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オーベルシュタイン、二度目の冬
第414話、退屈エルミナ
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初雪からしばらく経ち、雪が降らない日はなかった。
毎朝とても寒く、布団から出るのが億劫になる。雪が降り始めてからルミナが俺の布団に潜り込むようになった。もうすっかり飼い猫みたいでとてもかわいい。
そんなある日。
薬院で読書をしていると、エルミナがやってきた。
なんだか疲れているような、どことなくイライラしているっぽい……あ、そういうことか。女の子は月一で来るっていうし、そういう日なのか。
「よ。大丈夫か?」
「……何がよ?」
「いや、体調悪いなら無理するな。身体を温めて水分を取って休んでおけ。痛み止めなら少しだけ処方するよ」
「…………何言ってんの?」
「え、体調悪いんだろ? 月一の……」
と、ここでエルミナが真っ赤になって怒り出した。
「ば、バカ言わないでよ!! そういうんじゃないし!! ってかデリカシーなさすぎ、この馬鹿!!」
「お、おおう……なんかごめん」
どうやら違ったようで……早とちり早とちり。
エルミナをソファに座らせ、俺も座る。するといいタイミングでミュアちゃんがお茶を運んできてくれた。
さらに、部屋の隅に置いてあるコタツから黒いネコミミがにゅっと出てくる。
「ふみゃぁぁ~……んん、お茶か」
「にゃう。ルミナおきたー」
コタツの隣には小さな本棚があり、そこに図書館で借りてきた本が収めてある。コタツテーブルの上には羊皮紙やペンが置いてあるし、もはや薬院の一角はルミナの部屋と化していた。
俺は、ミュアちゃんからカーフィーを受け取る。
エルミナ、ルミナにはホットレモンティー、そして自分の分も注ぎ、俺の隣にちょこんと座った。
「にゃうー」
「はは、寒いのかい?」
「にゃあ。家の中は暖かいけど……廊下とか寒いの」
「みゃう。あたいもだ」
「よしよし。いっぱい温まって風邪ひかないようにね」
「にゃぁう」
「みゃう……ごろごろ」
うーん。かわいい。
撫でるとネコミミがふんわりして気持ちいい。
「…………あのさ、私のこと忘れないでよね」
「あ、悪い悪い。で、何か用か?」
「ん」
エルミナはホットレモンティーを啜り、小さく息を吐いた。
「あのさ、すっごく退屈なのよ……」
「…………は?」
「だーかーら! 退屈なの! 娯楽が欲しいの!」
エルミナは、子供みたいに足をばたつかせていた……退屈?
俺はカーフィーを啜る。
「退屈なら外で遊んで来いよ。ほら、見てみろよ」
窓を指さすと、そこには。
「よし! 今日はかまくらを作るわよ!」
「わぉーん!」
「まんどれーいく!」
『きゃんきゃん!!』
防寒着を装備したシェリー、ライラちゃん、マンドレイク、シロだ。
以前作ったかまくらをまた作るらしい。今回は「雪だるま」という守り神も一緒に作るらしく、朝から張り切っていた。
だが、エルミナは首を振る。
「ああいう遊びじゃなくて、もっとこう……みんなでやるような娯楽がいいの!」
「みんなでって……かまくら造りもみんなでやる遊びだろ」
作ったかまくらはシェリーが無償で凍らせている。
シェリーの氷魔法でかまくらを凍らせれば、形はそのままで溶けることもないし、油をかけて火をつけても溶けることはない。
今回、ドワーフやハイエルフもそれぞれの家の前にかまくらを作った。ドワーフとか気合入れまくって作ったおかげで二階建てのかまくらだし、その中で飲み会とかやって寝ることも多い。
父上と母上の家の前にもすでにかまくらがある。ドワーフが作ってくれたんだ。
おっと、また思考がそれた。
「あのさ、私が言いたいのは「みんなで集まってワイワイする」ってこと。例えば、宴会場でイベントやるとか!」
「イベント……」
「そ、冬ならではの室内イベント!」
「…………」
ちょっと考える。
確かにエルミナの言う通り、そういうイベントはあれば面白い。
冬は三百日くらいあるし、毎日家の中に引きこもっているのも身体に悪い。それに、住人同士が顔を合わせる
機会が増えればなお面白い。
「室内イベントか……面白いな」
「ふふん。まーた私の知恵が役立ったようね!」
「いや、お前は退屈してただけだろ」
「にゃあ」
「みゃう」
胸を張るエルミナ。でも、なんか可愛いんだよなぁ。
室内イベントか……ディアーナに相談してみるか。
◇◇◇◇◇◇
というわけで、エルミナを連れてディアーナのいる執務邸に。
ここは村の生産物に関する情報が全て管理されている。村周辺の地図や村内の地図があり、区画ごとにあれがあーだこーだ……難しいのでディアーナにお任せだ。
ルシファーの派遣した悪魔族の文官女性たちが事務仕事をして、部屋で一番大きなデスクにはディアーナが座り、そこで事務仕事を行っている。
雪が降る前に改築し、村長である俺の机は別室になった。
実はこれが大助かり……だって、この部屋って俺以外みんな女性なんだもん。居心地悪いよマジで。
さて、応接間に案内された俺とエルミナはディアーナと向き合い、冬のイベントの話をする。
「なるほど……確かに、冬は娯楽が少ないですね。図書館、浴場にマッサージ、それだけでは飽きがくるでしょう。外に出てアスレチックで遊んだり、湖で釣りをしたり、狩りに出かけたりもできませんしね」
「俺は図書館があれば大満足だけどな」
「アシュト、余計なこと言うなっての!」
「あいででで!?」
エルミナに耳を引っ張られた……本心だけど冗談だって。
ディアーナは「ふむ」と唸る。
「実は、住人の方からいくつか提案がありました」
「「え?」」
ディアーナは一枚の羊皮紙を出す。
「ローレライ様から「ドラゴンチェス大会を開催してはどうか」と、ドワーフの皆さまから「雪像造りをして雪祭りを開催してくれ!」と、ほかにも「鍋会を開こう」や「とにかく宴会」など、いろいろ提案が」
「おお。いつの間に」
でも、面白そう。
ドラゴンチェスの大会、雪祭り、鍋会……うん、冬っぽいな。
それに、父上と母上も楽しめるかも。父上はドラゴンチェスの名手でもあるし、最近はローレライと対戦して勝ち負けを繰り返しているほどだ。
雪祭りか……これもいい。冬は家の中にいるっていう前提を覆すお祭りだ。あえて外でやるのもいいな。
鍋会。これもいい。要は鍋パーティーだ。みんなで囲む鍋とか温まりそうだ。
「よし。ディアーナ、ちょっと詰めてみよう。エルミナ、お前も付き合え」
「わかりました。では、資料の準備を」
「まっかせて! んふふ、楽しくなりそうね!」
こうして、緑龍の村・冬のイベントを考えることになった。
毎朝とても寒く、布団から出るのが億劫になる。雪が降り始めてからルミナが俺の布団に潜り込むようになった。もうすっかり飼い猫みたいでとてもかわいい。
そんなある日。
薬院で読書をしていると、エルミナがやってきた。
なんだか疲れているような、どことなくイライラしているっぽい……あ、そういうことか。女の子は月一で来るっていうし、そういう日なのか。
「よ。大丈夫か?」
「……何がよ?」
「いや、体調悪いなら無理するな。身体を温めて水分を取って休んでおけ。痛み止めなら少しだけ処方するよ」
「…………何言ってんの?」
「え、体調悪いんだろ? 月一の……」
と、ここでエルミナが真っ赤になって怒り出した。
「ば、バカ言わないでよ!! そういうんじゃないし!! ってかデリカシーなさすぎ、この馬鹿!!」
「お、おおう……なんかごめん」
どうやら違ったようで……早とちり早とちり。
エルミナをソファに座らせ、俺も座る。するといいタイミングでミュアちゃんがお茶を運んできてくれた。
さらに、部屋の隅に置いてあるコタツから黒いネコミミがにゅっと出てくる。
「ふみゃぁぁ~……んん、お茶か」
「にゃう。ルミナおきたー」
コタツの隣には小さな本棚があり、そこに図書館で借りてきた本が収めてある。コタツテーブルの上には羊皮紙やペンが置いてあるし、もはや薬院の一角はルミナの部屋と化していた。
俺は、ミュアちゃんからカーフィーを受け取る。
エルミナ、ルミナにはホットレモンティー、そして自分の分も注ぎ、俺の隣にちょこんと座った。
「にゃうー」
「はは、寒いのかい?」
「にゃあ。家の中は暖かいけど……廊下とか寒いの」
「みゃう。あたいもだ」
「よしよし。いっぱい温まって風邪ひかないようにね」
「にゃぁう」
「みゃう……ごろごろ」
うーん。かわいい。
撫でるとネコミミがふんわりして気持ちいい。
「…………あのさ、私のこと忘れないでよね」
「あ、悪い悪い。で、何か用か?」
「ん」
エルミナはホットレモンティーを啜り、小さく息を吐いた。
「あのさ、すっごく退屈なのよ……」
「…………は?」
「だーかーら! 退屈なの! 娯楽が欲しいの!」
エルミナは、子供みたいに足をばたつかせていた……退屈?
俺はカーフィーを啜る。
「退屈なら外で遊んで来いよ。ほら、見てみろよ」
窓を指さすと、そこには。
「よし! 今日はかまくらを作るわよ!」
「わぉーん!」
「まんどれーいく!」
『きゃんきゃん!!』
防寒着を装備したシェリー、ライラちゃん、マンドレイク、シロだ。
以前作ったかまくらをまた作るらしい。今回は「雪だるま」という守り神も一緒に作るらしく、朝から張り切っていた。
だが、エルミナは首を振る。
「ああいう遊びじゃなくて、もっとこう……みんなでやるような娯楽がいいの!」
「みんなでって……かまくら造りもみんなでやる遊びだろ」
作ったかまくらはシェリーが無償で凍らせている。
シェリーの氷魔法でかまくらを凍らせれば、形はそのままで溶けることもないし、油をかけて火をつけても溶けることはない。
今回、ドワーフやハイエルフもそれぞれの家の前にかまくらを作った。ドワーフとか気合入れまくって作ったおかげで二階建てのかまくらだし、その中で飲み会とかやって寝ることも多い。
父上と母上の家の前にもすでにかまくらがある。ドワーフが作ってくれたんだ。
おっと、また思考がそれた。
「あのさ、私が言いたいのは「みんなで集まってワイワイする」ってこと。例えば、宴会場でイベントやるとか!」
「イベント……」
「そ、冬ならではの室内イベント!」
「…………」
ちょっと考える。
確かにエルミナの言う通り、そういうイベントはあれば面白い。
冬は三百日くらいあるし、毎日家の中に引きこもっているのも身体に悪い。それに、住人同士が顔を合わせる
機会が増えればなお面白い。
「室内イベントか……面白いな」
「ふふん。まーた私の知恵が役立ったようね!」
「いや、お前は退屈してただけだろ」
「にゃあ」
「みゃう」
胸を張るエルミナ。でも、なんか可愛いんだよなぁ。
室内イベントか……ディアーナに相談してみるか。
◇◇◇◇◇◇
というわけで、エルミナを連れてディアーナのいる執務邸に。
ここは村の生産物に関する情報が全て管理されている。村周辺の地図や村内の地図があり、区画ごとにあれがあーだこーだ……難しいのでディアーナにお任せだ。
ルシファーの派遣した悪魔族の文官女性たちが事務仕事をして、部屋で一番大きなデスクにはディアーナが座り、そこで事務仕事を行っている。
雪が降る前に改築し、村長である俺の机は別室になった。
実はこれが大助かり……だって、この部屋って俺以外みんな女性なんだもん。居心地悪いよマジで。
さて、応接間に案内された俺とエルミナはディアーナと向き合い、冬のイベントの話をする。
「なるほど……確かに、冬は娯楽が少ないですね。図書館、浴場にマッサージ、それだけでは飽きがくるでしょう。外に出てアスレチックで遊んだり、湖で釣りをしたり、狩りに出かけたりもできませんしね」
「俺は図書館があれば大満足だけどな」
「アシュト、余計なこと言うなっての!」
「あいででで!?」
エルミナに耳を引っ張られた……本心だけど冗談だって。
ディアーナは「ふむ」と唸る。
「実は、住人の方からいくつか提案がありました」
「「え?」」
ディアーナは一枚の羊皮紙を出す。
「ローレライ様から「ドラゴンチェス大会を開催してはどうか」と、ドワーフの皆さまから「雪像造りをして雪祭りを開催してくれ!」と、ほかにも「鍋会を開こう」や「とにかく宴会」など、いろいろ提案が」
「おお。いつの間に」
でも、面白そう。
ドラゴンチェスの大会、雪祭り、鍋会……うん、冬っぽいな。
それに、父上と母上も楽しめるかも。父上はドラゴンチェスの名手でもあるし、最近はローレライと対戦して勝ち負けを繰り返しているほどだ。
雪祭りか……これもいい。冬は家の中にいるっていう前提を覆すお祭りだ。あえて外でやるのもいいな。
鍋会。これもいい。要は鍋パーティーだ。みんなで囲む鍋とか温まりそうだ。
「よし。ディアーナ、ちょっと詰めてみよう。エルミナ、お前も付き合え」
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