心が読める私に一目惚れした彼の溺愛はややヤンデレ気味です。

三月べに

文字の大きさ
95 / 103
お試しの居場所編(後)

59 新鮮な楽しいことを楽しむ。(前半)

しおりを挟む


 数斗さんが隣に立つと、代わりに切った食材を炒めてくれた。

 私が全部やる、と言いたいところだけど、数斗さんが『一緒に料理……嬉しい』と喜びを噛み締めていたので、やめてとは言えない。

「先程の話ですけど……多分、シンデレラになりたかったのでは?」
「「シンデレラ?」」

 なんの話かと、数斗さんと新一さんは、わからないと怪訝な顔をした。
 さっきの女性の話ですよ。

「普通の女性が、王子様と結ばれるシンデレラストーリー。数斗さんが御曹司だって知っていたなら、玉の輿狙いもあって……夢見た感じなんじゃないですか? イケメン、高学歴、御曹司。気があるとわかって、逃せないチャンスだと飛びついて、犯罪までして暴走」
「……とんだシンデレラだね」
「お前、犯罪プロファイラーだったっけ?」
「あははっ。犯罪捜査ドラマも好きです」
「観てるモン、幅広すぎだろ」

 新一さんが犯罪プロファイラーなんて言い出すから、私も噴き出して笑ってしまう。

「半日で仕事終わると、ちょうど海外の犯罪捜査ドラマがやってましたもん」と、一応説明しておく。

「犯罪プロファイラーっぽく言えば……妄想型ストーカー?」
「ドヤ顔すんな」

 新一さんに向かって、キリッと言ってみたけれど、けらりと笑った。

「私がイケメン生徒会長に二回も告白したみたいなのの……酷いヤツって感じでは?」
「おっと。ナナハネも、犯罪者予備軍?」
「気を付けてください。今、刃物持ってますよ~」
「この冗談、やめておこ?」

 おっと。ストーカー被害者の数斗さんには、よくない話題か。

『七羽ちゃんが、あんなのと同類だなんて。笑えない』

 ……そこなんだ。数斗さんのブレなさよ……。

 煮込む作業に入ったので、タブレットでまた物件探し。

「数斗さん。お気に入り登録した物件……なんで、この周辺じゃないですか?」
「……七羽ちゃんの家に近い方がいいと思って」
「職場から離れちゃうじゃないですか。新一さん達の家とも離れますし」
「そんなに離れてないよ。その辺なら、車でも10分ぐらいの差だし、駅が近いなら、あんまり変わらない」

 じとりと見ても、数斗さんは肩を竦めるだけ。

「今日みたいに送る時も、昨日みたいに会いに行く時も、時間が短縮出来るでしょ?」
『すぐに会いに行ける家なら、居座る時間も伸びるし、さらには七羽ちゃん好みになって心地いい家。最高』

 ニッコニコな数斗さん。
 だから、自分の家だって、忘れてません?
 助けを求めるように新一さんを見れば、おかしそうにお腹を押さえていて、会話に入ろうとしない。

「……あと、2LDKとは? 数斗さんって、荷物多かったですか?」
『部屋二つ。同棲する気かよ』
「あー、うん。増えるかも?」
『念のために部屋が余分にあればいいかなぁって。急遽、部屋に泊まることになったら、とか』

 新一さんは、表情を隠すようにそっぽを向く。
 数斗さんの方は、まだ同棲とかは考えていなくて……まぁ、視野に入れているけれども。一先ず、物置きにして、お泊り用に使えるようにしたいとか考えている。

 却下です。
 笑顔で却下です!

「数斗さんは、シンプルを好むのですから、荷物は多くないでしょ? 一人暮らしなら、普通、ここみたいに1LDKですよね」
『おい、外堀埋めようってがっつきすぎて、勘付かれてるぞ。やめとけやめとけ』
『しょぼーん……』

 や、やめてくださいっ。数斗さん、しょーぼん、また言うのやめて。笑っちゃう。

 新一さんのストップの目配せを受けて、数斗さんはしょぼんと沈む。

 煮込む時間が終わったので、ルーを投入。

「美味そうな匂いだな……」
「コーンクリームシチューは、初めて?」
「ああ。いつもは……普通のシチュー? とにかく、コーンクリームは初めてだな」
「普通というと、ホワイトクリームですっけ? あとチーズとか……私はこのコーンクリームシチューの一択です」
「まぁ、美味そうだよな」
「そうだね」

 そこで、ピンポーンと訪問者の知らせが鳴る。

「七羽ちゃん、大丈夫!? 何この匂い、美味そう!!」

 新一さんがドアを開けば、入ってきた真樹さんの声が上がった。

「お疲れ様です。私は、大丈夫ですよ。真樹さんも、コーンクリームシチューは初めてで?」
「ん~、多分、食べた記憶にないから。でも、美味そう! あ、お皿も、スプーンも買ったよ」
「ん。早かったな。アイスは、冷凍庫に入れとくぞ」

 新一さんと真樹さん、数斗さんも手分けして、食器と飲み物やアイスを取り出してはしまう。

 ……なんか、楽しい。

「何か、面白いの?」
『笑ってる?』

 数斗さんが、鍋の中をかき混ぜている私が、口元を緩ませていることに気付いた。

「いえ……。友だちとこうして食事の準備するの、初めてで。楽しいなぁって」

 普通の家のキッチンで、料理の準備を友だちと手分けする。
 新鮮で楽しい。

「初めて? あー、そうだった。友だちは一人暮らしとかしてなくて、こういうことはなかったんだね」
「楽しいなら、何より」
「確かに! 外でワイワイもいいけど、家でこうしてワイワイもいいよな! 外でバーベキューとかと違うしね! おれも楽しぃー」

 数斗さん達は、心からの言葉を口にする。

『楽しいね』と、数斗さんは優しく見つめて微笑む。
『まぁ、楽しいわな』と、新一さんも笑みだ。
『ホント、楽しぃー』と、真樹さんもへにゃーっと笑う。

 口元も緩む。聞こえてくる声は、とても、心地がいいのだから。


 新一さんの家には、テーブルはテレビの前の足の短いテーブルのみ。
 そこを囲って、コーンの甘さが香るシチューを食べた。
 三人とも、気に入ってくれて、ホッとする。

「数斗は、天使守り隊の隊長失格だと思うんだよね……返上して?」
「いつの間にか、数斗さんに確定していたんですね……」
「そうだ、七羽ちゃん。不動産の都合次第だけど」
「無視!?」

 真樹さんをスルーして、数斗さんは私に声をかけた。

「物件の見学に行かない? 明後日、休みでしょ?」
「休みですけど……数斗さんは違いますよね?」
「俺は事件の被害者。しかも、家が事件現場で、犯人は同僚。休みはもらえるよ?」
『七羽ちゃんと過ごせる時間が確保出来たけど、七羽ちゃんが事件に巻き込まれたから、素直に喜べない』
「それもそうですね。え? 物件の見学? 私もいいんですか?」

 事件が家で起きたと言うのに、休ませてもらえないのは、問題大アリの職場だ。休みがもらえてよかったですね、とか言いそうになったけれど、誘われた内容に意識が行く。

『気付くの遅(おそ)』と、新一さんに心の中でツッコまれた。
 休みに気が行ってたんですぅー。

「うん。七羽ちゃんに家具も選んでもらいたいし、先に見ておいた方が、家具選びも捗るんじゃない?」
「お部屋探し……! いいですね!」
『見事に、餌に食いついた……』
『え? なんか同棲カップルの新居探し???』

 はい。釣られましたけど、何か? 新一さん。
 真樹さんが言う通り、もうカップルの新居探しになるだろうけれど、選ぶのは一人暮らしの部屋なんで。
 数斗さんの一人暮らしの部屋を決めるんです。ここ、強調。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ旦那さまに溺愛されてるけど思い出せない

斧名田マニマニ
恋愛
待って待って、どういうこと。 襲い掛かってきた超絶美形が、これから僕たち新婚初夜だよとかいうけれど、全く覚えてない……! この人本当に旦那さま? って疑ってたら、なんか病みはじめちゃった……!

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

私は既にフラれましたので。

椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…? ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた

夏菜しの
恋愛
 幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。  彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。  そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。  彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。  いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。  のらりくらりと躱すがもう限界。  いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。  彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。  これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?  エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。

最高魔導師の重すぎる愛の結末

甘寧
恋愛
私、ステフィ・フェルスターの仕事は街の中央にある魔術協会の事務員。 いつもの様に出勤すると、私の席がなかった。 呆然とする私に上司であるジンドルフに尋ねると私は昇進し自分の直属の部下になったと言う。 このジンドルフと言う男は、結婚したい男不動のNO.1。 銀色の長髪を後ろに縛り、黒のローブを纏ったその男は微笑むだけで女性を虜にするほど色気がある。 ジンドルフに会いたいが為に、用もないのに魔術協会に来る女性多数。 でも、皆は気づいて無いみたいだけど、あの男、なんか闇を秘めている気がする…… その感は残念ならが当たることになる。 何十年にも渡りストーカーしていた最高魔導師と捕まってしまった可哀想な部下のお話。

単純に婚約破棄したかっただけなのに、生まれた時から外堀埋められてたって話する?

甘寧
恋愛
婚約破棄したい令嬢が、実は溺愛されていたというテンプレのようなお話です。 ……作者がただ単に糸目、関西弁男子を書きたかっただけなんです。 ※不定期更新です。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

処理中です...