大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

文字の大きさ
200 / 474
バーでカクテルを

第393話、漢たちと飲もう(正直まだ怖い)

しおりを挟む
 さて、今日俺がバーに誘ったのは、ガタイのいい男たちだ。いや『漢』だちだ。
 
「……いいところだな」
「ああ。ビッグバロッグ王国を思い出す」
「……オレは知らん。そう言えば、お前が行ったのだったな」
「ああ……美味い酒が多いところだ」
「むぅ……村長、今度外に出るときはオレを連れて行け。頼む」
「は、はい」

 バルギルドさんとディアムドさん、俺を挟むようにカウンター席に座ってるから圧がすごい。
 身長高いし、ドワーフ製とはいえ椅子の強度が心配だ。さらにその隣には。

「親分。ここはいい店ですな」
「だろう? バカ騒ぎして飲むのもいいが、こういう静かなところでキツイ酒を飲むのも悪かねぇ。なぁ村長」
「そ、そうですね」
「叔父貴。お注ぎいたしやす」
「ど、どうも。でもここはバーですし、好きに頼んで大丈夫ですので」

 アウグストさんとグラッドさんだ。
 アウグストさんはともかく、グラッドさんが座っている椅子は鉄製だ。こういうこともあろうかと用意しておいた……今度は、バルギルドさんとディアムドさんの分も用意しておこう。
 いつも女性陣とばかり飲んでいるし、たまにはこういう男っぽい飲み会もいい。ちょっとメンツが濃くて息苦しいけどね。
 俺はチコレートをつまむ。バルギルドさんとディアムドさんはサシミを、アウグストさんはチーズ、グラッドさんは生魚を一匹丸のみした。
 お付き合いなので、俺も少し強い酒……ウィスキーを飲む。

「くぅ……けっこうキツいウィスキーですね」
「がはは。村長にゃまだ早かったか? おい銀猫姉ちゃん、水やってくれや」
「はい」

 ミリアリアから水をもらい一気に飲む。
 
「いやぁ……お酒って美味しいけど、キツイのはほんとにキツイですね……」

 苦笑……いや、お酒は嫌いじゃないよ?
 子供の頃は大人の飲み物ってことで憧れたし、実家のキッチンにあった調理酒をこっそり飲んで火を噴きそうになったこともあった。でも、十五歳のときに初めて飲んだお酒は美味しかった。後で知ったんだけど、兄さんが俺のために甘めのお酒を用意してくれたんだ。
 酒精の弱い果実酒……うん、俺が好きな酒だ。
 バルギルドさんは、ドロドロしてそうなブランデーを軽く飲む。

「……オレたちデーモンオーガに毒は効かん」
「え?」
「ヒドラの毒、ポイズンヴァイパーの猛毒、デッドスパイダーの超猛毒。全て一度受けたことがあるが……オレには全く効かなかった」
「え」

 あの、今言った毒、一滴でも体内に入ると即死レベルの猛毒なんですけど。

「そんなオレも、酒で酔うことはできる。酔うという感覚はいい……自分が自分でなくなるような、不思議な高揚感……ふふ」

 バルギルドさんはグラスを軽く揺らす。
 ディアムドさんも同じなのか、微笑んでいた。そして俺に言う。

「村長はまだ若い。あと十年も飲めば酒の味がわかるだろう」
「そ、そうですかね……」
「まぁ焦んな焦んな。酒の味が知りたいなら、ワシらがいつでも付き合うからよ」
「アウグストさん……」
「叔父貴。僭越ながらオレもいます」
「グラッドさんも……ありがとうございます」

 なんかいい話っぽい。酒ってすごいなぁ。

 ◇◇◇◇◇◇

 さらに翌日の夜。
 今度はディミトリを誘って飲んでいる。そして、いつもお世話になっているカシエルさんと、呼んでないのに来たアドナエルも一緒だ。

「ヘイヘイ、オレを差し置いて飲むなんて酷いゼェ~?」
「わ、悪かったって……カシエルさんがいるし、別にいいかなーって」
「どーゆうことナノ!?」

 アドナエルのツッコミを無視し、カシエルさんに言う。

「カシエルさん。新婚旅行ではお世話になりました。今日は好きなだけ飲んでください」
「あ、ありがとうございます……」

 カシエルさんはアドナエルをチラッと見る。そういえば、カシエルさんの雇用主ってアドナエルだった。でも、天使族の中で好感度が最も高いのはカシエルさんなんだよなぁ。

「アシュト村長。ワタクシも忘れないでほしいですねぇ」
「わかってる。ミュディの件では世話になってるし、お前もいっぱい飲め飲め」
「フフフ、ありがとうございます」
「その代わり、アドナエルと喧嘩はしないでくれよ」
「ええ。モチロン……ワタクシからは何も言いません。フフフ、ミュディ・ブランド事業で大忙しなので、アドナエル社長に構っている暇はないのですよ」
「ハァァァ~ン!? それを言うなら、ウチだってアシュト村長が提供してくれた『マスクメィロン』事業で大忙しなのサ! いやぁ、魔界都市ベルゼブブでもメィロンが大ブームって聞いたゼェ~?」
「っぐ、ぬぬぬ……ふ、ふん。確かにマスクメィロンは認めましょう」
「オウオウ。いずれベルゼブブ中に広める予定ッサ!!」

 う、うるせぇ……いつもと変わんないじゃん。
 俺はミリアリアにセントウのカクテルを注文する。さっぱり系のカクテルなので、おつまみに串焼きが出てきた。肉の脂とセントウカクテルがこれまた合う。
 カシエルさんも同じのを注文。ディミトリとアドナエルはやかましいので放置した。

「うん、美味い。肉の脂とセントウカクテル、合いますね」
「そうですね。実はお酒は好きなのですが……まさか、こんなに美味しいカクテルを村で飲めるとは思いませんでした。ありがとうございます、アシュト村長」
「いえいえ。カシエルさんにはお世話になってますので」

 カシエルさんへの好感度はかなり高い。イケメン、礼儀正しい、優しくて温和、腹筋割れしてるよ四拍子だ。

「ヘイヘイ!! 腹筋ならオレも割れてるゼ!!」
「ワタクシもです!! こう見えて昔はブイブイ言わせてたのです!!」
「いや脱ぐな!! つーかなんで心の中読めるんだよ!?」

 割れた腹筋を見せつけるディミトリとアドナエル、苦笑するカシエルさん、そしてツッコむ俺。
 ミリアリアに怒られるまで、バカ騒ぎをしたのだった。
しおりを挟む
感想 1,145

あなたにおすすめの小説

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。