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オーベルシュタイン、二度目の冬
第421話、緑龍の村・雪合戦大会と鍋会!(後編1)
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雪合戦大会も後半戦。
Aクラス決勝会場は、静かに白熱していた。
五対五で始まった戦いは、互いのチームがすでに四人脱落している。
残りは両チームとも一人……旗を狙い回り込むとか、穴を掘ってそっと近づくとか、奇襲して相手を負けさせるとか……作戦はいくらでもあった。
だが、この二人はそんなことをするような男ではなかった。
「…………」
「…………」
バルギルド、そしてディアムド。
緑龍の村最強とも呼べる二人の戦士が、両手に雪玉を握りこんだまま対峙していた。
互いの距離は三メートルほど。雪玉を投げれば間違いなく当たる。
不意打ちも可能だ。だが……そんな卑劣な真似は互いにしない。
「ディアムド……久しぶりに、本気で勝負するか」
「当然だ」
二人は、魔獣の毛皮を加工して作った防寒具を着ていたが脱ぎ棄て、鍛え抜かれた上半身をさらす。
両手に雪玉を握りこみ、互いに無言で歩き……二人の距離は一メートルに近づく。
「いくぞ」
「おう」
───次の瞬間、互いの拳が顔面に突き刺さった。
「───っっ」
「っく……」
ブシッ……と、互いの鼻血が足元の雪を赤く染める。
目がチカチカした。だが……またしても同時に繰り出した拳が腹に突き刺さる。
「~~~っ!!」
「ぐ、はっ……」
そう。同時なのだ。
同時に、雪玉を握りこんだ拳で殴っている。
なので、雪玉が同時ヒットしている。これではどちらもアウトではない。
つまり……先に倒れた方が負け。
「痛み、か……」
「ああ。滾ってきたな、バルギルド」
「そうだな……!!」
またしても拳が突き刺さる。
またしても拳が突き刺さる。
またしても拳が───。
互いに血濡れになろうとも、倒れることはない。
同じ村に住み、狩りに出かけ、酒を酌み交わし、家族同士仲が良くても───勝負となれば、デーモンオーガの血が騒ぐ。
この光景を、互いのチームメイトたちが見ていた。
「こりゃ終わんねぇなぁ……なぁグラッド」
「へい、アウグストの親父」
「うちの旦那、無駄に硬いからねぇ……」
「こりゃ村長に傷薬用意してもらわにゃぁあかんな」
バルギルドのチームメイト。
アウグストとグラッド、アーモとラードバンは半ば呆れたようにつぶやく。
そのすぐ隣にはディアムドのチームメイト。
「硬さならウチの旦那も負けてないけどねぇ」
「父さん……バルギルドさんも、すごい」
「毎度毎度思うけどよ、デーモンオーガっちゅうんは強すぎねーか? なぁバオブゥ」
「うっす……ワルディオの親父、ありゃ半端ないっす」
ネマ、キリンジ。そしてワルディオとバオブゥだ。
チームメイトたちはデーモンオーガ二人の殴り合いを見届ける。
そして……二人の拳が同時に顔面に突き刺さり、全く同時に倒れた。
ダブルノックダウンにより、Aクラスは優勝チームなし……まさかの引き分けでAクラスの雪合戦大会は幕を閉じた。
◇◇◇◇◇◇
Bクラス決勝戦。
対戦チームは、エルミナ率いるチームハイエルフと、アイゼン率いるチームアイゼンだった。
これまで、穴を掘ったり枝を伝ったりフィールドを駆け回ったりとまどろっこしいやり方にエルミナがうんざりし、正々堂々と正面突破を提案。
五人が雪玉を躱しながら突っ込んでくる光景にアイゼンは歓喜し、作戦を全て捨ててエルミナたちを迎え撃った。
「ぬぉぉぉぉっ!!」
「おんどりゃーーーっ!!」
アイゼンがエルミナめがけて雪玉を投げ、エルミナも負けじと投げ返す。
互いに身体能力が高いので、飛んでくる雪玉は上手く回避していた。
「アシュトのお父さんやるじゃん!!」
「エルミナ嬢もな!!」
ライバルのような笑みを浮かべる両者。
エルミナとアイゼンだけでなく、シェリーたちも一定の距離で雪玉を投げまくっている。
「投げて投げて! んで躱して!!」
「い、いっぺんはむりぃ~! うきゃっ」
「クララベル!! あっ……」
クララベルが被弾。それを見ていたローレライも被弾した。
「メージュ、こっちやばい!! シルメリアさんマジ強っいたぁ!?」
「あらら~っ?」
シレーヌ、エレインがシルメリアの投げた雪玉に被弾。
「えい」
「あっ」
ルネアが投げた雪玉がシェリーに被弾。
「失礼いたします」
「あいたっ!?」
シルメリアの投げた雪玉がメージュに被弾。
そして、シルメリアの真上にあった木の枝から雪の塊がパラっと落ち、シルメリアの襟元から背中に侵入した。
「ふにゃっ!?」
「隙あり」
ルネアが雪玉を投擲。シルメリアの胸に命中した。
同時に、アイゼンの投げた雪玉がルネアのお腹に命中した。
「申し訳ございません、ご主人様……」
「むねん……がくっ」
シルメリアとルネアが退場し、残りは……エルミナとアイゼンのみ。
互いに雪玉を一つ握りしめ……ゆるり、ゆるりと歩く。
勝負は一発……互いに、冷や汗を流していた。
「……私は勝つ!! 勝って高級酒で飲み会するんだから!!」
「わしは負けず嫌いでな……アシュトの妻だろうと手は抜かん!!」
互いに振りかぶり───。
「───っ!!」
「っ!!」
投げ───雪玉が交差し───破裂音が響いた。
破裂音は一つ……シェリーたちはゴクリと唾を飲む。
共に動かないエルミナとアイゼン……だが。
「…………ぐっふぅ」
エルミナが崩れ落ちた。
同時に、大汗を流したアイゼンが蹲る。
「あ、危なかった……現役時代でも、これほどの緊張はしなかったぞ」
こうして、Bクラス優勝チームは……チームアイゼンとなった。
◇◇◇◇◇◇
こたつでぬくぬくしながらリョク茶を啜る俺、ミュディ、母上の元に、全ての試合が終わったと報告が入った。
ディアーナから受け取った結果表を見ると、Aクラス優勝はなし、Bクラス優勝が父上チームだった。
「おお……父上のチームが優勝したみたいです」
「アイゼンが? すごいわね……」
「対戦相手、エルミナたちだったんだ」
Aクラス優勝チームなしというのは、バルギルドさんとディアムドさんが一騎打ち状態になり、互いの一撃が同時に入ってノックダウンしたから、らしい。
どんだけすごいんだよ……まぁ、そんな気はしてたけど。
「さて、次は閉会式……んで、鍋会だな」
時間的に、夕方前くらいだ。
閉会式をやってそのまま鍋会なのだが、母上がこんなことを言った。
「ねぇアシュト。すぐに鍋会もいいけど、お風呂に入って夜からお鍋というのはどうかしら?」
「あ、それいいですね。おーいディアーナ、ちょっといいか?」
「はい、なんでしょう」
さっそくディアーナに提案すると、笑顔で了承した。
そうだよな。汗も掻いたし風呂に入ってさっぱりしたいよな。風呂上りならエールもうまいし。
鍋の準備は銀猫たちがやっている。朝から準備してたからきっと手の込んだ鍋になってるだろう。
「よし、閉会式の時にそう伝えるよ。宴会場で指揮してるのはオードリーか」
「あ、じゃあわたしが伝えてくるね」
「頼む、ミュディ」
ミュディに言付けを頼み、俺は閉会式へ。
母上は父上のところへ行った。
閉会式では優勝チームの表彰と俺からの挨拶だけなのですぐ終わる。
父上たちに優勝トロフィーを渡すと割れんばかりの拍手喝采が鳴り響き、勝者をたたえた。
こうして、雪合戦大会は幕を閉じた……ちなみに、早くも二回目を望む声があったとか。
さて、次はいよいよ、待ちに待った鍋会だ!!
Aクラス決勝会場は、静かに白熱していた。
五対五で始まった戦いは、互いのチームがすでに四人脱落している。
残りは両チームとも一人……旗を狙い回り込むとか、穴を掘ってそっと近づくとか、奇襲して相手を負けさせるとか……作戦はいくらでもあった。
だが、この二人はそんなことをするような男ではなかった。
「…………」
「…………」
バルギルド、そしてディアムド。
緑龍の村最強とも呼べる二人の戦士が、両手に雪玉を握りこんだまま対峙していた。
互いの距離は三メートルほど。雪玉を投げれば間違いなく当たる。
不意打ちも可能だ。だが……そんな卑劣な真似は互いにしない。
「ディアムド……久しぶりに、本気で勝負するか」
「当然だ」
二人は、魔獣の毛皮を加工して作った防寒具を着ていたが脱ぎ棄て、鍛え抜かれた上半身をさらす。
両手に雪玉を握りこみ、互いに無言で歩き……二人の距離は一メートルに近づく。
「いくぞ」
「おう」
───次の瞬間、互いの拳が顔面に突き刺さった。
「───っっ」
「っく……」
ブシッ……と、互いの鼻血が足元の雪を赤く染める。
目がチカチカした。だが……またしても同時に繰り出した拳が腹に突き刺さる。
「~~~っ!!」
「ぐ、はっ……」
そう。同時なのだ。
同時に、雪玉を握りこんだ拳で殴っている。
なので、雪玉が同時ヒットしている。これではどちらもアウトではない。
つまり……先に倒れた方が負け。
「痛み、か……」
「ああ。滾ってきたな、バルギルド」
「そうだな……!!」
またしても拳が突き刺さる。
またしても拳が突き刺さる。
またしても拳が───。
互いに血濡れになろうとも、倒れることはない。
同じ村に住み、狩りに出かけ、酒を酌み交わし、家族同士仲が良くても───勝負となれば、デーモンオーガの血が騒ぐ。
この光景を、互いのチームメイトたちが見ていた。
「こりゃ終わんねぇなぁ……なぁグラッド」
「へい、アウグストの親父」
「うちの旦那、無駄に硬いからねぇ……」
「こりゃ村長に傷薬用意してもらわにゃぁあかんな」
バルギルドのチームメイト。
アウグストとグラッド、アーモとラードバンは半ば呆れたようにつぶやく。
そのすぐ隣にはディアムドのチームメイト。
「硬さならウチの旦那も負けてないけどねぇ」
「父さん……バルギルドさんも、すごい」
「毎度毎度思うけどよ、デーモンオーガっちゅうんは強すぎねーか? なぁバオブゥ」
「うっす……ワルディオの親父、ありゃ半端ないっす」
ネマ、キリンジ。そしてワルディオとバオブゥだ。
チームメイトたちはデーモンオーガ二人の殴り合いを見届ける。
そして……二人の拳が同時に顔面に突き刺さり、全く同時に倒れた。
ダブルノックダウンにより、Aクラスは優勝チームなし……まさかの引き分けでAクラスの雪合戦大会は幕を閉じた。
◇◇◇◇◇◇
Bクラス決勝戦。
対戦チームは、エルミナ率いるチームハイエルフと、アイゼン率いるチームアイゼンだった。
これまで、穴を掘ったり枝を伝ったりフィールドを駆け回ったりとまどろっこしいやり方にエルミナがうんざりし、正々堂々と正面突破を提案。
五人が雪玉を躱しながら突っ込んでくる光景にアイゼンは歓喜し、作戦を全て捨ててエルミナたちを迎え撃った。
「ぬぉぉぉぉっ!!」
「おんどりゃーーーっ!!」
アイゼンがエルミナめがけて雪玉を投げ、エルミナも負けじと投げ返す。
互いに身体能力が高いので、飛んでくる雪玉は上手く回避していた。
「アシュトのお父さんやるじゃん!!」
「エルミナ嬢もな!!」
ライバルのような笑みを浮かべる両者。
エルミナとアイゼンだけでなく、シェリーたちも一定の距離で雪玉を投げまくっている。
「投げて投げて! んで躱して!!」
「い、いっぺんはむりぃ~! うきゃっ」
「クララベル!! あっ……」
クララベルが被弾。それを見ていたローレライも被弾した。
「メージュ、こっちやばい!! シルメリアさんマジ強っいたぁ!?」
「あらら~っ?」
シレーヌ、エレインがシルメリアの投げた雪玉に被弾。
「えい」
「あっ」
ルネアが投げた雪玉がシェリーに被弾。
「失礼いたします」
「あいたっ!?」
シルメリアの投げた雪玉がメージュに被弾。
そして、シルメリアの真上にあった木の枝から雪の塊がパラっと落ち、シルメリアの襟元から背中に侵入した。
「ふにゃっ!?」
「隙あり」
ルネアが雪玉を投擲。シルメリアの胸に命中した。
同時に、アイゼンの投げた雪玉がルネアのお腹に命中した。
「申し訳ございません、ご主人様……」
「むねん……がくっ」
シルメリアとルネアが退場し、残りは……エルミナとアイゼンのみ。
互いに雪玉を一つ握りしめ……ゆるり、ゆるりと歩く。
勝負は一発……互いに、冷や汗を流していた。
「……私は勝つ!! 勝って高級酒で飲み会するんだから!!」
「わしは負けず嫌いでな……アシュトの妻だろうと手は抜かん!!」
互いに振りかぶり───。
「───っ!!」
「っ!!」
投げ───雪玉が交差し───破裂音が響いた。
破裂音は一つ……シェリーたちはゴクリと唾を飲む。
共に動かないエルミナとアイゼン……だが。
「…………ぐっふぅ」
エルミナが崩れ落ちた。
同時に、大汗を流したアイゼンが蹲る。
「あ、危なかった……現役時代でも、これほどの緊張はしなかったぞ」
こうして、Bクラス優勝チームは……チームアイゼンとなった。
◇◇◇◇◇◇
こたつでぬくぬくしながらリョク茶を啜る俺、ミュディ、母上の元に、全ての試合が終わったと報告が入った。
ディアーナから受け取った結果表を見ると、Aクラス優勝はなし、Bクラス優勝が父上チームだった。
「おお……父上のチームが優勝したみたいです」
「アイゼンが? すごいわね……」
「対戦相手、エルミナたちだったんだ」
Aクラス優勝チームなしというのは、バルギルドさんとディアムドさんが一騎打ち状態になり、互いの一撃が同時に入ってノックダウンしたから、らしい。
どんだけすごいんだよ……まぁ、そんな気はしてたけど。
「さて、次は閉会式……んで、鍋会だな」
時間的に、夕方前くらいだ。
閉会式をやってそのまま鍋会なのだが、母上がこんなことを言った。
「ねぇアシュト。すぐに鍋会もいいけど、お風呂に入って夜からお鍋というのはどうかしら?」
「あ、それいいですね。おーいディアーナ、ちょっといいか?」
「はい、なんでしょう」
さっそくディアーナに提案すると、笑顔で了承した。
そうだよな。汗も掻いたし風呂に入ってさっぱりしたいよな。風呂上りならエールもうまいし。
鍋の準備は銀猫たちがやっている。朝から準備してたからきっと手の込んだ鍋になってるだろう。
「よし、閉会式の時にそう伝えるよ。宴会場で指揮してるのはオードリーか」
「あ、じゃあわたしが伝えてくるね」
「頼む、ミュディ」
ミュディに言付けを頼み、俺は閉会式へ。
母上は父上のところへ行った。
閉会式では優勝チームの表彰と俺からの挨拶だけなのですぐ終わる。
父上たちに優勝トロフィーを渡すと割れんばかりの拍手喝采が鳴り響き、勝者をたたえた。
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