大自然の魔法師アシュト、廃れた領地でスローライフ

さとう

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オーベルシュタイン、二度目の冬

第420話、緑龍の村・雪合戦大会と鍋会!(中編2)

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 ルミナは一人、薬院にあるこたつでくつろいでいた。
 外では何やらイベントをやっているが関係ない。
 コタツの上にはメモ用紙と羽ペン、魔獣図鑑、そしてシルメリアがおやつとして置いていったチコレートが置いてある。
 チコレートはすでにいくつか包みを破って食べてしまい、今は勉強も一休み中……こたつにすっぽり入り、ぬくぬくと温まっていた。

「みゃう……きもちいい」

 こたつ。これはとても素晴らしい。
 今までの冬は、雪が降る前に木の根元を掘って落ち葉や枯草を敷き詰めて寝床にし、木の実や果物などを集めて保存。雪が降ったらなるべく体力を消費しないように朝から晩まで眠る生活が春まで続いた。
 ルミナは、自分以外の黒猫族は今もそうしているのか、そう考えると少しだけ気になった。だが、孤独に生きる黒猫族はきっと誰も気にしない。それが当たり前の生活なので冬が辛いことには慣れっこだ。

「…………」

 でも、もし……もし、他の黒猫族に出会うことがあったら。
 ルミナはきっと、この村に住めばいい、そう言うだろう。
 
「みゃう……そういえば」

 ルミナは、外の雪景色を見ながら思う。
 ここに来たのは、餌が豊富に貯蔵されていたからだ。何度か忍び込んで餌を奪い、捕まり……アシュトに手懐けられ、すっかり飼い猫になってしまった。
 アシュトが傍に来ると、本能なのか身体をこすりつけたくなる。それに、頭やネコミミを撫でてもらうのがとても気持ちよく、楽しみなのである。
 それに……ここには、ほかにもネコがいた。

「にゃあ! ルミナー!」
「わぅぅん! あ、チコレート!」
「まんどれーいく」
「あるらうねー」
『アッタカイ、アッタカイ!』

 薬院のドアがバンと開かれ、もこもこしたコートを着たミュアたちが入ってきた。
 ミュアたちは遠慮なくコタツに突入……今の今まで外にいたので身体は冷えている。

「うみゃ!? お前ら冷たいぞ!」
「あったかーい……にゃうー」
「ルミナ、おやつ食べていい?」
「まんどれーいく」
「あるらうねー」
『チコレート! チコレート!』
「あ、こら! それはあたいのおやつだ!」

 ルミナはチコレートを取り返そうとするが、マンドレイクとアルラウネ、そしてウッドがすでに食べていた。
 ミュアとライラもチコレートに手を伸ばし……ルミナは諦めてため息を吐く。

「にゃう。ルミナ、ありがと!」
「……ん」

 こんな生活も悪くない。
 ミュアたちの笑顔を見ながら、ルミナはちょっとだけ微笑んだ。

 ◇◇◇◇◇◇
 
 場所は変わり、雪合戦会場。
 現在、天使族チームとアイゼンチームが戦っていた。
 天使族のメンバーは、カシエル、ハニエル、アニエル、カマエル、そしてイオフィエル。
 アイゼンチームのメンバーは、アイゼン、シェリー、ローレライとクララベル、そしてシルメリアだ。
 魔法ナシの純粋な力と技の勝負である。

「お父さん!!」
「おうよ!!」

 シェリーはせっせと雪玉を作り、アイゼンの傍に積み重ねていく。
 アイゼンの陣地は現在、ハニエルとアニエル、そしてカマエルによる攻撃を受けていた。
 旗を奪われまいと、アイゼンは雪玉を躱し、天使たちに投げる。
 シェリーもまた躱し、雪玉を投げていた。

「あっちはどうなってるかな……」
「シェリー、余所見は禁物だぞ!!」
「わかってる……あわわっ!?」

 そう。ここにいないローレライとクララベルとシルメリアは、三人で敵陣を襲っていた。
 奇しくも作戦が被り……互いに三対二という状況になっていた。つまり、どちらが先に旗を取るか、そして雪玉を喰らい失格になるかの戦いになっていた。

「うきゃぁっ!?」
「シェリー!!」

 ほんのわずかな油断。
 シェリーの背中に雪玉が命中した。
 シェリーは両手を上げ、雪玉が命中したことを伝える。
 アイゼンは冷や汗を流す。
 そして……ハニエルとアニエル、カマエルが木陰から出てきた。
 カマエルは眼鏡をクイッと上げ、雪玉をもてあそぶ。

「ハニエル、アニエル、三角形の陣。同時に投擲すればさすがのアイゼン様も躱せないでしょう」
「「了解しました」」

 双子のハニエルとアニエルがすすーっと動き、アイゼンを包囲。
 三人の手には雪玉が握られている。

「っく……万事休す!!」
「……お父さん、なんか楽しんでるよねー」
「し、仕方なかろう」

 両手を上げたままのシェリーがジト目でアイゼンを見た。
 アイゼンは、遊びといえども絶体絶命なこの状況を楽しんでいた。
 そして、カマエルたちが構えを取り───。

『ピッ、ピッ、ピーーーっ!!』

 試合終了の笛が、フィールドに響き渡った。

「えっ……」

 カマエルの手から雪玉がポロリと落ちる。
 そして、拡声魔法で増幅したディアーナの声が聞こえた。

『試合終了。チームアイゼンの勝利です!!』
「やったぁぁっ!!」
「どうやら、やってくれたようじゃな……」

 シェリーはアイゼンに抱き着き、アイゼンはホッとしたように息を吐いた。
 それから間もなく、ローレライとクララベル、シルメリアが戻ってきた。

「なんとか勝てたわ……シルメリアのおかげよ」
「シルメリアすごかったの! 雪玉をすいすいーって躱して旗を奪ったの!」
「いえ、お二方の援護がなければ厳しかったです。ありがとうございました」

 旗を奪ったのはシルメリアだ。
 イオフィエルとカシエルの猛攻を躱しながら旗を奪ったらしい。
 ローレライは汗をぬぐう。

「これでベストエイトね……あと三回で優勝よ」
「あと三回もできるんだー!」
「クララベル、喜ぶとこそこじゃないでしょ……」
「いずれも、強敵なのは間違いない。皆の者、気を引き締めていくぞ」
「はい。旦那様」

 アイゼンは気を引き締め直し、皆を激励した。

 ◇◇◇◇◇◇

 雪合戦本部・かまくら内。
 俺、ミュディ、母上の三人はリョク茶を飲んでまったりしていた。

「はぁ~……お、いい感じに団子が焼けた。母上、どうぞ」
「あら、ありがとう……ん、あつつ、はふはふ」
「ミュディも、ほら」
「ありがと、アシュト」

 ヒバチで焼いた団子とリョク茶の組み合わせ……たまらん。
 ここで、雪合戦で残ったチームが知らされた。

「おお、父上たち残ってる。エルミナも」
「すごいねぇ……もぐもぐ」
「だな。母上、父上が残ってますよ」
「そうねぇ……もぐもぐ。大したものだわ」

 母上……団子に夢中。
 今までは高級なお菓子やケーキばかり食べてたからな。シンプルな焼き団子が美味しくて驚いてるんだろう。
 ミュディがリョク茶のおかわりを注いでくれた。
 さて、ベストエイトが決まったので次のトーナメント表を作らねば。これは俺の仕事だ。

「ん~……よし、こんなもんか」

 バルギルドさんたちの部門もベストエイトが決まったので組み合わせを決める。
 ぶっちゃけ、けっこう適当に作った。

「もうすぐ雪合戦も終わりか」

 トーナメント表を眺めながら、俺はリョク茶を啜った。
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