大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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バーでカクテルを

第390話、カクテルは美味しい

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 さて、新婚旅行が終わっていつもの日常が戻ってきた。
 ヒュンケル兄にお土産を送ると、お返しとばかりに大量の酒……正確にはリキュールが送られてきた。どうも、ビッグバロッグ王国で飲んだカクテルが美味かったという話からいろいろ送ってくれたようだ。
 そういえば以前、村の果物を使ったリキュールでカクテルを作れないか、シェリーと話したことがあった。
 俺はリビングでマンドレイクを抱っこしているシェリーの元へ。

「おーいシェリー、ちょっといいか?」
「ん、どったの?」

 寝ているマンドレイクを撫でているシェリー……手つきが優しいな。

「いやさ、以前にお前、カクテルを作るとか言ってたよな? あれってどうなった?」
「あー……訓練が忙しくてやってない。話自体は引き継いだけど」
「引き継いだ? 誰に?」
「ミリアリア。銀猫の」
「ミリアリアに?」
「うん。ってかお兄ちゃんもやるって言ってたじゃん」
「う……まぁ忙しくて、その」

 以前、果物を使ってリキュールを作った。でも、カクテル造りはそこで終わった。
 シェリーはカクテル造りを銀猫のミリアリアに引き継ぎ、特にかかわっていないらしい。
 俺も全く何もしていないし、どうなったのかな?

「あ、そういえばヒュンケル兄からいろいろ届いたんでしょ?」
「ああ。リキュール各種が山のようにな。それで思い出したんだ」
「ふーん……あ、そうだ。せっかくだし行ってみる? ミリアリアのところ」
「……そうだな。最初にやり始めたの俺たちだし、何か必要なものがあるかも。それに、ヒュンケル兄からもらったリキュール、使ってもらえばいいか」

 というわけで、銀猫ミリアリアのいるところへ。マンドレイクは寝ていたのでソファに置いていく。
 どこにいるかわからないので、シルメリアさんに聞く。
 シルメリアさんは夕飯の仕込みをしていた。

「シルメリアさん、ちょっといいですか?」
「はい、ご主人様」

 お玉を置き、俺に一礼……相変わらず美人でピシッとしてる。
 シェリーが聞いた。

「あのさ、ミリアリアってどこにいるかわかる?」
「ミリアリアですか? 今日は農園にいるはずです」
「農園か。ありがとう」
「……何か御用でしたら私がうかがいますが」
「いや、大丈夫。シルメリアさん、今日の夕飯も楽しみにしてるから。行くぞシェリー」
「うん。じゃあねシルメリア」

 家を出て農園に向かう。
 農園で作業員に指示をしているメージュを捕まえる。

「メージュ、ミリアリアはいるか?」
「ミリアリア? ああ、今日はもう上がったよ。果物をいくつか持ってね」
「そうなのか。じゃあ、銀猫宿舎かな」
「いこ、お兄ちゃん」

 シェリーと散歩しながら銀猫の宿舎へ。
 宿舎のドアをノックすると、銀髪をポニーテールにした銀猫が出てきた。
 彼女がミリアリアだ。エプロンを装備して、何やら甘い香りがする。

「ご主人様、シェリー様。このような場所に何か御用でしょうか?」
「うん。ミリアリアに用があってさ。ちょっと話してもいいか?」
「もちろんです……あ、少し仕込みをしていたので」
「あ、じゃああたしたちも手伝うよ。ね、お兄ちゃん」
「ああ。もちろん。じゃあ入るよ」
「おっじゃまー」
「あ!! そんな、ご主人様方に手伝いなど」

 悪いが話は聞かない。さっさと仕事をしようか。

 ◇◇◇◇◇◇

 仕込みは夕飯の仕込みではなく、なんと酒の仕込みだった。
 果物を使ったリキュール、自家製のウイスキーなど、スライム製の瓶には様々な酒が入っている。
 これには、俺とシェリーも驚いた。

「まさか、一人でずっとお酒作ってたの?」
「はい。いろいろな果物やベリーを使ってお酒を造るのが楽しくて。最近はドワーフの方から頂いたお酒をベースに、いろいろ混ぜて作っています」
「お、おう……想像以上だ」

 キッチンの一角に『ミリアリア用お酒・使用厳禁』って札が貼ってある小さな棚があり、そこに自家製らしきリキュールやお酒がいっぱい並んでいる。
 俺とシェリーは顔を見合わせ、感動していた。

「お兄ちゃん……」
「シェリー……」
「あたし、こんなに頑張ってるミリアリアをほったらかしにして……」
「それは俺もだ……カクテル美味しいって思い付きで始めたのに、途中から忘れて……」
「あの、ご主人様? いったいなにが」
「ミリアリア!!」
「にゃっ!?」

 俺はミリアリアの肩をガシッと掴む。

「お前にプレゼントがある」
「え?」
「ささ、行くぞ。俺の家に」
「え……」
「ふふん。きっと驚くわよー」
「あ、あの? にゃっ!?」

 俺はミリアリアの手を掴み、シェリーはミリアリアの背中を押し、家まで戻った。

 ◇◇◇◇◇◇

 家に戻り、ヒュンケル兄から送られてきた木箱を開ける。
 そこには、大量のリキュールやカクテルに使う道具、『行きつけのバーのマスターから簡単なレシピもらっといた、これで練習しな』っていう手紙も入っていた。
 宝の山を見たように、ミリアリアの目がキラキラ輝く。ネコミミと尻尾もごきげんだ。

「ミリアリア。今日からお前にはカクテル造りを担当してもらう。しっかり練習して、おいしいお酒を出してくれ」
「はい。ありがとうございます、ご主人様。ご主人様のために美味しいお酒を造りたいと思います」
「ねぇお兄ちゃん。カクテルはいいけどどこで作るの? バーみたいな建物があった方がいいんじゃない?」
「それもそうだな……でも、店にすると住人が殺到しそうだ」
「じゃあさ、この家の隣に小さくバーを作ってさ、お兄ちゃん専用にしちゃうとか! あ、もちろんあたしたちも……村長特権ってやつでどう?」
「むぅ……ちょっといいな、それ」
「でしょ!!」
「よし。明日にでもアウグストさんに相談してみるか。ミリアリア、それでいいか?」
「はい。ご主人様の望むままに」
「ありがとう。じゃあ、しばらくはレシピ通りに練習したり、器具に慣れてくれ」
「はい、ご主人様」

 というわけで、個人的なバーを作ることにした。
 翌日、アウグストさんに相談……酒が絡むと面倒なことになる気がする。

「へぇ、バーを作るねぇ……」
「え、ええ。実験ということで、まずは俺の家の敷地内に小さく作ります。ミリアリアもまだ慣れてないし、とりあえず俺が……」
「いいぜ。な~んだ村長、酒が絡むからオレらドワーフが文句言うんじゃねぇかって考えてたのか?」
「そ、そんなことは」
「はーっはっは!! ま、気にすんな。村長の我儘くれぇ聞いてやるからよ。まぁ……たまに飲ませてくれりゃいいぜ?」
「は、はい」

 アウグストさんに尻をバシッと叩かれたが、バーの建築を請け負ってもらった。


 ◇◇◇◇◇◇

 そんなに大きな建物じゃないので、二日で完成した。
 俺の家の隣に、物置よりもやや広い縦長の小屋が建てられた。室内はカウンター席とテーブル席が二つだけのシンプルな造りで、狭い分調度品や小物にめっちゃこだわった。
 カウンターの棚にはリキュールやミリアリアの作った自家製酒が並び、水回りもばっちり。冷蔵庫も設置され、お洒落なスライム製グラスもたくさんあった。
 室内は狭いが、テーブルから明かりまでこだわってある。わざと室内を暗くし、雰囲気を出してある。
 少し寂しいので観葉植物を俺が飾り……ちょっと思いついた。

「やっぱりいい雰囲気の音楽が欲しいな」

 ということで、こんな時は……本をめくる!!


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
〇植物魔術・雰囲気を出したいとき用♪

 【歌う花シンガーフラワー
 この子は歌う花。お願いするとその通りに歌ってくれるわ♪
 いい雰囲気にしたいとき、音楽が欲しいときにどうぞ♪
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 まぁ、あると思ったよ。
 さっそく外で使ってみる。
 植木鉢に土を盛り、その上に魔法を使うと、カラフルな虹色の花が咲いた。
 バーの隅っこに置いてみると、意外と室内にマッチしていた。
 頼めば歌うらしいけど。

「なぁ、バーでお酒を飲むときみたいな雰囲気の歌を頼む」

 言葉が通じるのかわからなかったが、シンガーフラワーから鈴のような音が鳴り響く。音量も低く、聞こうと思えば聞こえるが、会話をすればほとんど聞こえない。肉の付け合わせに出るサラダみたいな音楽だった。
 これはいい。実にピッタリだ。

 こうして、俺の家の隣に小さなバーがオープンした。
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