大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

文字の大きさ
221 / 474
オーベルシュタイン、二度目の冬

第414話、退屈エルミナ

しおりを挟む
 初雪からしばらく経ち、雪が降らない日はなかった。
 毎朝とても寒く、布団から出るのが億劫になる。雪が降り始めてからルミナが俺の布団に潜り込むようになった。もうすっかり飼い猫みたいでとてもかわいい。
 
 そんなある日。
 薬院で読書をしていると、エルミナがやってきた。
 なんだか疲れているような、どことなくイライラしているっぽい……あ、そういうことか。女の子は月一で来るっていうし、そういう日なのか。
 
「よ。大丈夫か?」
「……何がよ?」
「いや、体調悪いなら無理するな。身体を温めて水分を取って休んでおけ。痛み止めなら少しだけ処方するよ」
「…………何言ってんの?」
「え、体調悪いんだろ? 月一の……」

 と、ここでエルミナが真っ赤になって怒り出した。

「ば、バカ言わないでよ!! そういうんじゃないし!! ってかデリカシーなさすぎ、この馬鹿!!」
「お、おおう……なんかごめん」

 どうやら違ったようで……早とちり早とちり。
 エルミナをソファに座らせ、俺も座る。するといいタイミングでミュアちゃんがお茶を運んできてくれた。
 さらに、部屋の隅に置いてあるコタツから黒いネコミミがにゅっと出てくる。

「ふみゃぁぁ~……んん、お茶か」
「にゃう。ルミナおきたー」

 コタツの隣には小さな本棚があり、そこに図書館で借りてきた本が収めてある。コタツテーブルの上には羊皮紙やペンが置いてあるし、もはや薬院の一角はルミナの部屋と化していた。
 俺は、ミュアちゃんからカーフィーを受け取る。
 エルミナ、ルミナにはホットレモンティー、そして自分の分も注ぎ、俺の隣にちょこんと座った。

「にゃうー」
「はは、寒いのかい?」
「にゃあ。家の中は暖かいけど……廊下とか寒いの」
「みゃう。あたいもだ」
「よしよし。いっぱい温まって風邪ひかないようにね」
「にゃぁう」
「みゃう……ごろごろ」

 うーん。かわいい。
 撫でるとネコミミがふんわりして気持ちいい。

「…………あのさ、私のこと忘れないでよね」
「あ、悪い悪い。で、何か用か?」
「ん」

 エルミナはホットレモンティーを啜り、小さく息を吐いた。

「あのさ、すっごく退屈なのよ……」
「…………は?」
「だーかーら! 退屈なの! 娯楽が欲しいの!」

 エルミナは、子供みたいに足をばたつかせていた……退屈?
 俺はカーフィーを啜る。

「退屈なら外で遊んで来いよ。ほら、見てみろよ」

 窓を指さすと、そこには。

「よし! 今日はかまくらを作るわよ!」
「わぉーん!」
「まんどれーいく!」
『きゃんきゃん!!』

 防寒着を装備したシェリー、ライラちゃん、マンドレイク、シロだ。
 以前作ったかまくらをまた作るらしい。今回は「雪だるま」という守り神も一緒に作るらしく、朝から張り切っていた。
 だが、エルミナは首を振る。

「ああいう遊びじゃなくて、もっとこう……みんなでやるような娯楽がいいの!」
「みんなでって……かまくら造りもみんなでやる遊びだろ」

 作ったかまくらはシェリーが無償で凍らせている。
 シェリーの氷魔法でかまくらを凍らせれば、形はそのままで溶けることもないし、油をかけて火をつけても溶けることはない。
 今回、ドワーフやハイエルフもそれぞれの家の前にかまくらを作った。ドワーフとか気合入れまくって作ったおかげで二階建てのかまくらだし、その中で飲み会とかやって寝ることも多い。
 父上と母上の家の前にもすでにかまくらがある。ドワーフが作ってくれたんだ。
 おっと、また思考がそれた。

「あのさ、私が言いたいのは「みんなで集まってワイワイする」ってこと。例えば、宴会場でイベントやるとか!」
「イベント……」
「そ、冬ならではの室内イベント!」
「…………」

 ちょっと考える。
 確かにエルミナの言う通り、そういうイベントはあれば面白い。
 冬は三百日くらいあるし、毎日家の中に引きこもっているのも身体に悪い。それに、住人同士が顔を合わせる
機会が増えればなお面白い。

「室内イベントか……面白いな」
「ふふん。まーた私の知恵が役立ったようね!」
「いや、お前は退屈してただけだろ」
「にゃあ」
「みゃう」

 胸を張るエルミナ。でも、なんか可愛いんだよなぁ。
 室内イベントか……ディアーナに相談してみるか。

 ◇◇◇◇◇◇

 というわけで、エルミナを連れてディアーナのいる執務邸に。
 ここは村の生産物に関する情報が全て管理されている。村周辺の地図や村内の地図があり、区画ごとにあれがあーだこーだ……難しいのでディアーナにお任せだ。
 ルシファーの派遣した悪魔族の文官女性たちが事務仕事をして、部屋で一番大きなデスクにはディアーナが座り、そこで事務仕事を行っている。

 雪が降る前に改築し、村長である俺の机は別室になった。
 実はこれが大助かり……だって、この部屋って俺以外みんな女性なんだもん。居心地悪いよマジで。
 さて、応接間に案内された俺とエルミナはディアーナと向き合い、冬のイベントの話をする。

「なるほど……確かに、冬は娯楽が少ないですね。図書館、浴場にマッサージ、それだけでは飽きがくるでしょう。外に出てアスレチックで遊んだり、湖で釣りをしたり、狩りに出かけたりもできませんしね」
「俺は図書館があれば大満足だけどな」
「アシュト、余計なこと言うなっての!」
「あいででで!?」

 エルミナに耳を引っ張られた……本心だけど冗談だって。
 ディアーナは「ふむ」と唸る。

「実は、住人の方からいくつか提案がありました」
「「え?」」

 ディアーナは一枚の羊皮紙を出す。

「ローレライ様から「ドラゴンチェス大会を開催してはどうか」と、ドワーフの皆さまから「雪像造りをして雪祭りを開催してくれ!」と、ほかにも「鍋会を開こう」や「とにかく宴会」など、いろいろ提案が」
「おお。いつの間に」

 でも、面白そう。
 ドラゴンチェスの大会、雪祭り、鍋会……うん、冬っぽいな。
 それに、父上と母上も楽しめるかも。父上はドラゴンチェスの名手でもあるし、最近はローレライと対戦して勝ち負けを繰り返しているほどだ。
 雪祭りか……これもいい。冬は家の中にいるっていう前提を覆すお祭りだ。あえて外でやるのもいいな。
 鍋会。これもいい。要は鍋パーティーだ。みんなで囲む鍋とか温まりそうだ。

「よし。ディアーナ、ちょっと詰めてみよう。エルミナ、お前も付き合え」
「わかりました。では、資料の準備を」
「まっかせて! んふふ、楽しくなりそうね!」

 こうして、緑龍の村・冬のイベントを考えることになった。
しおりを挟む
感想 1,145

あなたにおすすめの小説

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。