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お試しの居場所編(前)
35 酷い思い込みの侮辱。(真樹視点)(前半)
しおりを挟む花の金曜日。
おれが提案したオールナイトでのカラオケをする約束を実現。
七羽ちゃんが住んでいる街は、結構大きいけれど、全然来たことなかった。
だから、新鮮だと見慣れない街を眺めたあと、到着したカラオケ店の駐車場で七羽ちゃんの友だちを紹介してもらう。
七羽ちゃんが仲介を頑張って、仕切ってくれた。
不慣れだとは言っていたけれど、気配り上手だから、問題ないと思う。
新一からリクエストを押し付けられて、トップバッターで歌うことになった七羽ちゃんを見て、おれもリクエストすることを忘れていたことに気付く。
新一が七羽ちゃんの声ならピッタリって言っていた曲は、本当にピッタリだった。
やっぱ、歌声まで可愛い~! 上手いしね!
歌い終わって、パチパチと拍手したあと、七羽ちゃんの方に身を乗り出して、リクエスト曲を伝えたけれど、知らないと苦笑されてしまった。
クッ! 前もって、教えて頼めばよかった……! 残念。また次回に頼もう……。
七羽ちゃんは、葵ちゃんにべったり。本当に好きなんだなぁ。肩くっ付く距離じゃん。
ニコニコして、嬉しそうだ。誘ってもらってよかったな。
反対の隣にいる数斗さんの方は、嫉妬気味に見える。
七羽ちゃんの友だちには、ただの友だちだって紹介されたから、お試しの恋人だってことは内緒。
ちゃんと気持ち隠せるのかよ、と新一と一緒にからかったけど…………隠せないな? うん! 七羽ちゃんを、見つめすぎ!
まぁ、七羽ちゃんが変な勘繰りはやめてくれって言ったし、数斗さんの片想いってことだけなら、バレてもいいっか。
七羽ちゃんに葵ちゃんの恋人として、おまけでついてくるとしか思われていない先輩は、陽気なヤンキにーちゃんって感じ。一個年上だけど、啓二くんって呼ぶことにした。
ノリもいいし、隣に座る啓二くんと、ぺちゃくちゃ話している間に、一週目。
「ドリンク、おかわり取ってくるけど、どうするー? お酒に切り替える?」
「飲み放題だし、おかわりしておこ。おれも行く」
「じゃあ、啓二くんとおれでいってきまーす」
トレイを持って、啓二くんと部屋を出る前に、七羽ちゃんがぎこちない笑みを浮かべて、心配そうな目をしていた気がする。
ちょっとだけ、引っかかっただけれど、啓二くんと廊下を歩く。
「真樹クンは、酒ってガンガン飲むタイプ?」
「ん~やけ酒の時ぐらいだけですよ。元カノに浮気された時に、ひっどい二日酔いに苦しみましたんで、あれはこりごりですね~。あ、聞きましたよ。七羽ちゃん達に、お酒の限界を教えるためにラブホで朝まで飲み明かしたんですって?」
ちょっと聞いてみたかったことなんだよな。なんでラブホに連れて行ったのか。下心は本当になかったのか。
お酒の話ついでに、探ってみることにした。
「ナナのヤツ、そんな話したんか」
「そのおかげで、ちゃんと酒に呑まれない飲み方を覚えられたみたいっすよ。遊園地のあと、飲み屋で飲んだ時に聞きました。相当苦しんだみたいですね、七羽ちゃん達」
「初めてだからしゃーないしゃーない」
けらりと笑う啓二くん。
初めてならもっと優しい方法でやればよかったのに、とは思うけれど、一理あるのでおれも笑っておく。
「でも、ラブホに三人も女の子連れて、よく入れましたね~。女子会に、男一人特別参加って思われたんすか?」
「かもな。でも期待してたんだよなぁ~」
「うわ、下心あったんすか。仕方ないっすね~男ですから」
まぁ、やっぱ、全く下心を持たないわけないか。ラブホに女の子と、だもんなぁ。しかも、可愛い。
淡い期待だってするよなぁ。冗談で笑っているなら、許容範囲だ。この先輩、マジ無害。
「いや、ナナが本性見せてくれること。もう二十歳だし、猫被りもやめてくれると思ったんだけど。葵の前では、無邪気ぶっておきたいみたいだな」
「――――なんて?」
カタン、とドリンクバーの台にトレイを置いて、意味のわからない言葉を聞き返す。
本性? 猫被り? なんの話だ?
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