心が読める私に一目惚れした彼の溺愛はややヤンデレ気味です。

三月べに

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お試しの居場所編(後)

 心からの感謝を言ういい子。(新一視点) (後半)

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「二回告白してフラれたってこと? そんなに好きだったの? どんな奴?」
「サッカー部のイケメン生徒会長です」
「クソモテる奴じゃん」

 真樹。そんな露骨にひがむな。

「そうなんですよぉ。長くなりますけど、聞きます?」
「また短いんじゃないのか?」
「……どうでしょ? あれは、私が中学に入学した日です」
「始めた……」

 うとうとと目を閉じたり開いているナナハネは、抱き締めているクッションに顎を置きながら、話し始めた。
 聞くとはまだ言ってないんだが……まぁ、いいが。

「母が保護者が集まる時間と間違えて、私は遅刻してとっくに新入生が集まって席についたクラスには行ったんです。めっちゃ視線を集めてしまって恥ずかしかったんですけど……その中の一人、男子生徒と目が合って、そのまま見つめ合ってしまったんです」
「やだ、うわあ。青春の始まり」
「ですよね? そう思いますよね?」
「うんうん。で?」

 遅れて登場って……少女漫画のヒロインか。

 盛り上がるのはいいけど……それ、数斗は聞いた話か? 先に聞いていい話か、これ?
 絶対に聞いてない、よな……?

「そのあとも、二学期までは友だちとして親しくなっていったというか、そこそこ仲良く喋ってたんですよね。好きだな~って自覚していった頃です。同じクラスメイトの女の子と二人でラクガキして遊んでいた休み時間。彼女が描いた人気少年漫画の主人公を描いたんですよ。めっちゃ上手くて、原作にもそっくりで。私には無理だな~って感心してたら、彼が”上手いじゃん”って覗き込んで褒めたんです」
「えっ……そっちで芽生えちゃった?」
「いえ。何故か、彼女の方が沈黙しちゃって。私が描いたわけじゃないので、私も言葉に迷っちゃって、好きだったですし、ドキドキしてどうしていいかわからないうちに……彼が不機嫌そうに離れちゃったんですよね。無視されたとでも思ったんでしょうか。それから冷たくなっちゃって」

 しょぼんとするナナハネは、顔を俯かせる。

「あ~、あれか? 思春期の男の子として、女子二人に無視されたと思って、実は傷付いたとか?」
「そうなんでしょうか……とりあえず、それでも好きだったんで、バレンタインデーに本命チョコを渡したんです」
「チョコ! バレンタインチョコ!」
「めちゃくちゃ不機嫌顔でした」
「ワガママだな!? 七羽ちゃんほどの可愛い子にチョコもらっておいて!?」
「声、落とせよ。数斗に聞かれるぞ」

 てか、数斗。長すぎないか? 大丈夫か、アイツ……。
 真樹も口を押えて、首を捻ってバスルームの方を見た。

 その前に、数斗がこの話を知っているかどうか、だよな。

「あ、秘密でお願いします。この運命感じたみたいな話したら、数斗さんの嫉妬が……」
「感じるのか? これをおれ達が知っている方が、嫉妬するだろうが」
「いいんですよ……林間学校のハイテンションなノリでまた告白して、嫌な顔をされて断られた、こんなバカな失敗恋愛。もう少女漫画脳で暴走してただけの恋愛未満な失敗談。今しか話しません。あと、数斗さんなら、ドライヤーしているところです」

 げんなりしているナナハネは、深夜テンションのノリで、自分の恥ずかしい経験を暴露しているらしい。
 いや、それなら、数斗にも教えてやれば……。
 ん? なんでドライヤーしてるってわかるんだ? 一番バスルームに近い位置にいても、そんなの誤差だろ。聞こえないけど。

 すると、ナナハネが振り返った。ほぼ同時に、数斗が出てくる。

「あ、七羽ちゃん、起きたんだね。ねぇ、ヘアーオイルとか持って来てないかな?」
「はい。ありますよ、どうぞ」

 ナニしてきたくせに、平然と微笑む数斗は、タオルで頭をごしごしと拭いながら、やってきた。
 まだ髪が濡れてるな……ドライヤーの途中で来たのか?

 返事をしたナナハネが、バックからポーチを取り出して、ヘアーオイルらしいボトルを数斗に渡そうと伸ばす。

「ん。つけてくれる?」
「えっ」
「お願い」

 背凭れを挟んで、数斗はしゃがんで自分の頭を差し出した。
 戸惑うナナハネがこちらに助けを求めるみたいに視線をやるけれど、今の恋愛話をしないってなら、助けてやらねー。知らん顔。

 ナナハネは観念したみたいに、蓋を外して、ポンプで出したオイルを掌に広げてから、数斗のまだ濡れた髪に塗り始めた。
 数斗は嬉しそうに目を細めて笑みを零す。ナナハネに撫でられるように触られて、気持ちよさげだ。

「いい匂い。オレンジかな?」
「ええ、はい。これは、スイートオレンジです」
「七羽ちゃんは、フルーツ系の匂いが好きだね。いつもそう?」
「そうですね……ローズ系だとキツイ感じで、どうしても甘いミックスベリー系を選んじゃいます。このシリーズにも、ミックスベリー系の匂いの物がありますが、かなりしっとりする効果があって、保湿が十分すぎるのでベタつくんですよね。これだと、ごわつきなく、サラッとする効果なんでちょうどよくて」

 照れ照れしつつも、ナナハネは顔を向かい合わせながら、数斗の髪に丁寧に塗り付ける。
 おれは堪えているが、真樹はニヨニヨしていた。

 数斗がナナハネのヘアーオイルの効果を確かめようとしたのか、手を伸ばしたが、ナナハネはバッと身を引いて離れる。

「わ、私のは、もう効果切れですので」

 まぁ、それもそうだな。一日シャワー浴びてないんだから。
 数斗。しょげるな。

「数斗も聞くか? ナナハネの恋愛談」
「七羽ちゃんの? 恋愛談って?」

 この際だから、数斗を仲間外れにせず、聞かせてやればいい。
 ナナハネに、むくれ顔で恨めしげにジト目を送られたが、また知らん顔をしてやった。


 
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