心が読める私に一目惚れした彼の溺愛はややヤンデレ気味です。

三月べに

文字の大きさ
75 / 103
お試しの居場所編(後)

 今の想いでいいじゃないか。(新一視点) (後半)

しおりを挟む


「あ。その話をしてる時も、手に頬擦りしてくれたんだ…………俺がときめている仕草、学習してる?」
「そうか。あの天然が、意識的にお前を翻弄するのも時間の問題か」
「俺の心臓持つの? それ」
「知るか」

 自分の両手を呆然と見る数斗も、睡魔にやられてんな。

「お前と向き合ってんだから、喜ぶことなら覚えるんじゃないのか? 頑張り中だしな」
「……俺の理性が」
「部屋で二人きりはなるべく避けて、節度守れ。でも別に頑張らなくても、心なら込めてるよな? 謝罪だって、感謝だって……感謝が一番…………」

 ナナハネが頑張りすぎて、数斗が押し倒さないように、お前が頑張って自制してろ。
 でも、頑張りなんて、必要あるのか。

 さっきの”好き”だって、数斗自身に向けられた想いだって、おれ達にすら伝わる。
 ”他の女”なら、数斗の甘い微笑で、”好き”は”その顔が好き”と言っているようにしか思えなかったはずだから。

 チラリ、とこの場を離れるタイミングを見失っている女性従業員に目をやる。
 カラオケ中、無事を確認してくる度に、感謝を伝えられた人。

「あの子。悪い友だちと縁切ったところなんで、連絡がきたら、出来ればいい友だちとして、仲良くしてくれるとありがたいです」
「あ、そうでした。よければ、七羽ちゃんをよろしくお願いします」
「いい子なのは保証しますんで~」
「はい。わたしも彼女と仲良くしていただけたら幸いです。では、失礼します」

 おれは愛想をよくすることなく会釈だけをして、連絡先を渡した女性従業員に伝えておく。
 おれ達の外見のよさに釣られて、ナナハネを繋がりに利用するんじゃないかって、下心が見えないかと見定める。
 でも、杞憂のようで、あくまで接客スマイルを保つ彼女は、ナナハネと仲良くしたいという気持ちを伝えると、頭を下げて先に廊下を歩いた。
 今回は、ナナハネの人の見る目が、発揮されたみたいだな。

「あ、ヤベ。ナナハネの恋愛談。途中で終わった」

 おれ達もカラオケルームに仮眠しに戻ろうと歩き出したところで、思い出す。
 見事にナナハネの思惑通りに、恋愛談を中途半端に終わらせられた。いや、あれで全部、なのか?

「それは、なんの話?」
「イケメン生徒会長に、二度フラれた話ぃ~」
「は? 二度?」
「ん~。なんか青春の始まりみたいに、入学式の日に見つめ合っちゃったから、運命的な感じ~な話は、数斗が嫉妬するだろうから言いたくないって言ってたぁああっておれが言っちゃってるぅ~」

 盛大に、口滑りすぎだろ。顔を覆っても遅いぞ、真樹。

「数斗。落ち着け。お前の嫉妬も感じ取ってるみたいだから、抑えろよな」
「え。七羽ちゃんがそう言ったの?」

 めちゃくちゃ負の雰囲気を放っている数斗の肩を叩いてやる。
 怒りかなんだかわからないけど、そのイケメン生徒会長に、今嫉妬したのは、おれでもわかるぞ。

「いや、はっきりとは言ってなかったけど。多分、イラストレーターを副業感覚で始めさせて、今の職場辞めさせて、最終的には本業として転職させたいって気持ちも、見抜かれてるかも」
「えっ? バレちゃったのっ?」
「ん。とりあえず、挑戦させてくれるお膳立てに感謝された」

 嫌がっているとは思えないが、かと言って、前向きで積極的な姿勢とは思えない。微妙な様子だけど。

「こっちの心配も読み取ってくれて、まぁ、ナナハネのためを考えて提案したって理解してるから、試しにやってみるってことにした感じだな。いつ完成させるかわからないけど、おれのアイコンから、描いてくれるって」
「「…………」」
「んだよ。お前らはもう、お気に入りのをアイコンにしてんだろ」

 ”ずるい”とデカデカと顔に書いている数斗と真樹は、もうナナハネの許可を得て、お気に入りにイラストをアイコンにしている。
 まぁ、リクエストして描いてもらうのは、ずるいと思われるのは当然だが。
 ……数斗。視線、ウザすぎ。やめろ。

「お前のそういう感情もバレてるかもな」
「……そんなに?」
「お試し期間なんて建前だけで、自分を逃がさないと決めてる愛が激重だってことも、薄々気付いてるかもな?」
「…………それでも、お試し恋人関係に頷いてくれたってことは、あとは身を委ねてくれるまで、俺がしっかり放さなければいいってことだろ?」
「ナナハネは、ヤンデレに捕まったんだな」

 ナナハネは、このヤンデレの罠だとわかっていながら、ハマったのか……?
 逃す気ないからな、マジで。

「え? 数斗は、ヤンデレなん? ヤンデレってなんだっけ?」
「病的に愛が重いって点が、ヤンデレに当てはまるんじゃないか」
「愛が重いって…………俺はただ、運命の愛で、全身全霊で愛そうとしてるだけで……。で。さっきの運命的な感じの恋愛談を詳しく」
「ひえぇっ。なんでおれにぃ?」

 数斗が真樹と肩を組んで、話を聞き出し始めた。

 運命感じた話……聞かせるべきじゃなかったな。ナナハネが嫌がった通り。

 自分がナナハネの運命の相手だって、数斗が言ったのか? それとも、またナナハネが察したとか?
 数斗の愛の強さに、戸惑っているんじゃないのか。
 それで、それくらいの強さで好きって返事が出来なくて、反省したのかもな。

 比べなくても、今の想いを伝えればいいじゃん。

 ナナハネは、想いを込めた言葉を言えるんだからさ。


 くすぐったくなった感謝の心を込めた声も。
 ムズムズするほどの嬉しそうな、はにかんだ顔も。
 思い出しては、つくづく思う。

 ホント。可愛すぎて、愛でたくなる妹分だよな。

 戻った部屋のソファーに身体を沈めて、アラームが鳴るまで、眠りに落ちた。


  
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ旦那さまに溺愛されてるけど思い出せない

斧名田マニマニ
恋愛
待って待って、どういうこと。 襲い掛かってきた超絶美形が、これから僕たち新婚初夜だよとかいうけれど、全く覚えてない……! この人本当に旦那さま? って疑ってたら、なんか病みはじめちゃった……!

私は既にフラれましたので。

椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…? ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた

夏菜しの
恋愛
 幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。  彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。  そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。  彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。  いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。  のらりくらりと躱すがもう限界。  いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。  彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。  これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?  エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。

単純に婚約破棄したかっただけなのに、生まれた時から外堀埋められてたって話する?

甘寧
恋愛
婚約破棄したい令嬢が、実は溺愛されていたというテンプレのようなお話です。 ……作者がただ単に糸目、関西弁男子を書きたかっただけなんです。 ※不定期更新です。

最高魔導師の重すぎる愛の結末

甘寧
恋愛
私、ステフィ・フェルスターの仕事は街の中央にある魔術協会の事務員。 いつもの様に出勤すると、私の席がなかった。 呆然とする私に上司であるジンドルフに尋ねると私は昇進し自分の直属の部下になったと言う。 このジンドルフと言う男は、結婚したい男不動のNO.1。 銀色の長髪を後ろに縛り、黒のローブを纏ったその男は微笑むだけで女性を虜にするほど色気がある。 ジンドルフに会いたいが為に、用もないのに魔術協会に来る女性多数。 でも、皆は気づいて無いみたいだけど、あの男、なんか闇を秘めている気がする…… その感は残念ならが当たることになる。 何十年にも渡りストーカーしていた最高魔導師と捕まってしまった可哀想な部下のお話。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります 番外編<悪女の娘>

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
私の母は実母を陥れた悪女でした <モンタナ事件から18年後の世界の物語> 私の名前はアンジェリカ・レスタ― 18歳。判事の父と秘書を務める母ライザは何故か悪女と呼ばれている。その謎を探るために、時折どこかへ出かける母の秘密を探る為に、たどり着いた私は衝撃の事実を目の当たりにする事に―! ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

処理中です...