悪意の塊を、削除。
ふぅ、と一息つく。
『……自分も悪かったとか、そんなこと思って、無駄な反省とかしてないだろうな?』
新一さんが疑っている。
また、お説教されてしまう!
「これでもう、被害者とか、出ませんよね!」
「そうだね。七羽ちゃんのおかげ」
ちゃんと然るべき対処をしたと思っていることを言って示す。
またちまちまと枝豆を食べ始めると、数斗さんが頭をポンポンと撫でてきた。
お疲れ様、という気持ちを込めて。
「おれもひっどい被害免れた! 七羽ちゃんには不幸だとは思うけど、不幸中の幸いってやつだよね? このままだと、おれと数斗が毒牙に~! って、いや、おれ、またこっわい人と引き合わせちゃったんだよな。本当にごめんね、七羽ちゃん。もっと食べて。もっと飲んで」
「それはもう謝ってもらいましたよ? 真樹さんも飲んで飲んで」
「うぅ~! おれはチョロくないもん!」
「そうですね。うんうん。真樹さんは、あくまで友だちとして、今日は楽しませようと会話を弾ませていたのに! 真樹さんが口説いてるって、自惚れてましたね!?」
「そう! わかる!? おれは友だちとして遊んでただけなのに!! 下心なんて! ……ないとは言い切れないけれども!」
「嘘でいいから、言い切れそこ」
「あいてっ」
私がもうお酒を飲むことをやめたことをすっかり忘れている真樹さんに、わざわざ言うことなく、影の功労者として労わる。
新一さんに軽いチョップを受けながらも、つらつらと愚痴を溢してはお酒を進ませる真樹さん。
そりゃひでぇ、と相槌を打つ新一さんも、おかわりをする。
結構飲む人達だなぁ、とまたちまちまと枝豆を食べ続けた。
「ふふ。七羽ちゃん。ずっと枝豆食べてるね」
「あ、はい」
「一人で三人分食べたね」
「え!? そんなに!?」
「いや、流石に冗談。好きなんだ?」
笑っている数斗さんも、枝豆に手を伸ばす。
「いや、でも、ほら……食べ始めたら止まりません?」
「わかるぅ。けど、七羽ちゃん、食べすぎじゃない?」
「店員が片付けたけど、大皿一つは食べただろ」
ケラケラと上機嫌な真樹さんと新一さんにまで、からかわれた。
ぽやぽやした頭で、なんとなく、この人達もスッキリしたんだってことを理解する。
これで、一件落着、か。
へにゃー、と口元を緩ませて、安堵した。
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