大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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日常編⑮

第401話、冬支度

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 さて、そろそろ冬が近づいてきた。
 食料やお酒の備蓄、農園や温室も最後の収穫と加工に向けて動き出している。建築関係はひとまずお休みになり、鉱山での採掘もしばらくお休みだ。

 いくつかの種族は、故郷へ帰る準備を始めた。
 まず、ブラックモールたち。彼らは故郷へ帰って一冬過ごし、また戻ってくる。
 エルダードワーフたちも穴倉へ戻って過ごす人たちが半数を超えた。
 悪魔族、天使族で居住している人たちも実家に戻り、ハイエルフたちも家で過ごす人がいるらしい。
 そして、ゴルゴーン族たちとアラクネー族のみんなも故郷へ帰る。どうも冬は冬眠するらしい。
 フレキくんや人狼族、エンジュたちも故郷へ帰るそうだ。雪が降れば遠くへの移動は困難になるしね。そして、今回はアセナちゃんも一緒に帰省するそうだ。
 つまるところ、住人の四割ほどが村を離れ、冬が明けたら戻ってくる。
 
 この辺りの冬はけっこう厳しいからな。
 俺からすれば、ビッグバロッグ王国での冬とそんなに変わりない。でも、地域によって全く気候が変わらない場所もビッグバロッグ王国にはあるので、それは仕方ないのかも。
 ちなみに、我が家はのんびり冬支度をしていた。
 ある日。俺は家の倉庫にいた。

「えーっと……確か、ここにしまったんだよね」
「ご主人様、何かお探しでしょうか?」
「あ、シルメリアさん」

 倉庫を物色していると、シルメリアさんがきた。
 俺は手を止め、シルメリアさんに向き直る。

「あのさ、前の冬で使ったコタツを探してるんだけど、知らないかな?」
「コタツですか? それなら……ここですね」

 シルメリアさんは迷いなく倉庫の棚に向かい、折りたたまれたテーブルを引っ張り出した。
 さすがシルメリアさん。最初から聞けばよかった。

「コタツ……冬支度ですか」
「うん。そろそろ寒くなってきたしね。自室と薬院に置こうと思って。あと、カマクラを作ったら前みたいに中で暖まるのもいいかなーって」
「なるほど」

 コタツ。
 シェリーが軍属時代に遠征で訪れた、豪雪地帯の暖房器具だ。
 座卓に魔石をセットしてコタツ用布団をかけ、魔石に魔力を流して温めるという暖房器具で、とても暖かく眠くなる魔道具だ。
 とりあえず、以前の冬で使ったコタツを確認する。

「……うん。魔石も問題ない。シルメリアさん、コタツ用の布団はありますか?」
「はい。仕舞ってありますが……一度、天日干ししたほうがよさそうです」
「じゃ、お願いしていいですか?」
「かしこまりました」

 シルメリアさんは布団を引っ張り出し、外へ持っていく。
 他に、ヒバチ……デカい深皿みたいな暖房器具、もあったので出しておく。
 これ、めちゃくちゃ重いんだよな……情けないことだが、あとでシルメリアさんに運んでもらおう。

「とりあえず、こたつだけ薬院に運んでおくか」

 俺はコタツを片手に、薬院へ向かった。

 ◇◇◇◇◇◇
 
 薬院の隅にカーペットを敷き、仕切りを立て、コタツを置く。
 それから半日。天日干しでフカフカになったコタツ布団をシルメリアさんから受け取り、コタツの上にかける。

「よし、できた」
「みゃあ。なんだこれ」
「お、ルミナ」

 コタツの完成で満足していると、ルミナが音もなく俺の隣にいた。
 手には数冊の本を抱え、俺が質問に答える前にぴったりとくっついて身体をこすりつけてくる。可愛いので頭とネコミミを撫でてやると、嬉しそうにとろけた。
 満足したルミナはスッと離れ、いつものクールな感じで聞く。

「で、なんだこれ?」
「ああ、これはコタツって言うんだ。冬の暖房器具だよ」
「だんぼう……」
「よし、せっかくだし入ってみるか」
「みゃう」

 俺はコタツに触れて魔力を軽く流す……お、魔石がいい感じで熱くなった。コタツの中がほんわりと温まってくる。この感じ、なんだか久しぶりだ。
 俺はコタツに入って足を伸ばし、天板部分に突っ伏した。

「はぁ~……あったかい」
「みゃう。あたいも入る!」

 ルミナは俺の真正面から飛び込むようにコタツに入り、そのまま俺の方に顔を出して抱き着いた。
 どこまでもネコみたいなやつだ。すると、ルミナは気持ちよさそうにトロンとした。

「みゃぁう……あったかい」
「だろ? 寒い冬はコタツが一番だ」
「みゃぉぉ……これいい。きにいった」
「よしよし、ごろごろ」
「ごろごろ……」

 ルミナは喉を鳴らし、気持ちよさそうに寝てしまった。
 俺はコタツから出て場所を変える。ルミナは丸くなり、コタツにすっぽり収まってしまった。
 せっかくなのでお茶を淹れ、そのままコタツで読書をする。

「……冬かぁ」

 なんとなく窓の外を眺める……空は白く、肌寒い。
 これから三百日ほどの冬だ。一度、ビッグバロッグ王国に帰ってみるのもいいかな。
 リュドガ兄さん、ルナマリア義姉さん、父上、ヒュンケル兄……そして、兄さんたちの子供スサノオとエクレール。ヒュンケル兄の話じゃもうすぐ二歳だっけ。
 
「…………そういえば、ちゃんと話してなかったな」

 実感が湧いてないから話してなかったけど、俺とシェリーとミュディはハイエルフ並みの寿命がある。容姿も変わらないし、これから数千、数万の時を生きる。スサノオとエクレールの子供やその孫の世代になっても、姿が変わることなく生きていく。
 一度、ちゃんと話すべきかな……今更感がすごい。
 俺は本を読みながら決めた。

「うん。一度ビッグバロッグ王国に帰るか」

 今夜にでも、ミュディとシェリーに話をするか。

「にゃあ。ご主人さま、お茶でーす」
「ん、ああミュアちゃん」
「にゃう?……あ、こたつだー!」

 部屋に入ってきたミュアちゃんが、コタツを見て目を輝かせた。
 せっかくなのでミュアちゃんにも入ってもらう。

「にゃふ……きもちいい」
「冬が近くなってきたからね。またカマクラを作ってそこでのんびりしようね」
「にゃうぅ……ごろごろ」

 ミュアちゃんを撫でると喉が鳴る。
 そのままルミナの隣で静かに寝息を立て始めた……可愛いなぁ。
 
「さて、読書読書」

 俺は本のページをめくり、静かに読書を再開した。
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