心が読める私に一目惚れした彼の溺愛はややヤンデレ気味です。

三月べに

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お試しの居場所編(前)

 うっかりお家デートにお誘い。(数斗視点)(後半)

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 全然、信用出来ないであろう言葉を、わざわざと……。

〔へっ? あ、はい……わかってます〕
「……」

 意外そうに驚かれたかと思えば、頷かれる。

 ……わかってるの……?

「……七羽ちゃん、そこまで俺のこと、信用してくれるの?」

 そりゃ、無理強いなんてする気は、毛頭ない。
 でも、なんだろうか。このモヤモヤ。
 男だから、もっと警戒した方がいい。そう注意しておくべきだろうか。
 でもそうしたら、誘っている俺は、その見本じゃないか。


〔……数斗さんは、……優しいですから……〕


 俺を信用してくれる理由。

 優しいから。
 七羽ちゃんには、優しいから。


 グッと嬉しさを噛み締めたくなるけれど、いやだから、優しいからってのこのこと家に行っちゃダメだよ、って言うべきだろうか。
 いや、でも、七羽ちゃんは他人の悪意に敏感だから、間違いなんて起こさないだろうし……。

〔数斗さんがいいなら……お部屋にお邪魔していいですか?〕
「……うん。もちろんだよ」

 注意すべきだという理性が、呆気なく歓喜に潰された。

 七羽ちゃんがっ! 家に来るっ! 来てくれるっ!

〔それでは……お昼すぎ?〕
「あぁー、どっかで食べる? あ、いや、俺の家で食べない?」

 まだお昼前だけど、一刻も早く七羽ちゃんに会いたいから、ついつい欲張って、家でも一緒に食べないかと提案した。

「カニクリーム、好きって言ってたよね? パスタの材料があるから、どうかな? カニクリームパスタ」
〔数斗さんが作ってくれるのですか?〕
「うん」
〔……女子力〕
「ちょっ、七羽ちゃんってば! 一人暮らしの普通の自炊レベルだよ?」
〔あ、そうでしたね……。いただきたいです〕

 食いつてくれた七羽ちゃんは、目を見開いて輝かせてくれる。
 よっしゃ、と画面の外でガッツポーズをした。
 女子力、だなんて悔し気に呟くから、噴き出して笑ってしまう。

 七羽ちゃんが、俺の手料理を食べてくれる……! ホント、大したものじゃないけど!
 今後、七羽ちゃんの好きな料理、覚えてレベル上げていこ。

「じゃあ……七羽ちゃんの家まで、迎えに行ってもいいかな?」

 昨日カーナビにちゃんと登録したし。なんなら、覚えた。

〔車だと、どのくらいになります?〕
「そうだなぁ……一時間ちょいになるね」

 新一の家からの距離を考えると、それくらいの時間がかかってしまう。

〔それだと……電車の方が早いのでは? 私が最寄り駅まで行って、そこで合流がいいかと〕
「うーん、そうだろうけれど……俺が迎えに行きたい。七羽ちゃんも、あまり負担にならないようにしようよ」
〔……それは……とても、ありがたいです〕

 タブレットの方で検索した七羽ちゃん情報で、車より電車の方が短時間で会えるそうだが、電車に乗せるより、車に乗ってもらった方が負担は軽いはずだ。本心で、俺が迎えに行きたい。
 七羽ちゃんも、ちょっとつらいみたいで、結構あっさりと頷いてくれた。

「よかった。じゃあ……どうかな? 今から、一時間十五分後で」
〔それなら準備が出来ますね。でも、そうだと、数斗さんは?〕
「俺はすぐに出かけられるよ」

 すぐにでも着替えて家を飛び出せる。と思ったが……軽く掃除しないと。
 別に散らかってはいないけれど、軽く掃除機をかけたい。

〔あの、数斗さん。家具ってどんなものがあります? 今、ソファーですよね?〕
「あ、うん。俺のリビングは……今、見せるよ」

 念のために肉眼で汚れていないかどうかを確認したあとに、後ろのカメラを切り替えて、リビングを移した。
 短い脚のテーブル。ソファー。テレビ。

〔わぁ、カウンターキッチンですか?〕
「うん、そうだよ。どして?」
〔とっても綺麗ですね。私のアパートとは大違い〕
「見せてくれないの?」
〔んー、だめです。ごちゃごちゃと散らかっているので。あの、クッションを持ってっていいですか?〕
「クッション?」
〔はい。タブレットと足の間に入れて描いたりするんです〕

 キッパリと、七羽ちゃんの妹と共有している部屋を見せることを拒んだ。……残念。
 ひょいっと、七羽ちゃんは顔の前にクッションを出した。
 シンプルなショッキングピンク色のクッション。
 それを聞いて、俺は昨日ぬいぐるみを買ってあげようと思ったことを思い出す。車に乗る時に抱き締める癖のある七羽ちゃんのために、抱き心地のいいぬいぐるみを買っておこうと。

「抱き心地いいの?」
〔いえ、普通です〕
「普通なんだ」

 きっぱりと言い退ける七羽ちゃん。

〔前に買ったソファーベッドについていたクッションです。使い古しているだけあって、しっくりはしますよ〕
「ふふ、そっか。いいよ。このソファーで描けそう? それともカウンター?」
〔テレビで、映画を観るんですよね?〕
「……うん。じゃあ、一緒にソファーで」

 コクコク、と頷く七羽ちゃんは、俺とこのソファーに並んで座ってくれるらしい。
 口元が緩む。
 ……抱き心地のいいクッションかぬいぐるみは、絶対買う。
 ……連れて来るついでに、買っておこうか。

「飲み物を買ったり、お菓子を買ったり……それくらいでいいかな?」
〔そうですね……はい。じゃあ、準備します〕
「うん。じゃあ、迎えに行くね」
〔お願いします〕
「あとでね、七羽ちゃん」

 名残惜しいままに、電話を切った。
 もう一度、ガッツポーズしたが、早く着替えて、手早く掃除をしないと。

 七羽ちゃんが来てくれる部屋を見回して、ドキドキと胸を高鳴らせた。


 【七羽ちゃんを家に呼んじゃった】

 初めて想い人を家に招く初めての恋煩いで本命童貞状態からのメッセージに、親友は。

 【手を出したら、絶交な。警察突き出すから】

 そう送ってきたから、苦笑を零す。
 次には。

 【頑張れよ】

 と、励ましのメッセージを送ってくれた。


 
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