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オーベルシュタイン、二度目の冬
第410話、そのころのエルミナ
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アシュトたちが村に戻り、ニコニコアザラシたちが牧場の一部で冬眠を始めて数日。
そんなことを知らないエルミナ、ローレライとクララベルは、帰省を楽しんでいた。
まずはエルミナ。彼女は実家の自室でくつろいでいた。
「んぁ~~~~むっ……」
フカフカのカーペット(ミュディに頼んで作ってもらった)の上に寝転がり、チコレートを食べながら本を読んでリラックス……エルミナはとことん実家を満喫していた。
だが、帰省して数日……ダラダラゴロゴロしていると言われることもある。
「お~うぃエルミナ、エルミナぁ!!」
「ん~……なにおじいちゃん」
エルミナの祖父にして最古のハイエルフの一人ジーグベッグだ。
二階にあるエルミナの部屋には入らず、階段下でエルミナを呼ぶ。
かったるいが、エルミナは部屋を出て下へ。
ジーグベッグは、何か書き物をしていたようで、羊皮紙を丸めて筒にいれエルミナに渡す。
「これを里外れに住んでるバーバジージャに渡してくれんかの」
「えぇ~……バーバばーちゃんのとこ遠いしぃ~……お世話係に頼めばいいじゃぁ~ん」
心底かったるそうにエルミナは言う。
だが、ジーグベッグは反論した。
「ばっかもん。お前、帰省してから毎日毎日ゴロゴロして……少しはメージュやルネアを見習わんか。あの子ら、家の手伝いや狩りに出かけたりして仕事しておる」
「うぅ~ん……私だって」
「飲み会くらいしかやっとらんじゃろ」
「………‥わ、わかったわよ」
図星を突かれたのでお使いにに行くことにした。
エルミナはいつのも服に着替え、軽く伸びをする。
「じゃ、行ってくるね」
「うむ。頼んだぞ」
「うん。ところで、これなに?」
「ふっふっふ。まぁ気にするんでない」
羊皮紙の筒をカバンに入れ、散歩がてらエルミナは家を出た。
◇◇◇◇◇◇
ハイエルフの里。
狩りと農業が主な産業で、ブドウからワインを作ったりして他の種族と取引をしている。
ハイエルフの里の食卓に並ぶ魚はマーメイド族と取引した魚だし、使う武器はドワーフに作ってもらったものだ。
だが、この里は何年何十年何百何千年経っても変化がない。
「アシュトのところもいいけど、故郷は落ち着くわねー……」
里の中をゆっくり流れる小川沿いに歩き、故郷の空気をたっぷり吸う。
あと数日滞在したら緑龍の村に帰る。ここに来たのは冬前に顔を見せに来たのと、清酒を何本かジーグベッグに届けるためだ。
歩くこと三十分。エルミナは村はずれにある一軒家に到着した。
「バーバジージャばーちゃん、元気かな」
村はずれに住むハイエルフのバーバジージャ。
彼女もまた、最古のハイエルフである。
最近、ジーグベッグと羊皮紙のやり取りをしているようだが……。
「バーバばーちゃん、こんちわー」
ハイエルフの里の住居にドアはない。カーテンのような天幕があるだけなので、声をかければあとは普通に入っていい。これはハイエルフの風習だった。
室内には、茶を啜る老いたハイエルフの女性が一人。
「なんじゃエルミナ。こんなところに何か用かえ?」
「ん、おじいちゃんから手紙。ほい」
「お、ジーグベッグの奴からかい。ふふ、どれどれ……」
バーバジージャはさっそく筒を開け、中の羊皮紙を見て唸る。
何が書いてあるのか気になったエルミナは聞いてみた。
「なになに。まさかおじいちゃんからの恋文とかだったりして~?」
「恋文……ま、似たようなもんじゃな。ほれ」
「え、見ていいの?…………なにこれ」
手紙には小さく一文だけ書いてある。
「……「四-六-五、騎龍」……なにこれ?」
「これじゃ、これこれ」
バーバジージャはテーブルの上に何やらボードを置く。
ボードの上には駒があり、不規則に並んでいた。
エルミナは、これを見たことがある。
「これ、ドラゴンチェス……だっけ? ローレライとクララベルがよくやってる」
「そうじゃ。緑龍の村から送られてきた娯楽品でな。ジーグベッグと勝負してるんじゃよ」
「…………なんで手紙?」
「ふふ。一日一手というルールを決めて、手紙で互いの一手を送りあっているのじゃ。一手差したら考える時間は一日。一日たっぷり考えて次の手を手紙で送る……くくく、楽しいじゃろ?」
「そ、そうかな……家に行った方が早いんじゃ」
「馬鹿もん。わしらハイエルフは悠久の時を生きる種族。時間は無限にある、一日一手も楽しいモンじゃわい」
「ふーん」
バーバジージャは駒を動かし、静かに考え始めた。
これから次の一手を想像し、翌日手紙を書いてジーグベッグに送る。そしてまた一日かけてジーグベッグが次の一手を考えて手紙で送り……を、勝負がつくまでやり取りするのだ。
「暇人ねー」
「ふん、お前さんみたいなガキにはわからんよ。大人の楽しみって奴じゃよ」
「はいはい。九千年しか生きてない私は子供ですよーだ」
「まぁいい。ほれ、茶でも飲んでけ。草団子もあるぞい」
「いただきまっす!」
バーバジージャにとって、エルミナは孫みたいな存在だ。
彼女の夫は魔獣に襲われて死に、子供はここではないユグドラシルの元で暮らしている。孫もいるのだが、なかなか会えないという寂しさもあり、エルミナのことはよく可愛がっていた。
エルミナは草団子をもぐもぐ食べ、渋いリョク茶を啜る。
「ところであんた、結婚したんだってねぇ」
「ん、まーね」
「子供はできたのかい?」
「ぶっ!? そそ、そんな早くできるわけないでしょ!! ハイエルフは子供できにくいし、のんびり作るわよ」
「そうさねぇ……あたしも子供ができたのは結婚して七十万年後こらいだったしねぇ。夫が死んだのは十万年……ああもう、年は取りたくないねぇ」
「あはは。おじいちゃんも、おばあちゃんのことは忘れてないけど、いつ死んだかとかは忘れちゃってる。私の両親も私を生んだの九千年前だし、子供はのんびり作るわ」
「そうさね。それがいい……ああ、名前くらいは考えておきな」
「うん。おじいちゃんがいろいろ考えてる。私もいろいろ考えてるけど……アシュトは「まだ早い」とか言うのよ。全く、いいじゃない早く考えたってー」
エルミナはバーバジージャに愚痴をこぼす。
バーバジージャも、エルミナとの会話を楽しんでいた。
「せっかくだ。夕飯も食べていきな」
「え、いいの? あ、お酒ある! 美味しいのあるから取りに行ってくる!」
「お、それならわしもとっておきの出そうかねぇ」
エルミナはダッシュで家に戻り、酒瓶を抱えて戻ってきた。
戻ってきたのだが……エルミナは一人じゃなかった。
「バーバばーちゃん、メージュたちも連れてきた! 今日はここで飲み会しましょ!」
「こんばんはー、エルミナが飲み会するっていうから来ちゃいましたけど……」
と、メージュが申し訳なさそうに。
「エルミナ、いつも突然」
と、ルネアが無表情で。
「ま、いいじゃん」
「うふふ。こんにちわ~」
と、エレインとシレーヌが入ってきた。
バーバジージャの家は、一気に騒がしくなる。
「……まったく。仕方ないねぇ」
だが、バーバジージャはとても嬉しそうに微笑んだ。
ドラゴンチェス、次の一手は……少なくとも、今日は考えられなかった。
そんなことを知らないエルミナ、ローレライとクララベルは、帰省を楽しんでいた。
まずはエルミナ。彼女は実家の自室でくつろいでいた。
「んぁ~~~~むっ……」
フカフカのカーペット(ミュディに頼んで作ってもらった)の上に寝転がり、チコレートを食べながら本を読んでリラックス……エルミナはとことん実家を満喫していた。
だが、帰省して数日……ダラダラゴロゴロしていると言われることもある。
「お~うぃエルミナ、エルミナぁ!!」
「ん~……なにおじいちゃん」
エルミナの祖父にして最古のハイエルフの一人ジーグベッグだ。
二階にあるエルミナの部屋には入らず、階段下でエルミナを呼ぶ。
かったるいが、エルミナは部屋を出て下へ。
ジーグベッグは、何か書き物をしていたようで、羊皮紙を丸めて筒にいれエルミナに渡す。
「これを里外れに住んでるバーバジージャに渡してくれんかの」
「えぇ~……バーバばーちゃんのとこ遠いしぃ~……お世話係に頼めばいいじゃぁ~ん」
心底かったるそうにエルミナは言う。
だが、ジーグベッグは反論した。
「ばっかもん。お前、帰省してから毎日毎日ゴロゴロして……少しはメージュやルネアを見習わんか。あの子ら、家の手伝いや狩りに出かけたりして仕事しておる」
「うぅ~ん……私だって」
「飲み会くらいしかやっとらんじゃろ」
「………‥わ、わかったわよ」
図星を突かれたのでお使いにに行くことにした。
エルミナはいつのも服に着替え、軽く伸びをする。
「じゃ、行ってくるね」
「うむ。頼んだぞ」
「うん。ところで、これなに?」
「ふっふっふ。まぁ気にするんでない」
羊皮紙の筒をカバンに入れ、散歩がてらエルミナは家を出た。
◇◇◇◇◇◇
ハイエルフの里。
狩りと農業が主な産業で、ブドウからワインを作ったりして他の種族と取引をしている。
ハイエルフの里の食卓に並ぶ魚はマーメイド族と取引した魚だし、使う武器はドワーフに作ってもらったものだ。
だが、この里は何年何十年何百何千年経っても変化がない。
「アシュトのところもいいけど、故郷は落ち着くわねー……」
里の中をゆっくり流れる小川沿いに歩き、故郷の空気をたっぷり吸う。
あと数日滞在したら緑龍の村に帰る。ここに来たのは冬前に顔を見せに来たのと、清酒を何本かジーグベッグに届けるためだ。
歩くこと三十分。エルミナは村はずれにある一軒家に到着した。
「バーバジージャばーちゃん、元気かな」
村はずれに住むハイエルフのバーバジージャ。
彼女もまた、最古のハイエルフである。
最近、ジーグベッグと羊皮紙のやり取りをしているようだが……。
「バーバばーちゃん、こんちわー」
ハイエルフの里の住居にドアはない。カーテンのような天幕があるだけなので、声をかければあとは普通に入っていい。これはハイエルフの風習だった。
室内には、茶を啜る老いたハイエルフの女性が一人。
「なんじゃエルミナ。こんなところに何か用かえ?」
「ん、おじいちゃんから手紙。ほい」
「お、ジーグベッグの奴からかい。ふふ、どれどれ……」
バーバジージャはさっそく筒を開け、中の羊皮紙を見て唸る。
何が書いてあるのか気になったエルミナは聞いてみた。
「なになに。まさかおじいちゃんからの恋文とかだったりして~?」
「恋文……ま、似たようなもんじゃな。ほれ」
「え、見ていいの?…………なにこれ」
手紙には小さく一文だけ書いてある。
「……「四-六-五、騎龍」……なにこれ?」
「これじゃ、これこれ」
バーバジージャはテーブルの上に何やらボードを置く。
ボードの上には駒があり、不規則に並んでいた。
エルミナは、これを見たことがある。
「これ、ドラゴンチェス……だっけ? ローレライとクララベルがよくやってる」
「そうじゃ。緑龍の村から送られてきた娯楽品でな。ジーグベッグと勝負してるんじゃよ」
「…………なんで手紙?」
「ふふ。一日一手というルールを決めて、手紙で互いの一手を送りあっているのじゃ。一手差したら考える時間は一日。一日たっぷり考えて次の手を手紙で送る……くくく、楽しいじゃろ?」
「そ、そうかな……家に行った方が早いんじゃ」
「馬鹿もん。わしらハイエルフは悠久の時を生きる種族。時間は無限にある、一日一手も楽しいモンじゃわい」
「ふーん」
バーバジージャは駒を動かし、静かに考え始めた。
これから次の一手を想像し、翌日手紙を書いてジーグベッグに送る。そしてまた一日かけてジーグベッグが次の一手を考えて手紙で送り……を、勝負がつくまでやり取りするのだ。
「暇人ねー」
「ふん、お前さんみたいなガキにはわからんよ。大人の楽しみって奴じゃよ」
「はいはい。九千年しか生きてない私は子供ですよーだ」
「まぁいい。ほれ、茶でも飲んでけ。草団子もあるぞい」
「いただきまっす!」
バーバジージャにとって、エルミナは孫みたいな存在だ。
彼女の夫は魔獣に襲われて死に、子供はここではないユグドラシルの元で暮らしている。孫もいるのだが、なかなか会えないという寂しさもあり、エルミナのことはよく可愛がっていた。
エルミナは草団子をもぐもぐ食べ、渋いリョク茶を啜る。
「ところであんた、結婚したんだってねぇ」
「ん、まーね」
「子供はできたのかい?」
「ぶっ!? そそ、そんな早くできるわけないでしょ!! ハイエルフは子供できにくいし、のんびり作るわよ」
「そうさねぇ……あたしも子供ができたのは結婚して七十万年後こらいだったしねぇ。夫が死んだのは十万年……ああもう、年は取りたくないねぇ」
「あはは。おじいちゃんも、おばあちゃんのことは忘れてないけど、いつ死んだかとかは忘れちゃってる。私の両親も私を生んだの九千年前だし、子供はのんびり作るわ」
「そうさね。それがいい……ああ、名前くらいは考えておきな」
「うん。おじいちゃんがいろいろ考えてる。私もいろいろ考えてるけど……アシュトは「まだ早い」とか言うのよ。全く、いいじゃない早く考えたってー」
エルミナはバーバジージャに愚痴をこぼす。
バーバジージャも、エルミナとの会話を楽しんでいた。
「せっかくだ。夕飯も食べていきな」
「え、いいの? あ、お酒ある! 美味しいのあるから取りに行ってくる!」
「お、それならわしもとっておきの出そうかねぇ」
エルミナはダッシュで家に戻り、酒瓶を抱えて戻ってきた。
戻ってきたのだが……エルミナは一人じゃなかった。
「バーバばーちゃん、メージュたちも連れてきた! 今日はここで飲み会しましょ!」
「こんばんはー、エルミナが飲み会するっていうから来ちゃいましたけど……」
と、メージュが申し訳なさそうに。
「エルミナ、いつも突然」
と、ルネアが無表情で。
「ま、いいじゃん」
「うふふ。こんにちわ~」
と、エレインとシレーヌが入ってきた。
バーバジージャの家は、一気に騒がしくなる。
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