大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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バーでカクテルを

第391話、バーでお酒を

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「ねぇアシュト、ちょっと飲まない?」
「お、いいね」
 
 ある日の夜。ローレライのお誘いがあったのでお酒を飲むことにした。
 いつもは俺の部屋とかリビングで飲むが、バーができてからよくそこで飲んでいる。
 リビングに新しいドアができたのでそこへ向かうと、明かりを少なくしたおかげでダークな雰囲気を作りだしている渡り廊下へ。そして、渡り廊下の先には装飾の施されたドアがあった。
 ドアの前には『ご主人様の館』とかいう看板が下がってる……この名前、止めてほしいんだけど。

「ミリアリア、いるか?」
「いらっしゃいませ、ご主人様、ローレライ様」

 ドアを開けると、ドアベルがチリンと鳴る。
 店内は薄暗く、【歌う花シンガーフラワー】からクラシックが流れ、メイド服ではない、バーテンダーみたいな服を着た銀猫のミリアリアが、スライム製のグラスを磨いていた。これがまたなんとも似合う。
 カウンターに座ると、おしぼりを出してくれる。

「ご注文はいかがいたしましょうか」
「じゃあ、お任せで」
「私もアシュトと同じもので」
「かしこまりました」

 ミリアリアは嬉しそうに一礼し、各種リキュールとカクテルに使う道具を並べ、冷蔵庫から果物を取り出しカット、シェイカーに各種リキュールを入れてカシャカシャ振り、グラスに注ぐ。そして、カットしたフルーツを浮かべて俺たちの前に出した。

「当店オリジナルカクテル、『ザ・ご主人様』です」
「あら、いい名前ね。それに美味しそう」
「…………俺はけっこう複雑だけど」

 グレープフルーツをメインにしたカクテルだ。
 ローレライと乾杯して飲むと、きつめの酸味の中にまろやかな甘みを感じられる。しかもけっこう酒精が強く、一気に飲むとすぐに酔ってしまいそうだった。
 ミリアリアは、つまみにサシミを出す。これがまたなんとも旨い。

「美味しいわね」
「ああ。静かな雰囲気で飲む酒はいい……」

 エルミナとかは無理だな。あいつは大勢でワイワイ騒ぎながらエールをがぶ飲みするのが好きみたいだし。逆に、ローレライはこういう厳かな雰囲気の中、静かに少人数で飲むのが好きだった。俺はどっちも嫌いじゃないけど、しいて言うならバーで飲むのが好きだ。

「ねぇアシュト。図書館で面白い本を見つけたのだけれど」
「お、どんなのだ?」
「ふふ、ちょっとエッチな恋愛ものよ。興味があるなら貸すわ……というか、読んで欲しいかな?」
「お、おう」

 ローレライ、飲むと色っぽいんだよな。
 酒に強い癖に頬は紅潮し、胸元の空いた服を着てるせいで谷間がめっちゃ見えてる。それに席が隣同士なので距離も近く、胸が俺の二の腕にちょいちょい触れていた。
 うぅ……ローレライのこういうところ、未だに慣れない。色っぽすぎなんだよ。

「え、あー……ミリアリア、甘めの酒ある? お任せで」
「かしこまりました」

 ミリアリアは数種類の果物をカットし、大きめのグラスに酒と一緒に入れた。そして、小さなスプーンをグラスに入れて俺の前に出してくれる。

「当店オリジナルカクテル、『ご主人様と果実』です」
「…………あの、名前に『ご主人様』入れるのやめようぜ」
「…………」

 む、無視……ま、まぁいいや。
 俺はスプーンで果物を掬い口の中へ。酒と甘い果物が絡み合い、なんともいえない味だ。
 
「美味しそうね……アシュト、あーん」
「ろ、ローレライ? 酔ってるのか?」
「そうかもね。ふふ、今日は甘えたい気分なの……ダメ?」
「い、いいぞ。あーん」

 俺は小さなオレンジの果肉を掬い、ローレライの小さな口に入れる。
 ローレライは可愛らしく咀嚼し、にっこり笑った。

「おいしい……」
「ああ。さすがミリアリアだな。ミリアリアにバーを任せてよかったよ」
「ありがとうございます。ご主人様」

 お、ネコミミと尻尾が動いてる。嬉しいみたいだ。
 すると、バーのドアが開き、シェリーが入ってきた。

「あ、やっぱりいた」
「お、シェリー。お前も飲むか?」
「うん。そのために来たんだもん。ミリアリア、軽めのお願い。少し疲れちゃった」

 シェリーは俺の隣に座り、炭酸とグレープフルーツリキュールを混ぜたカクテルを注文した。
 おつまみにチコレート盛り合わせが出され、その一つをパクっとつまむ。

「ん~おいしい。はぁ……ちょっと疲れたわ」
「何かあったのか?」
「ん、ミュディが新作の服を作ってさ、あたしとクララベルを着せ替え人形にしてたのよ」
「あら、クララベルもなの?」
「うん。最初は楽しんでたけど、途中で疲れちゃってね……今日はおしまいよ」
「はは、おつかれさん」
「うん。ミュディのベッドにクララベルが潜り込んでね、今は二人で仲良く眠ってるわ」

 そう言って、シェリーはカクテルをグイっと飲む。
 ビッグバロッグ王国の軍属時代、付き合いで飲むことも多かったシェリーは酒の飲み方が妙に男っぽい。
 ローレライはウィスキーを注文した。

「クララベル、あの子の部屋のベッド、あまり使われないのよね」
「え、なんで?」
「お兄ちゃん、知らないの? クララベル、ローレライかミュディのベッドに潜り込んで寝ることが多いのよ。たまーにあたしのベッドに寝ぼけて潜り込んでくるけどね」
「そうなのか? 知らなかった」
「朝起きると、あの子が胸に顔をうずめてるの。とっても可愛いんだけど……いつまでも甘えん坊なのよね」

 ローレライはブランデーをくいっと飲む。

「俺の場合は……まぁ、抱きついてくるな」
「お兄ちゃんの場合、抱くの意味が違うでしょ。奥さんと旦那さんなんだし」
「おいそう言うこと言うな。仕方ないだろ」
「ふふ、アシュトってば可愛い」
「ろ、ローレライまで」

 他愛ない話で、俺たち三人の夜は更けていく。
 今度はミュディとエルミナを連れてきてもいいな。もし機会があればリュドガ兄さんやヒュンケル兄とも飲んでみたい。たまには他の種族を呼んで話をするのもいいかも。
 緑龍の村にできたバーは、今日も静かに営業している。
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