大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

文字の大きさ
193 / 474
日常編⑬

第341話、たまにはシルメリアさんとのんびり釣りを

しおりを挟む
 デーモンオーガの皆さんが休日に入り、竜騎士たちの野外演習も本格化した。
 オーベルシュタイン領土の強力な魔獣相手に集団の連携訓練、そして狩った魔獣は竜騎士たちが解体、村の巨大冷蔵庫で保管している。
 もちろん、シェリーも参加している。
 この村に来た頃とは別格の強さだ。得意の氷魔法も強力になり、かつて自分に毒を食らわせた大蛇と同種の奴を見つけた時なんて、あの頃の復讐と言わんばかりに暴れたらしいからな。
 というわけで、現在村は竜騎士たちがいない。村の護衛にさらサラマンダー族が入っていた。
 竜騎士たちが怪我をする可能性もあるので、俺とフレキくんとエンジュは薬院に詰めている。
 とはいっても、この数日怪我人はゼロ……竜騎士たちがどれほど強いかよくわかる。
 
「あー……ヒマやね」
「ヒマなのはいいことじゃないか」
「フレキぃ~……ウチ、眠い」
「だめ。ちゃんと仕事しなきゃ。ほら、一緒に病歴記録を整理しようよ」

 フレキくんとエンジュには住人の病歴記録を整理してもらっている。
 フレキくんは真面目にやってるけど、エンジュは飽きたのかフレキくんに抱き着いたり胸を押し付けて困らせている。フレキくんも慣れてるのか、苦笑して引き剥がしている……なんか熟練夫婦みたいだな。
 エンジュがだれているので休憩することにした。

「師匠」
「ん?」
「そういえば師匠、最近休んでないですよね? ここはボクとエンジュに任せて、何日かお休みしたらどうですか?」
「え、そうなん? だったらウチも」
「エンジュはダメ。昨日も一昨日も休んでただろ。その間、師匠が一人で薬院に詰めていたんだから」

 まぁ確かに。フレキくんは人狼族の村に帰ってたからな。
 その間、俺とエンジュ……正確には俺一人で怪我人とか治療してた。エンジュは休み。

「師匠、明日と明後日はボクが薬院にいますので、ゆっくり休んでください」
「フレキくん……うん、じゃあそうさせてもらうよ」
「え、じゃあウチとフレキは二人っきり!!」
「邪魔者で悪かったな……」

 ちなみに、マカミちゃんも来たので三人っきりだ。

 ◇◇◇◇◇◇

 というわけで、俺は休みになった。
 たまにはのんびり釣りでもと思い、エルミナの釣り道具を借りに部屋に向かう途中。

「お疲れ様です。ご主人様」
「あ、シルメリアさん。あの、エルミナいます?」
「はい。お部屋に」
「ありがとう」

 シルメリアさんだ。
 銀猫たちは交代で休みを取ってるらしいけど……シルメリアさんが休んでいるところは見たことない。
 そういえば、シルメリアさんと何かをやるってことがないな……よし。

「あの、シルメリアさん」
「はい?」
「明日、ちょっと出かけませんか?」
「……え?」
「いえ。釣りに行こうと思いまして。釣った魚を調理する人が欲しいんです」
「私、ですか?」
「はい」

 他の銀猫を連れて行くことは何度かあったけど、シルメリアさんはほとんどない。
 ちょっと卑怯だが、こう言えば断らないのが銀猫族だ。

「わかりました。ご主人様のお供を務めさせていただきます」
「うん。じゃあ明日」

 というわけで、エルミナから釣り道具を借りて釣りへ。

 ◇◇◇◇◇◇

「よーし、釣るわよ!!」
「にゃあ!!」

 翌日。エルミナとミュアちゃん、シルメリアさんと俺の四人でアスレチックガーデンへ。
 アスレチックではハイエルフたちが遊んでいる。俺たちは桟橋で釣りをしていた。
 ミュアちゃんはエルミナと一緒に釣りをして、俺はシルメリアさんと一緒にバーベキューコンロの準備だ。釣りはもう少し後で。

「ご主人様、準備ができました」
「こっちもできたよ。じゃあ釣りをしようか」
「はい、ご主人様」

 シルメリアさん、表情が柔らかい気がする。
 少しは気を抜いて休んでくれるといいけどな。エルミナとミュアちゃんなんて釣りに夢中だし。

「にゃあ!! エルミナ、竿ひいてるー」
「お、よーしそのままゆっくり……」
「にゃおーっ!!」
「うっぐぇぇっ!?」

 ミュアちゃん、力任せに竿を引いた……するとデカい魚がざばーっと釣り上がる。いやいやいや、ミュアちゃんよりもデカい魚を一本釣りかよ? しかも釣り上げた魚がエルミナを直撃、そのまま押しつぶされた。

「ちょ、ミュア……たすけて」
「にゃう。ほい」
「し、死ぬかと思った……ってかデカいわね」
「にゃあ。いっぱい食べれる!」

 なんか楽しそうだ。俺たちも参加しよう。

 ◇◇◇◇◇◇

 俺とシルメリアさんは、エルミナたちから少し離れた場所で、隣同士に座った。
 騒がしいエルミナたちとは違い、会話なくのんびりと釣り糸を垂らす。

「…………」
「…………」
「…………」
「……ご主人様、お茶でも」
「あ、どうも」

 シルメリアさんは釣竿を支え棒に引っ掛け、ポットから緑茶を注いでくれた。
 チラリとシルメリアさんを見る。
 肩にかかるくらいの銀髪、大きくクリっとした銀目、小顔でスタイルもよく、ネコミミが良く似合う大人の女性って感じだ。出会ってそこそこ経つけど、シルメリアさんは変わらない。

「ご主人様」
「え、ああいや、その……なんでもないです」
「いえ、竿が引いてます」
「え」

 確かに竿が引いていた。
 しかも引きが強い。両手で摑み踏ん張る……が、やばい。

「っぐ……重い!!」
「ご主人様、失礼します」
「え」

 なんと、シルメリアさんが俺の背中に抱きついて脇から手を伸ばし、竿を摑んだ。
 やばいやばい。柔らかい膨らみが背中に当たって気持ちいい!!

「……っふ!!」

 シルメリアさんが力を入れると、竿が一気に軽くなった。
 そして、ミュアちゃんが釣ったのと同じ巨大魚が釣れた。いやいや、この湖ってこんなのしか釣れないのかよ。

「ふぅ……失礼しましたご主人様」
「い、いえ……柔らかかったです」
「はい?」
「い、いや。それより、そろそろお昼にしよう。あっちも釣れてるみたいだし」

 ミュアちゃんたちもかなり釣れてるようだ。
 そろそろお昼の準備をしなくちゃね。

「では、食事の支度をします」
「は、はい」

 結局、大量に釣った魚は俺たちでは食べきれず、アスレチックにいたハイエルフたちも巻き込んでバーベキューとなった。
 シルメリアさんの手伝いをしたけど、けっこう忙しかったから休めたとは言えないかも。
 今度は二人きりで行こう……。
しおりを挟む
感想 1,145

あなたにおすすめの小説

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。